ケータイ小説 野いちご > 野いちご学園

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  2. さっきから、痛いくらい感じる視線。

    「葵…まだ?」
    「あ、うん。あともう少し」
    「じゃあ…待ってる」

    しんっとした、生徒会室。
    少し寒くて肩を震わすと、幼馴染の新が自分のブレザーを私にそっと掛けてくれた。

    「ありがと」
    「いや…下心ありの行動だから」
    「は…?」
    「いや…葵は知らなくてもいいよ」

    そしてまた沈黙。
    なんなんだろ?
    今日はいつも以上に口数が少ないな。

    「新?体調悪いの?」
    「……なんで?」
    「や、なんとなく?」
    「んー…それはきっと、葵のせいだな」
    「なんでよ?」

    すると、不意に新がかたんと席を立って、私の耳元に口唇を近付けてきて、腰が砕けてしまいそうな甘い低音ボイスで…こう言った。

    「葵の、愛が足らないから」
    「…んっ…ば、ばか!」
    「今年はチョコも欲しいけど…その他にも欲しい物があるんだ」

    『ねぇ、葵ごとくれるよね?』

    そんなの、イエスに決まってる…。

    きゅん

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  3. 「かーおるちゃんっ」
    「無理」
    「えー!まだ私何も言ってな…」
    「どうせお前の事だ。課題遅らせて、とか言うんだろ?」

    ふんっと鼻を鳴らして他の子達の課題ノートをチェックしている担任の薫ちゃん。
    私の方も見ないでそれはないんじゃないの?と思ったから私は、くるんっと薫ちゃんに背を向け、一言言って職員室から出ようとする。

    「んもうっ!折角薫ちゃんにチョコあげようとしたのにぃ。…ま、いっか。これは他の男子にあーげよっ」
    「おい」
    「なに?」
    「寄越せ」
    「は?だっていらないでしょ?私からのチョコなんか」
    「いいから寄越せって」

    と、薫ちゃんは眉間にしわを寄せて手を出してくる。
    私はチョコの入った袋を抱き締めてその手から逃れた。

    「…逃げんな。大人の本気見せてやるから」

    つ、と私に触れた指先が熱くて、私は心ごと薫ちゃんに溶かされた。
    『これは二人の秘密、だからな?』

    なんて囁きと共に…。

    きゅん

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  4. あ…藤沢先輩だ…。
    …チョコ、渡されてる……?

    「ごめん…」

    …え、断っちゃうんだ…。
    あんなに綺麗で、素敵なヒトだったのに。
    それじゃあ…私なんて目にも止めて貰えないよね…。

    「…あれ?ちなちゃん?」
    「…先輩…」
    「…今の、見ちゃった?」
    「は、い…」
    「そっか…」

    そして、少しの沈黙。
    私は小さな紙袋を後ろ手に隠して、俯く。
    それに気付いた先輩は私の近くに寄ってきて、首筋を掠めるような態勢になった。

    「せ、先輩…?」
    「それ、誰にあげるの?」

    心なしか機嫌の悪そうな声。
    でもその顔は私からは見えない。
    あまりの至近距離にドキドキして言葉が出ない私に痺れを切らしたのか、先輩は、そのまま私の背中に腕を回してきた。

    「ちなちゃん、それ俺に頂戴?」
    「え…?」
    「ちなちゃんの気持ちが欲しいんだ。誰のよりも…」

    そうして、掬うような甘いキスを私は受けた。
    先輩、それは狡いです!

    きゅん

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  5. 「ひーろきっ」
    「お?まなじゃん、どした?」

    クラスメイトの弘樹は、誰よりも気楽に話せる男友達だ。

    「今日は何の日でしょうか?」
    「…えーと。バレンタイン?」
    「ぴーんぽーん。ねぇねぇ?私からのアイ、欲しい?欲しい?」

    恥ずかしいから茶化して言う。
    でも、弘樹は、くすりと笑って、私の頭をぽんぽんと撫でてから、にっこりと微笑む。

    「欲しいなぁ…まなからのアイ」
    「え!?」

    そのあまりにも自然な言動に、私の思考はフリーズして、口をパクパクしてしまった。

    「だって、好きな子からのアイなんて、なかなか貰えないだろ?」
    「ひ、弘樹?えっと…その、これ…告白だよ…?」
    「ん?うん。知ってる。俺のこと好きなんだろ?」
    「だけど…」
    「あ、まなのこと他の誰かにやるつもり無いから。他の奴にはやるなよ?」

