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  2. 今日から新学期。
    クラス発表を見ると、仲のいい友達はみんな別のクラスになってしまっていた。
    ついていないと、気分が重くなる。
    教室の席に座ると、はあ、と息を吐きだして机に突っ伏した。

    「どうしたんだ?」

    ふと聞こえた声に顔を上げると、側に男の子が立っている。
    急なことに驚いていると、彼は続けて言った。

    「何か朝からため息ついてるからさ。ちょっと気になったんだ」
    「あー、ちょっと友達とクラスが離れちゃったから不安で…」

    言いながら、少し俯いてしまう。
    いつだって新しい環境は不安でいっぱいだ。

    「なら大丈夫だろ」
    「え?」

    あっけらかんと言う彼を、思わず見つめてしまう。

    「だって俺がいるだろ? ほら、もうクラスに友達できたじゃん」

    そう言って彼は、綺麗な笑顔を見せる。

    「な? これからよろしく」
    「よ、よろしく!」

    さっきまでの憂鬱な気持ちなんて、どこかに消え去っていた。

    きゅん

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  3. 「せーんぱいっ!」
    「うわっ」

    ふいに私をぬくもりが包む。
    顔を後ろにやると、そこには中学時代の後輩の姿があった。

    「ねえ先輩! オレ今年からこの高校の生徒なんだよ!」
    「え、ほんと?」

    腕の中からすりぬけて体ごと振り向く。
    そこには確かに、私の高校の制服を着た姿があった。

    「おめでとう! でも、君の成績だとけっこう厳しかったんじゃない?」

    よく話をしていたけど、彼の成績はあまりよかった覚えがない。
    そして自分でいうのも何だけど、ここはなかなかの進学校だ。

    「厳しいも厳しい! 先生にも、お前には無理だってすっげー言われたんですよー」
    「そんなにこの学校がよかったの?」
    「もちろん! だって家から近いし、なんかすげー感じするし」

    それに――と、彼は私に顔を寄せて笑った。

    「――先輩と同じ高校、通いたかったんだもん」

    ふわりと風が吹き、桜が舞う。
    何かが始まる予感がした。

    きゅん

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  4. 「好きです! 付き合ってください!」

    校舎の裏を通ろうとすると、そんな声が聞こえてきた。

    「あーわり。俺好きなやついるから」

    その声で相手が分かった。
    クラスメイトで、私の片思いの相手でもある彼だ。
    そっか、好きな人がいるんだ…。
    呆然としていると、気づかれてしまったようで声をかけられた。

    「なんだよ、お前。盗み聞きか?」
    「そんなんじゃ…」

    慌てて答える。

    「ま、別にいいけど? で、どこから聞いてた?」
    「あの子が告白したところから…」

    嘘はつけず、正直に言う。

    「ふーん。じゃあちょうどいいじゃん」
    「え? 何が?」
    「好きなやつがいるってのも聞いてたんだろ? それお前のことだから」
    「え…!」

    思いもよらない言葉に驚く。

    「だから、俺と付き合えよ。ちなみに拒否権はないから」

    そう言った彼は私の腕を引き、抱き寄せる。
    強引な口づけは、けれど甘かった。

    きゅん

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  5. 「よ!」

    朝登校していると、後ろからポンと背中を叩かれた。
    振り向くと、クラスで仲のいい男子がいる。

    「はよ」
    「おはよう。…こんな早い時間に?」

    彼はいつも、遅刻ぎりぎりに教室に入ってくる。
    だからまさか、こんな朝早くに通学路で会うとは思わなかった。

    「ははっ!人のこと言えねえじゃん。お前もこんな早い時間に、だろ?」
    「確かに…」
    「まあ、たまたま早く起きたから来てみただけなんだけどな。けどお前に会えるとかラッキー」
    「え」

    思わず反応に詰まった私を気にすることなく、彼は話を続ける。

    「お前、いっつもこの時間なの?」
    「うん、そうだけど…」
    「へえ! じゃあ俺、これから毎日早起きするわ」
    「でもいつも遅刻間際でしょ。できるの?」
    「ん。お前に会うためなら頑張る。だからさ」

