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  2. おれは何度目かわからないため息をついた。

    先輩、あんたバカだよね?


    「部室で寝るなよ」


    ソファに引っくり返って、気持ちよさそうにすやすやと。

    スカート、無防備すぎ。

    おれのジャケットかけといてやったけど、そうでもしなきゃ、おれがどうにかなりそうで。


    「ん、にゃあ」


    謎の寝言も、さっきから。

    おれは過去の部誌を読んでるけど、そろそろ限界。


    「先輩、いつまで寝る気?」


    「にゃう? 朝?」


    「夕方! 襲うよ?」


    「ふぇ?」


    とろんとした寝ぼけまなこがおれを見る。

    クラッときたけど、踏みとどまる。


    「眠り姫とか白雪姫とかの王子の趣味、わかんないんだよね。

    キス奪うなら、起きてる相手じゃなきゃ意味ないじゃん」


    だから、先輩、さっさと起きてほしいんだけど?

    今日こそちゃんと“好き”って言ってもらうよ。

    そしたら、ごほうびにキスしてあげるから。

    きゅん

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  3. おれの家は山手のほうにあって、学校がある街より寒い。

    当然ながら、防寒具を完全装備。

    バスセンターから学校へ歩く間に、駅から来るおまえと合流する。


    「おまえ、またマフラーしてねぇの?」


    「バタバタしてて忘れたー。貸して」


    「引っ張んな。首が絞まる」


    マフラーをほどいて渡したら、おまえは嬉しそうに首に巻く。

    なついた子犬に首輪をつける気分、とか思ってみる。

    おまえの小さな手が寒そうに赤くなってる。

    おれは片方の手袋を外した。


    「こっち、手袋貸す」


    「ありがと」


    「もう片方は、こうすりゃいいだろ」


    冷えた手をギュッと握って、おれのコートのポケットへ突っ込んだ。

    温かいってか、顔が熱い。


    「……ねえ、ほんとはあたし、マフラーも手袋も持ってる」


    「知ってる。あざといよな、おまえ」


    「ごめん」


    「乗ってやるおれもバカだけど、もう手遅れだし」

    きゅん

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  4. 放課後、クラスの女子が集まって、髪の毛いじって遊んでる。

    おまえさ、おれと帰る約束してたくせに。

    おれは漫画読みながら待ってるわけで。


    「ねえ、さっきのと今の、どっちが似合うかな?」


    髪を上げたおまえが、おれの漫画を奪った。


    「さっきのって? 髪なんか上げようが結ぼうが編もうが、細かい違いはどうでもいい」


    「面と向かってそんなこと言う!?」


    ため息。

    しゃーないだろ。


    「おまえ、チョコ好きだよな?」


    「は? 好きだけど?」


    「ホットココアとホットチョコレートの違い、説明できるか?」


    「え?」


    「どっちもうまいから、どっちでもいいよな。おれもチョコ好きだし、細かい違いはどうでもいい」


    「え? え?」


    こういう男、嫌われんのかもしれないけど。

    でも、おれはおれ以外にはなれねぇし。


    「どんな髪型だろうと、かわいいって思う。そんだけだよ」

    きゅん

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  5. ぼくの彼女は同じ弓道部の1つ上の先輩だ。

    昼休み、図書室で待ち合わせて、手作りの弁当とチョコを受け取った。


    「ありがとう」


    「どういたしまして。

    去年はわたしも勇気が出なくて渡せなかったの。

    今年はこうしてきみと付き合えて、すごく幸せ。

    ね、晩ごはん作りに行ってもいい?」


    「も、もちろん」


    ぼくは一人暮らしだ。

    彼女がぼくの部屋に来るのは、これで3回目。

    嬉しいのと恥ずかしいので、顔が熱くなる。

    彼女がいたずらっぽい笑みを浮かべた。


    「何を想像してるの?」


    「えっ、いや、あの」


    人の少ない本棚の陰で、彼女はぼくの肩に手を載せて、思いきり背伸びをした。


    「わたしのことも食べていいよ?」


    くすぐったいささやき声。

    理性がボンッと水蒸気爆発する。

    ちょっと待って、先輩、小悪魔すぎるでしょう?