    と、弘樹はもう一度私の頭を優しく撫でた。

    もう…逆に陥落しました。

    きゅん

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  6. 「こら、水野。なんなんだ?そのピンクのどデカい袋は」

    「えー…?見逃してよ、伊野ちゃん。今日だけ特別!」

    「あー?そんなの却下に決まってんだろ」

    「えーーー!なんでー?」

    教員室には、私と担任伊野ちゃんの二人きり。
    これは絶好のチャーンス!
    とばかりに呼び出しに応じたら、さっきからこんこんとお説教をされている。

    「伊野ちゃんは乙女心が分かってないなぁ」

    そうきれいに揃えた爪の先を見つつそう言うと、なんとなく伊野ちゃんの視線を感じた。

    「何?」

    「はぁ…お前もさぁ?男心ってもんを分かってねーな」

    「なにそれ?伊野ちゃん何気にバカにしてる?」

    「あーもーっ。そうじゃなくってなぁ…」

    すると、伊野ちゃんの指が私の長い髪に触れてくしゃりと優しく握り締めた。

    「他の男にやるんだったら、俺に渡せっての」

    「?!」

    そうして、伊野ちゃんは、私から袋を奪って行った。

    きゅん

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  7. 今日は女の子にとって聖なる日。
    私は、大好きな鳴瀬センパイの元へと急ぐ。

    「鳴瀬センパイ!」
    「ん?森さん?」
    「い、今…大丈夫ですかっ?!」

    ドキドキして、鼻血噴きそう。
    ていうか、私興奮し過ぎだ、完全に舞い上がってる!

    「ん。大丈夫。いいよ?どうしたの?」

    ふんわりと微笑んでくれるセンパイは眼鏡を掛け直しながら、私の方に来てくれる。

    「あの!」
    「あの?」

    そう小首を傾げてくるセンパイはやっぱり格好いい。

    「コレ…っっ!」

    ずずいっ!
    とセンパイの前に差し出したのは、昨日まで練習に練習を重ねた手作りチョコレート。
    マンディアンならば、と頑張った。
    でも、センパイが私の手からそれを受け取ってくれた瞬間、それが嬉しくて…私は自分の気持ちも言えずセンパイからの答えも無理で逃げるようにして後ろを向く。
    すると…。

    「逃さないよ…好きって言って?」

    とぎゅっと捕まえられた。

    きゅん

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  8. 「ねー?鷹斗は今年何個貰ったの?」

    そう言って、かしゃん、とフェンスに寄りかかる私。
    毎年毎年20とか30とか言いやがる、この幼馴染サマはにやりと笑った。

    「なんで?…気になる?」
    「…いや、別に?ていうか、鷹斗自体に興味がない」
    「相変わらずきっついねぇ、友恵は」

    ホントは大好きで好きで好きで仕方ないのに。
    なんだかんだと可愛く出来ない私は、内心唇を尖らせて、『私のバカ』と溜め息を吐く。

    「でもさ、俺今年は一個も貰えてないんだよねー」
    「え?なんで?」
    「なんだよ?興味あんじゃん」
    「な、ないって!」
    「嘘つき。…じゃあさ…興味持つようにしてあげようか?」
    「え?」

    ふわり

    フェンス寄り掛かっている私に近寄った鷹斗は、マフラーを私の首に巻いて、

    「お前が好きだからだよ」

    と微笑んだ。
    私の幼馴染サマは王子だけど策士だ。
    本当にもう…コレで落ちないはずがない。

    きゅん

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  9. 「おう、愛、もう帰んのかよ?」
    そう声を掛けられて、私はグッと鞄を握り締める。
    「か、帰るけど?何か問題でも?」
    俺様なヨクには、この気持ちは、渡せない。
    分かってるけど、1週間前に買ってしまったチョコレート。
    でも…勇気がなくて、可愛げもない私は、渡せずにもじもじして、次から次へとヨクの元に届けられる、可愛らしいラッピングのチョコレートを眺めつつ、溜息をついていた。
    「お前、なんか俺に言うことねぇのかよ?」
    「な、ないけど?」
    「いんや、あるね」
    「ないってば!」
    そんな攻防戦の後で、ヨクが徐に私の傍に寄ってきて、くんっと髪の匂いを嗅いできた。
    「甘い」
    「は、へ?」
    「美味そうな匂いする、お前」
    「なっ?!」
    「強引に食われる前に寄越せよ。その鞄の中身」
    「や、やだってば!」
    「あー?お前、そんなこと言ってっと本気で食うぞ」
    そう言われ、抵抗する間もなく口唇を奪われた。

    きゅん

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  10. 今日は、楽斗との「初」登校!