    そう言った彼が私の顔を覗き込む。

    「毎日、一緒に登校しねえ?」

    拒否なんて、できるはずがなかった。

    きゅん

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  6. 「何かあったのか」

    放課後ひとりで教室にいたら、幼なじみが声をかけてきた。

    「別に何もないよ」
    「嘘だ。ずっと一緒だったんだから分かる。何があったのか言えよ」
    「…別にたいしたことないけどさ。ふられたんだよね」

    あえて明るく言う。
    本当は泣きたいくらい悔しくて悲しいけど、別れるときに言われた言葉がショック過ぎて、涙も出なかった。

    「やっぱり私なんかじゃ駄目だったんだよ。可愛くないし、素直じゃないしーー」
    「ふざけんなよ」
    「え?」
    「そいつに何か言われたのかよ」
    「言われたけど…どうせ事実だし」
    「んなことねえよ!」

    顔を固定され、目を合わされる。

    「お前は可愛いし、すっげえいいやつだよ。仮にお前であっても、お前のこと悪く言うのは許さねえ」

    真剣な眼差しに、息が詰まる。

    「なあ、いっそ俺と付き合えよ。俺ならそんな思いさせねえから」

    彼が急に、男の人に見えた。

    きゅん

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  7. 授業中に、後ろから声をかけられた。

    「なあなあ、消しゴム持ってねえ?」
    「忘れたの?」

    はい、と言って渡すと、サンキューな、と眩しい笑顔を向けられる。

    「おい、そこ! 後ろ向いて話してるんじゃないぞ」
    「あ…すいません」

    ちょうど見ていたのか、先生に注意をされた。

    「ちょっとセンセー。怒る相手違うんじゃね? こいつ消しゴム貸してくれただけだっつーの」

    庇うように彼が言う。

    「そうなのか? 悪かったな」
    「いえ…」
    「センセーも気をつけろよなー」
    「そもそもお前が悪いんだろう。筆記用具ぐらい持ってこい」
    「おっけおっけ。また今度な」

    無邪気に先生と言葉を交わす彼。
    私に集まった意識も、好奇の視線も、いつの間にかなくなっていた。
    先生が授業に戻ったのを見て、彼がこそりと後ろからささやく。

    「ごめんな、迷惑かけて」
    「ううん」

    分かりにくい彼の優しさに、私の頬はゆるんでいた。

    きゅん

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  8. 「先輩、お疲れさまです!」
    「おー、ありがとな」

    練習を終えた先輩に、タオルとドリンクを渡す。
    そして気になったことがあった私は、先輩に問いかけた。

    「先輩、もしかして足痛めてます?」
    「うわ、ばれた?よく見てんなー」

    私の頭をくしゃっとなぜながら笑う先輩に、顔が熱くなる。
    けれど流されては駄目だと、頭の中を切りかえる。

    「ごまかさないでください! もし本当に調子が悪いなら…」
    「頼むよ、もうすぐ試合だろ? ぜってぇ迷惑かけないし、無理もしないから」

    そう言って片手で拝むような真似をする先輩。
    強くでられなくなった私は、確かめるように聞く。

    「試合終わったら、ちゃんと医者に行きます?」
    「ん、行く。だからな、ふたりだけの秘密だぜ?」

    こんな秘密よくないって分かってる。
    でもそのいたずらっ子のような笑顔に魅せられている私が、ふたりの秘密、なんてものを言えるはずがないんだ。

    きゅん

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  9. 授業と授業の合間の休み時間。
    名前を呼ばれて廊下に出ると、朝ノートを貸した同級生がいた。

    「これ、サンキューな」

    そう言って渡されるノート。

    「ううん。お役に立てたならよかった」
    「ほんと助かったよ。それじゃ!」

    次の授業が体育だったようで、彼は急いで更衣室に向かっていった。
    慌ただしいな、なんてほほえましく思いながら教室に戻り、自分の席につく。

    やがてチャイムが鳴り、授業を受けようとさっき返してもらったノートを開くと、そこには付箋が貼ってあった。

    『字きれいだし見やすかった。お前に借りてよかったよ。本当にありがとう。』

    きれいなわけじゃないけど、丁寧に書かれていたメッセージ。
    思わぬ不意打ちに驚くと同時に、心があたたかくなった。

    きゅん

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  10. 卒業式の後、後輩から想いを告げられた。

    「先輩のこと、ずっと好きでした」
    「え…」
    「俺、絶対先輩と同じ大学に行きます! 先輩の大学のレベルが高いことも知ってます! けど、絶対に行きますから」

    真剣な後輩の言葉に、顔が熱くなるのが分かる。

    「だから、合格したら、俺と付き合ってください。俺、そのために頑張るから」
    「…今、返事をしたら駄目なの?」
    「え?」
    「私も君のこと好きだよ、って、今言ったら駄目?」