    午後の授業と部活、集中できそうにないんですけど。

    きゅん

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  6. チョコを学校に“持ってくる”のは禁止と、職員会議で決まった。

    生徒を抑え込む学校の体質が嫌いで、おれは授業を変更。

    調理実習で生徒たちにチョコを“作らせる”という荒技をやった。


    「校長先生に叱られてきたぜ」


    放課後の教室で、1人残っていた女子を相手に苦笑いする。

    ま、生徒たちが楽しそうだったからいいや。


    「お疲れさまー。センセーもチョコ大漁だね。食べきれないでしょ?」


    「冷凍して少しずつ食料にする」


    「うわー、独身男、かわいそー」


    「うっせー。高校教師には出会いなんかねぇんだよ」


    ケラケラ笑ったおまえは、タッパーがいくつも入った袋をおれに差し出した。


    「チョコの代わりにお惣菜あげる。作ったの。冷凍保存が利くやつ」


    「え?」


    「チョコだけじゃ栄養がかたよるよ。じゃ、さよならー」


    ちょっと待て、不意打ちは反則だ。

    かわいいことすんなっつーの。

    きゅん

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  7. 担任が仕組んだおかげで、4校時がチョコ作りの調理実習になった。

    バカバカしくて、おれは図書室に逃避行。


    「やっぱりここにいた」


    同じクラスの女子がおれを探し当てた。


    「いちいち来るなよ。あんた狙いのやつ、クラスにいるぞ」


    「うん、作ったチョコにかこつけて告白された」


    「おめでと」


    「付き合わないよ。チョコもあげてない」


    ほら、とチョコをおれに見せる。

    甘い匂いがする。


    「で? 何の用?」


    「チョコは嫌い? わたし、チョコを渡したい人がいるの」


    バカだな。

    クラスの中心にいるやつの告白を蹴って、おれを選ぶとか。


    「嫌いじゃない」


    答えて、差し出されたチョコを口に入れる。


    「お、おいしい?」


    「食べてみる?」


    おれはチョコをくわえて、自分の唇を指差す。

    あんたはうなずいて目を閉じた。

    キスの内側で、甘い甘いチョコがとろける。

    きゅん

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  8. おれの隣の席は、勉強も運動も何もかもできる美少女で、すげーって思ってたんだけど。

    苦手なこともあるらしい。

    4校時、家庭科の調理実習のお菓子作りで、意外に苦戦してる。


    「危なっかしいな。手伝おうか?」


    「必要ない! 自分でやらなきゃ意味ないもの」


    「ケガだけはするなよ」


    「手元が狂うから見ないで」


    意地っ張りというか、プライド高いというか。

    そのくらいストイックじゃないと、何でもできるようにはならないか。

    最終的には、形になったみたいだ。


    「お疲れ。うまくできたか?」


    「確認してみれば?」


    「ラッピングまでされてるじゃん。確認しようがな……」


    「あげるって言ってるの! どうせ下手だけど!」


    完璧な普段と違う、真っ赤な顔。

    高嶺の花だと思ってたのに。


    「そんなかわいい顔されたら、我慢できないよ」


    頬にキスして、「好き」ってささやいた。

    きゅん

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  9. おれの彼女は同じクラスだ。

    まわりには何も言ってない。


    「あたしたちが付き合ってるって知ったら、みんな気を遣うよ。クラスの仲が変になるのはイヤなんだ」


    おれ、本当は言いふらしたいんだけど。


    2月14日。

    家庭科の調理実習のチョコ作りで、困ったこと発生。

    おれは女子に囲まれた。


    “お願い、受け取って!”

    “誰か1人、選んでください”


    マジかよ。

    おれ、フリーだと思われてんのか?


    「ち、ちょっと待ってっ」


    彼女が割り込んで、おれの腕に抱き付いた。

    こんなあせってるとこ、初めて見た。


    「彼はあたしのだから! 絶対ゆずれないの!」


    嫉妬とかわがままとか、彼女にもあるんだなって。

    意外な一面がかわいすぎて、気持ちが抑えられなくなる。


    「おれも、おまえだけだ」


    チョコより甘いキスに、クラスが騒然とする。

    冷やかすなっつーの。

    気を遣えよな。

    きゅん

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  10. おれ、何やってんだ? って感じ。

    4校時がなぜか家庭科の調理実習になってチョコ作りとか。

    何で男子までやらされるんだ?