    「萌咲ちゃん、おはよう」

    「ん。楽斗、おはよ」

    自然に手を繋いでくる、楽斗の方を見ると、ちょっと顔が赤くなっていた。

    「照れてる?」

    「ううん。緊張してるだけ」

    「私もだぁー…でも…恥ずかしいのもある…」

    「なんで?」

    「だって…カレカノの初登校だよ?!しかも今日はバレンタインデー…今更感…」

    そんな私にふんわりと微笑んで、楽斗は言う。

    「俺のモノ感あって、俺は嬉しいんだけど?」

    ぎゅ

    「も、もう恥ずかしいよ!楽斗のばか」

    「ばかにもなるよ。好きなコの隣にいるんだし」

    そんな、バカップル全開の私たち。

    「ねぇ、萌咲ちゃん?」

    「ん?なぁに?楽斗」

    「学校行くのやめちゃおっか?」

    「っ!ばばばば…ばか!」

    「くすくす。萌咲ちゃんやっぱり可愛いなぁ」

    「楽斗のキャラ崩壊!」

    「俺は好きだよ」

    私達、今日から恋人始めます!

    きゅん

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  11. 「ねー?かんちゃん!かんちゃん!おっはよー!」
    「朝から煩いな、少し黙ってて」
    「むぅ…酷いなぁ…」
    かんちゃんは無口な幼馴染み。
    でも正義感が強くて、頼りがいがあって、何より格好いい。
    だから、モテるのは分かってるけど…。
    何時だってかんちゃんは私には冷たいんだ。
    それは…私がかんちゃんを好きだから。
    『お前のことはそういう目で見られない』
    勇気を出して告白した時、きっぱりと言われた一言に、傷付いて、ぼろぼろ涙を流してどうして?って聞いた私に対して、かんちゃんは言った。
    「お前の気持ちは長く一緒にい過ぎて、感覚が麻痺してるだけだろう」
    って。
    そう思っても好きな気持ちに歯止めはきかなくて…。
    今日も届かない想いを口にする。
    「かんちゃん!好きだよ!」
    どうせ届かないのなら、全てを灰にするまで燃やしてしまおう。
    このヒリヒリと灼ける熱い気持ちを、心に流れる涙と共に。

    きゅん

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  12. パタパタと走って逃げる。

    こんなの酷いよ。
    ずるいずるいずるい…。

    先輩は何時だって冷静で、でも軽い気持ちで私にちょっかいを掛けるから。

    ほんの少しだけ、期待してたのに。


    さっき見掛けてしまったワンシーン。


    同級生だろう女の人と、抱き合ってキスしている所。
    その彼女に掛ける笑みは私に掛ける何百倍も優しくて、涙があふれた。


    好きな気持ちはきっと伝わっていただろうに。


    ずるい。
    ずるい。
    ずるい。

    一つ上なだけなのに、大人と子供くらいの差がある私達。
    先輩は、この身勝手な感情を切り捨てることすらせずに、ただ甘受して、優しさだけを振り撒く。そんな先輩のことを好きな私が一番ずるいのは分かってるけど…。
    だって好き。
    どうしても好き。
    この気持ちはどこにも捨てられないの…。
    捨てられないんだよ…?

    先輩、どうか少しは分かって下さい。

    きゅん

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  13. 「先輩、好きっ」

    そう言い寄られ、抱きつかれているのは、私の大好きな緑川先輩。

    「そう?ありがとう」

    意味有り気な微笑みでその子の髪を撫でそうになっているのを、私は直視出来ずにその場を後にした。

    靴を履いてとぼとぼと歩く通学路。
    私は悔しいのと悲しいのとで、感情が爆発しそうになる。

    だって。

    「だってもう……」
    「紗英っ!」

    慌てて後を追ってきたのか、はぁっ!と洗呼吸を吐いて、先輩が私のことを抱き締める。

    「なんで泣いてんの?いつもなら流すところじゃん」

    先輩の顔に困惑の色。
    私はキッと睨みつける。

    「紗英?」

    先輩は相変わらず意味が分からないと言った顔。

    「もう…いい加減にして」
    「なに…?」
    「…先輩はとっくに私の物なんだから。私だけ見てて」

    そう言うと、先輩は満面の笑みでぎゅうっと私を抱き締めて、

    「それ、ずっと聞きたかった」

    と、キスをしてきた。

    きゅん

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  14. 「広大!お待たせ!」
    「遅ぇよ」
    「ごめんね?」