    目の前で赤くなる彼に、私も同じような顔をしているんだろうな、と思いながら続ける。

    「私と付き合ってくれる?」
    「…もちろんです!」

    ぎゅっと抱きしめられる。
    私の肩に顔をうずめながら、彼がつぶやく。

    「俺、幸せすぎて死にそう」
    「今死なれたら、同じ大学に行けないなあ」
    「ううん、行く。行きますから、待っててください」

    初めて交わした熱は、まるで誓いのようだった。

    きゅん

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  11. 「ねえ、いつも何の本を読んでるの?」

    自分の席で読書をしている彼に、声をかけた。

    「…ああ、今はこれを読んでいる」

    そう言って見せてくれた表紙には、聞いたことがあるような題名が書かれている。

    「あ、それ知ってる! 前から読んでみたいと思ってたんだよね」
    「貸してやろうか」
    「え?」

    思わぬ返答に、呆けたような声がもれた。
    そんな私に、彼はもう一度繰り返す。

    「一度読んでいる。お前が読みたいのなら貸すが」
    「ほんと? 読みたい!」

    食いつき気味の私の答えに、どことなく嬉しそうな顔をした彼は、そのままその本を差し出した。

    「返すのはいつでもいい。ただ、よければ感想を聞かせてくれ」
    「うん、ありがとう!」

    席に戻り、さっそくと本を開く。
    とたん目に飛び込んできた、字の細かさと見知らぬ単語に、私は頭を抱えたくなった。


    彼と話したいがための嘘は、一体いつまで吐き通せるだろうか。

    きゅん

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  12. 「先生!」
    「ん、どうした?」

    4限目の授業が終わり、教室を出た先生を呼び止める。

    「あの、この問題が分からなくて…」

    教科書の問題を見せて示すと、先生はうなずいた。

    「ああ、ここか。確かにややこしいよな」

    教えてください、と言おうとすると、先生にさえぎられた。

    「でも、悪いな。先生このあと会議があるんだ。今日の放課後じゃだめか」
    「いえ、大丈夫です! 引きとめてしまってすいませんでした」

    タイミングが悪かったことを悔やみながら、頭を下げる。
    その頭に、そっと手がのせられた。

    「いや。ちゃんと質問しにくるのはいいことだからな。よく頑張ってるよ」

    優しい手のぬくもりに思わず固まっていると、その手はすぐに離れていった。

    「それじゃあ、また放課後にな」
    「は、はい!」

    もう認めるしかないのだと、誰かに言われたような気がした。
    私は、先生のことが好きなんだって。

    きゅん

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  13. 「じゃあ、また明日ね!」

    いつものようにそう言うと、珍しく彼に引き留められた。

    「あー、ちょっと待てよ」
    「え?」
    「今日ホワイトデーだろ? お礼やらなきゃなって思ってさ」

    彼は続ける。

    「けど学校行ってから気づいたんだよな。んで、何も用意してねぇわけ」

    律儀に述べる彼を、愛おしく思う。

    「別にいいよ? 一緒にいられるってだけで十分だし」
    「そりゃどーも。でもま、俺なりにいろいろ考えてみたんだけど」
    「うん?」
    「目、閉じろよ」

    そう言った彼が、身をかがめて近づいてくる。

    「え、ちょ、まっ」

    うろたえる私のことなどお構いなしに、彼の熱が触れる。
    彼の腕が、恥ずかしくてぎゅっと目を閉じた私を包み込んだ。





    やがてそっと離れた彼が、目の前で意地悪げに笑う。

    「ん、これがお返し」
    「ば、ばか…」

    真っ赤になっているだろう私の顔を見て、彼はどこか満足気だった。

    きゅん

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  14. 「せーんぱいっ!」

    放課後、日直の仕事で教室に残っていると、前のドアから後輩が顔をのぞかせた。

    「あれ、先輩ひとりなんですか? 相手の人は?」

    後輩が問いかけたように、今この教室には私しかいない。
    本来日直はふたりで担当するものだけど、相手の子は部活があるから、と言い残して仕事を置いていってしまったのだ。

    ついグチるようにこぼすと、後輩は顔をくもらせて不満げな顔をした。

    「酷いなー、その人も。僕なら先輩をひとりになんかしないのに…」

    そう言った彼は、ふと思いついたように、私の方に手を伸ばしてきた。
    何を、と思ううちに頭の上に乗せられた手は、私をぎこちなくなでる。

    「先輩、本当にお疲れ様です」

    普段は無邪気でかわいい後輩の、その優しいほほえみに、くらりときてしまった私は悪くないと思う。
    すぐにその手は離れていったけれど、私はしばらく後輩の顔を直視できそうになかった。

    きゅん

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