    「言うつもりもねぇのに」


    ふわふわしてトロくさくて、ほっとけない。

    あいつはそういう女子で、おれとは正反対。

    近寄ったら傷付けそうで怖い。


    「うわぁ、キレイ! 器用だね!」


    いつの間にか、あいつがそばにいた。

    おれが作ったトリュフに感心してる。


    「別に簡単だろ」


    「そんなことないよ。あたしのクッキー、形が歪んじゃって。ほら」


    差し出されたクッキーに、チョコの文字。

    “スキ”

    形とか、どうでもいい。


    「これマジ?」


    「本気、だよ。食べてくれる?」


    上目遣いがヤバい。

    本能が誤解するからやめろ。

    おれはクッキーを受け取って、トリュフをあいつに押し付けた。


    「やる。本命だから。でなきゃ、こんなに気合い入れて作らねえ」

    きゅん

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  11. おれは教師として、クラスに通達しなければならないことがある。


    「14日のことだが、プレゼントは学業に不要だ。

    持ってきたやつは反省文、プレゼントは発見次第、没収することが職員会議で決まった」


    盛大なブーイングがあがる。

    だよな。

    おれも職員会議中、ブーイングしたかったし。


    「センセー、見損なった」


    目が合った瞬間、飛んできた声。

    いちばんなついてくれてる女子が、ふくれっ面をしている。

    ……今、けっこうグッサリきたぞ。


    「おい、聞け、おれの授業と家庭科を振り替えてもらうことにした。

    持ってくるのはアウトでも、学校で作るのは禁止されてない。

    調理実習ってことで、チョコでも何でも作れ」


    一瞬しーんとしたクラスが歓声をあげた。


    「センセー、ナイス!」


    「おう、喜べ」


    「作ってあげるからね!」


    期待してるよ。

    教師もたまにはワクワクしたいんだ。

    きゅん

    14

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  12. 「何か今日、機嫌悪くない?」


    帰り際、きみが言う。

    最終下校時刻ギリギリまでおれをこき使ってくれたきみは、生徒会長サマ。


    「会長、今日が何の日か知ってる?」


    「2月14日ね。だから何?」


    きみは結局、おれの気持ちには興味ないんだな。

    もうやけっぱちだ、当たって砕けろ。


    「おれ、機嫌悪くはないよ。緊張してるだけ。逆チョコとか、バカにされるんじゃないかって」


    「え?」


    「本命なんですが、受け取ってもらえますか?」


    チョコを差し出す。

    きみがカーッと真っ赤になった。


    「バ、バカ、バレンタインなのに、女の子の先を越してチョコ渡す?」


    「はい?」


    「……渡す決心がつかなくて、こんな時間になっちゃった」


    うつむいてチョコを取り出すきみがかわいくて。

    両想いってことだよな?