    幼馴染の菜々美は、天然ゆるキャラ。
    何をしでかすか予測不能。

    「ちっ」
    「広大、ごめんね?」
    「…別に怒ってねぇーよ」
    「でも…」
    「んなことより、早く帰るぞ」
    「うん!」

    ガキの頃から何かと一緒だったけど、同居してからというもの、帰宅も食事も…寝るのも一緒で…。
    ただ1つしてないことと言えば…。

    「ねぇ?今夜こそはしてくれるよね?」
    「ちっ…」
    「あ!約束したのにー!」

    こいつの頭にゃ、お花でも生えてんのかね?

    「ばかやろ。一緒に風呂なんか入れるわけねーだろ」

    そういうと、菜々美の顔がどんどん曇る。

    「広大、私の事が嫌いなんだ」
    「はぁ?んなわけねーだろ?」
    「だっていっつも一緒にお風呂入ってくれないんだもん」
    「わーったよ。その代わりどうなっても知らないかんな?」


    本気で今にも理性が切れそうだ…。

    きゅん

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  15. 「さ、まこちゃん…帰ろうか?」

    かたん、と生徒会室の席を立って手を差し伸べてくる。

    「ねぇ?さくちゃん、今日のご飯なぁに?」

    その手に自分の手を重ね合わせながら、笑ってみせるとまこちゃんはにっこり笑って…。

    「カレーだよ」と言った。

    「えぇー!一昨日もカレーだったよね?!」

    そうぷぅっと膨れてみせると、

    「じゃあまこちゃんが作ってくれるの?」と返された。

    「う……」

    料理の全く出来ない私は言葉が出ない。

    すると………。

    「別に、料理じゃなくてもいいんだよ?」

    と言われてきょとんとする。

    まこちゃんはそんな私を見て可笑しそうに笑ってから、耳元で…。

    「まこが食べたいって言ったら、怒る?」

    なんてとんでもないことを言ってきた。

    「いや、あの……」

    「いや?」

    「嫌…じゃないけど…」

    「じゃあ決まり。早く帰ろ?」

    私の幼馴染は今日も策士なのでした。

    きゅん

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  16. 「きんじょー…お願い」
    「んー…」
    「ねぇ?きんじょー?起きてよ」
    「眠い」

    折角昼休みに一緒にお弁当を食べようとして声を掛けたのに、この有様。
    私は堪忍袋の緒が切れて、席を立つ。

    「もうっ!知らないんだから!」

    だけど、私が席を立つ前に、彼は私の指に自分の指を絡ませる。

    「聖月、かわいい食べちゃいたい」

    「お願いだから学校で盛んないでよ」

    「学校以外ならいいの?」


    本当に話の通じない奴だなと思いつつも、
    私はドキドキするのを止められない。

    「ばか」

    「ほんと、かわいい。ごめんね、聖月」

    「へ?って…っ。ばか…」


    周りの世界なんか気にすることも出来ないくらい愛されて、私は今日もこの想いを彼に捧げて愛を乞う。

    明日も、この距離が縮んでくれますように、と願って。

    きゅん

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  17. 「たーかーや!」

    「あぁ?」

    「はい」

    帰ろうとしている貴也に、私は後ろから抱きつかんばかりに近寄って、思い切り両方の手のひらを差し出した。

    「…なんだよ?」

    「だーかーらー、はい!」

    今度はもっと近付いて。
    でも、貴也は眉をひそめて、私を見るだけ。

    「んもー!今日、な、ん、の、日?!」

    「だりぃ…」

    「なにそれ!」

    「なんだよ、うるせぇな。ピーピー言うな。俺は忙しいんだよ」

    「私より?!私より大事なの?それは?」

    「…まぁ、な」

    その曖昧な口ぶりにがっくりと肩を落とした…。

    「分かった…もういいよ。じゃあね!」

    そう言って行こうとすると、むんずと襟を掴まれる。

    「な、に?」

    「お前も来るんだよ」

    「は?」

    「お前がいねぇと決まんねぇだろーが」

    「え?」

    「お返し欲しくねぇの?」

    「欲しい!」

    「んじゃ行くぞ」

    ほんと、大好きなんですけども!