    「嬉しすぎる!」


    チョコだけじゃなく、きみごとギュッと抱き寄せた。

    きゅん

    17

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  13. いつもつまらなそうにしてる女子がいる。

    のけ者ってわけじゃないけど、誰ともつるまない。

    おれは、気まぐれに誘ってみた。


    「クラスのやつらでカラオケ行くんだけど、来ねえ?」


    「わたし?」


    人数合わせだったんだけど、私服がいい感じで、歌もうまい。

    「ヤベ、かわいい」とか、おれの親友が言ってた。

    微妙な気分。

    あいつ誘ったの、おれだっつーの。


    解散した後、帰りの方向が一緒だと気付いた。

    何か衝動的に、後ろからギュッとつかまえる。


    「よぉ、お疲れ!」


    「きゃっ、ちょ、何!?」


    「スキンシップ。ダメ?」


    顔をのぞき込んだら、普段のクールな表情じゃなかった。

    真っ赤。


    「な、慣れてないから! はは離れて!」


    慌て方が新鮮すぎる。


    「やだ。かわいいから離さねえ」


    離れたら寒いし。

    この位置なら、おれの顔もすげー赤いの、バレずにすむだろうし。

    きゅん

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  14. 「あれ? ほっぺた、腫れてない?」


    目ざといおまえに、朝イチで気付かれた。

    おれは、じんじんする頬を撫でる。


    「狙ってた女子にやられた」


    「何をやらかしたの?」


    「“おれってモテるんだぞ”って、別の女子から来たメッセの話」


    「やきもち焼かせようとして失敗?」


    「ああ。“最低な言い方するよね”って、ガチギレされた」


    「戦略的にやきもち焼かせるって、かなり高度なテクニックだよ」


    「今回のはマジで修復不可能だ。マジしくった」


    「ふられたんだ? サラッとひどいもんね、きみは」


    「えー、おれって紳士じゃん?」


    「ひどい男だよー? あたし、ずーっとやきもち焼いてんのに気付かないし」


    「え?」


    「ほかの子の話、されるたびに妬いてんだよ、あたし。わかんない?」


    振り返るおまえの笑顔が切なそうで。

    こんなかわいかったっけ?

    ヤベェ、ドキドキする。

    きゅん

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  15. 「サッカーとわたしを比べたら、サッカーのほうがずっと大事なんでしょ!」


    おれに誕プレの包みを投げつけて、おまえは泣き出した。


    「ちょ、待てよ」


    「クリスマスは試合、初詣は部活仲間と勝利祈願、自分の誕生日だって部活と自主居残り。

    わたしと約束したの忘れてたの?」


    「違う、ごめん、でも……」


    「サッカーにやきもち焼く面倒な女って思ったでしょ。

    もういいよ、バイバイ!」


    きびすを返すおまえを後ろから抱きしめた。


    「待て、聞けよ。

    サッカーはおれにとって酸素みたいなもので、なけりゃ生きていけない」


    「わたしがいなくても生きていけるのにね」


    「ああ、おまえなしでも生きていける。

    でも、それなのに、どうしてもおまえが必要なんだ」


    「え?」


    「不思議だよな。

    愛してるって気持ちは、自分でも意味がわからないけど。

    おれ、おまえのこと、愛してるんだよ」

    きゅん

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  16. 長期の休み明けは生徒指導で忙しい。

    教師のおれだってガミガミ言いたくないんだが。


    「このピアスは何だ?」


    「先生、耳ひっぱらないで! 空けたばっかで痛いの!」


    「腫れ上がってるな。外して消毒するぞ」


    「イヤだー!」


    「この腫れ方は本気でヤバいやつだ」


    保健室に引っ張っていって治療した。

    おまえは涙目で、されるがままになっている。


    「先生の耳、ピアス穴がある」


    「大学時代に空けたやつな。あのころはけっこう派手に……あっ」


    耳たぶに触れられた瞬間、熱い吐息が口からあふれた。

    ニヤリと小悪魔な笑みが目の前にある。


    「先生の弱点みーっけ」


    「ちょっ、こら」


    耳に息を吹きかけられる。

    バカ、マジでやめろ。


    「いじめられた仕返し」


    ささやき声にゾクゾクする。


    「耳は“弱点”じゃねぇんだよ。“スイッチ”だ」


    ヤベェ、理性が保たねえ。

    きゅん

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  17. “うちらの担任、教師に向いてないよね”


    本棚の陰からのぞいたら、おれが受け持つクラスの女子だ。

    派手で生意気なグループだが、今度は陰口かよ。


    「そうだね。先生っぽくないかも」


    意外な声が同意した。

    派手な連中には属さない、図書委員の彼女。

    何なんだよ、ちくしょう。

    昼休みの終わり際、つい言ってしまった。


    「おれは先生っぽくないのか?」


    「き、聞こえてました?」


    「教師だって、陰口叩かれりゃ傷付くんだぞ」


    「違いますっ。あれは陰口じゃなくて、誉め言葉で!」


    「は?」


    「教師より芸能人みたいだって……せ、先生、カッコいいから」


    真っ赤になってうつむく彼女。

    ミーハーなところが全然ないから、“カッコいい”の一言にドキッとさせられる。


    「そいつはどうも」


    ぽん、と彼女の頭に手を載せる。

    顔、上げんなよ。

    おれも今、かなり赤面してるから。

    きゅん

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  18. 生まれ育った町を離れたのが春で、いつの間にかもう冬だ。

    おれは、幼なじみとの約束を果たすために走っている。

    と、スマホに電話が来た。


    〈もしもし、今どこ?〉


    「もうすぐ着く!」


    〈あたしはツリーのとこにいるから〉


    「了解!」


    2人で目指してた高校にはクリスマスには大きなツリーが出て。

    ツリーには、一緒に見たら恋が叶うって噂があって。

    一緒に見ような、と言ったのは、中3だったおれの精いっぱいの告白で。


    約束果たしに来たよ。

    去年より勇気を出すよ。


    キラキラしたツリーの前でポツンと1人、立ってる後ろ姿。

    勢い余ってギュッと抱きしめる。


    「お待たせ! って、おまえ、こんなちっちゃかったっけ?」


    「あんたの背が伸びたんでしょ」


    違う制服、慣れない身長差、初めて見る髪型。

    でも、変わらない気持ち。


    「おれ、おまえのこと、ずっと好きだったんだ」

    きゅん

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  19. おれはクリスマスが嫌いだ。

    ツリーを横目ににらんでると、後輩が笑顔で飛んできた。


    「先輩、写真撮りませんか?」


    「チャラチャラしたノリは苦手だ」


    「でも、そのノリにもいいところがあってですね」


    いきなりプレゼントが差し出された。

    ずっと憧れてた老舗ブランドの万年筆。


    「何で?」


    「クリスマスだからです。先輩、誕生日を教えてくれないし」


    「……25日だよ、誕生日」


    だからクリスマスが嫌いなんだ。

    誰もおれのこと覚えてやしねえ。


    「明日!? プレゼント用意する暇ないです!」


    「いらね」


    「ダメです! お祝いします!」


    その瞬間、魔が差した。

    後輩の肩を抱き寄せて、チュッと音をたてて頬にキスをする。


    「な、ななな!?」


    「祝ってくれんだろ? 明日は唇な」


    体で払えって意味じゃなくて。

    ただ単純に、おまえがほしいって思ったんだ。

    きゅん

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  20. 文芸部室に最終下校時刻まで残ってた。

    原稿を書いてたおれと、今月の編集係の先輩。


    「先輩、何で嬉しそうなの?」


    「だって、初めてあたしのほうが校了が早かったんだもん」


    わかってないね。

    おれ、わざと残ってたのに。


    「先輩、知ってる? ツリーの点灯、今日からなんだよ」


    言った瞬間、視界に入った。

    キラキラのツリー。

    好きな人と一緒に見たら恋が叶う、って噂がある。

    先輩の反応を試したいんだ。


    「ダ、ダメだよ! あたしなんかと見たら、きみの相手……」


    「それさ、先輩がおれのこと好きって意味? だって“恋が叶う”前提は“好きな人と一緒に見る”だよね?」


    ツリーのライトじゃ、先輩の頬が赤いかわからなくて。

    ねえ、だからハッキリ答えて。


    「先輩、やっぱ、おれのこと好きでしょ?」


    うなずいてくれたら、おれもちゃんと言うから。

    先輩のことが好き、って。

    きゅん

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  21. 読書家で、よく気が付く女子生徒がいる。

    ノートや問題集の提出があれば、開くべきページに必ずしおりを挟んでくれるのが、教師の間で評判がいい。

    しおりは、おれへの提出物のときだけ秘密がある。

    毎日一言ずつのメッセージだ。


    風邪、治りましたか?

    ──ああ、治った。

    英語、成績が上がりました。

    ──おめでとう。

    明後日、クリスマスですね。

    ──明日はイヴだな。


    秘密のしおりを、卒業までに何枚、使いきるだろう?

    本当はもっと語り合いたい。


    イヴの昼休み、問題集に挟まれたしおりは、普段と違った。

    銀細工の羽根。

    メリークリスマス、と添えてある。


    「似た者同士かよ?」


    おれはそっと笑って羽根を受け取る。

    代わりに挟んだのは、銀細工の百合の花。

    生徒と呼ぶには特別なおまえへの、秘密のプレゼント。


    卒業まであと3ヶ月。

    想いを告げるから、どうか応えてくれ。

    きゅん

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