    きゅん

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  18. 久し振りにあった孝介先輩は、益々格好良くなっていた。

    「よ、久し振り。とはいえ卒業式ぶりだからそんな経ってないか」

    そう言って、笑い掛けてくれる先輩が、やっぱり凄く好き。だから、先輩が卒業する前にと、思い切ってチョコを渡したのに。

    「ん。さんきゅ」

    それだけ。たったそれだけで、済まされてしまった。私は先に先輩の手元に行ってしまったチョコに添えた「好きです」が口では言えずにただペコリと頭を下げて立ち去ったんだ。何気に苦いバレンタイン。だから、今日会うのが本当は怖かった。なのに、今先輩は私に向かって笑顔いっぱいで話し掛けて来る。あぁ…嫌だな。早くここから立ち去りたい。そう思って、ペコリと頭を下げて先輩の横を通り過ぎようとすると、その瞬間、先輩に「待って」と言われて風になびく髪をくしゃりと撫でられる。

    「…なぁ、この前の、返事…」
    「え…?」
    「好きだよ」

    今度は強く抱き締められた。

    きゅん

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  19. 贅沢な世界…。

    貴方がいて、この想いが生まれて、温もりを覚えて…。

    今私はとても幸せです。

    好きなままで長くいたい…。

    そんな願いが叶えられそうなほど、この世界は眩く。


    私は自分の未来を変えられるんじゃないかとさえ、思ってしまう。

    贅沢な世界…。

    貴方がいるから。
    貴方が傍にいるから。
    貴方が恋しいと思えるから。


    好きをどれほど伝えても伝え切れない。
    そんな私の凍った涙さえ、解いてくれる。

    あと、何回。

    そんなことを考えずに…貴方への愛を唱えたい。


    贅沢な世界…。


    もう、これ以上望む物は何も無いから。


    どうか、壊れないでいて。
    どうか、壊さないでいて。


    私は貴方を……愛しています。

    きゅん

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  20. 並んで微笑み合う瞬間。

    その時だけ、生きていてよかったと思える。

    いきなりの申出に付き合ってくれた貴方。

    これからもっと、好きになる。

    あなたの傍を離れたくなくなる。

    その前に…私から消えた方がいいのかな…。

    でもね?

    心が貴方を求めて止まないの。

    深々と積もる雪。

    雑踏さえも溶け合う、運命の日。 

    2人最後の約束を果たしたら……。

    きっと別々の道を歩んで行くのだろう。

    好きです。
    大好き。

    だから、失う事がとても怖い。

    貴方の笑顔をあと何回この瞳に焼き付けられるかな…。

    心の中で密かにする切ないカウントダウン。

    貴方の隣にいられるだけで幸せだと思っていたのに…本当はこんなにも欲張りな私…。

    それでも…。
    貴方を愛する気持ちに嘘はないから…。
    【その時】が来るまで…私にチャンスを与え続けて下さい。
    貴方を愛していいという、たった1つのチャンスを…。

    きゅん

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  21. 『じゃあ、またね』

    この一言をあと何回貴方へと伝えられるのか…。

    好きだよ。
    好きだよ。
    好きだよ。

    だから、ごめん。

    貴方の笑顔を、ちゃんと見られなくて俯く。
    もっとちゃんと傍にいたいのに。

    私は弱虫だから、怖くて『またね』が言えない。
    それが叶わないと…知っているから。

    ねぇ、この声が届きますか?
    貴方を好きな気持ちは、届けてもいいですか?

    きっと、貴女は笑ってくれる。
    両手を広げて、一緒にいようと言ってくれる。


    でも………。


    だめ、なんだ…。


    貴方には幸せになって欲しい。
    出逢ってからどんどん知った、貴方の優しさに触れながら、私は願う。

    私との時間以上に、幸せに。
    私がいなくなってからも貴方が心から笑えるように…。


    私じゃ叶えられない願いを、どうか…叶えて。

    きゅん

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