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  2. 今日は日直当番。

    放課後の教室でひとり黒板を消していたら、後ろに人の気配を感じた。すかさず振り向く。

    「んだよもうー、バレたか」

    「バレバレ。どうせ急に抱きつこうとしてたんでしょ」

    黒板消しを武器のように両手に持って、私は勝ち誇る。えいえい、と盾のようにそれを突き出すと、おい粉がつくだろ、と駿は慌てて距離を取った。

    「でも俺は抱きつこうなんて一言も言ってない。つまりそれは、彩の願望」

    「うわ、開き直ってるし」

    「ふーんじゃあ抱きつかない」

    別にいいけど、と私はくるりと背を向けて再び黒板を消し始める。

    直後、後ろから強い力で抱き締められた。早くも前言撤回のご様子。

    「背中に、ぎゅーってしてって書いてある」

    「ここは公共の場ですって書いたはずなんだけど」

    「うるさい口は俺が食べる」

    何その理屈、と思いながらも、私は近付いてくる顔を拒まない。

    無人の教室、秘密のキス。

    きゅん

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  3. 「こことここを因数分解して、次にこっちを…」

    今はテスト期間。助けて下さい!と泣きつかれたから頑張って説明してあげているというのに、早速飽き始めている後輩くん。

    「よそ見するんじゃない」

    「だって数学って頭痛くなってくるんですもん」

    本当にやる気があるのかこいつは、とため息をつきたくなってくる。
    呆れた私をよそに「じゃあ」と頬杖をつきながら君は言う。

    「ご褒美欲しいです。そしたらちゃんとやります」

    幼稚園児か、と突っ込みつつも、何がいいの、と一応尋ねる。

    「赤点免れたら、俺と付き合って下さい」

    頬杖をついたまま、笑いながら言う君。冗談なんだか本気なんだか。

    翻弄なんかされない。完璧なポーカーフェイスで「甘い。90点以上取れたら考えてあげてもいい」と返した。案の定君は、「90点…」と呆然。

    翻弄させるのは、私。

    くるくると表情を変える君の事が、私はたまらなく好きなんだ。

    きゅん

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  4. 開け放たれた生徒昇降口のドアの脇にもたれかかるようにして、いつも君は待っている。

    君は私を待っている。その風景が未だに夢みたいで、立ち止まって、時々ぼんやり見てしまうのだ。

    「何突っ立ってんの」

    「今日も待ってるなあと思って」

    「待たせてる事に対してもう少し危機感持とうね」

    靴を履き替えて、君の隣に並ぶ。辺りは暗い。何も言わず、君は私の手を取る。

    お互いたくさん喋るわけじゃない。君は特別かっこいいわけでもないし、私だって可愛い女の子なわけでもない。

    でも、君と一緒にいることは、私を何よりも安心させてくれる。

    ふいに、君が私の髪に触れた。長い髪に、するすると指を通す。

    「どうしたの」

    「どうもしないよ」

    顔を寄せてくる君。私は目を瞑る。0㎝の距離。辺りは暗い。

    目を開けて、暗闇の中で見つめ合う。

    夜の魔法にかけられて、世界は、私と君のものだけになる。

    きゅん

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  5. 「今の、気になってたシーン」

    言いながら、演劇部OBの涼先輩はリモコンを手に取って再生ボタンを止めた。

    文化祭で上演した劇を改めて見返して、反省会をするのが今日の活動のメイン。他の部員はまだ来ておらず、部屋には先輩と2人きり。

    「あれだとキスしてるようには見えないよ。お互い首傾けて顔寄せてるだけ」

    「…でもそこに関しては逆にリアルすぎるのもどうかと」

    リアルを追求しなくてどうするの、といつもの口癖を言いながら、先輩は席を立ち、私に近付いてくる。

    「立って」

    有無を言わさぬ口調。しぶしぶ腰を上げると、そのまま腕を掴まれ身体ごと引き寄せられた。

    「…近いです」

    「見本、やるよ」

    そしてそのまま、塞がれる唇。フリじゃなくて、本当に。

    「…っ、先輩!」

    離れたくても離してくれない。何度も、何度も、落とされるキス。

    「里佳のその目、たまんないよね。ずっとこうしたかったよ」

    きゅん

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  6. 「ハル先輩、お久しぶりです」

    今日はオープンキャンパスに来た。かつて同じ部活だったハル先輩が通う大学。

    もちろん、大学自体に興味があるから見学に来たわけで。先輩に会えるかも、という期待は、オマケみたいなもので。

    誰に向けてなのかわからない言い訳を、心の中で繰り広げる。

    「え、サキ?うわ懐かしい!」

    ぱっと笑顔になってはしゃぐ先輩。でも懐かしいと言っても、まだ1年半くらいだ。あの頃は、高1と高3だった。

    でも私も、「まだ」1年半とは思えなかった。会えない時間は、とても長く感じた。

    「やばいやばい、めっちゃ嬉しいわ」

    「そんなにですか?なんか、テンションは高校生の頃と変わってないですね」

    なんて冷静に言っているけれど、私だってものすごく嬉しい。いやむしろ私のほうが。

    先輩は単に、懐かしい後輩に会えて嬉しいだけ。それだけ。でも、私は違う。

    何も知らずに喜ぶ先輩が、少し憎い。

    きゅん

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  7. 「教育実習、どう?大変?」

    2歳年上の幼なじみ、順くんが私の学校に教育実習に来ると知った時は、本当に驚いた。

    幼なじみと言っても、昔よりも顔を合わせる機会は減っていた。だから、たった2週間とは言っても同じ校舎内に順くんがいるんだと思うと、嬉しくて仕方なかった。

    そして放課後の廊下でばったり遭遇。今日の私はものすごくツイている。でもあくまで、ただの幼なじみを装う。

    ちょっとだけ、澄ました顔なんかして。大人っぽくなったと、少しでも思ってほしくて。

    「まあね。でも大変なのも含めて楽しいよ」

    「教えるの上手だもんね」

    「昔は結衣にもよく教えたよな。教えるというより、半分は俺が結衣の宿題やってたけど」

    「だってそのほうが早く終わるから効率いいでしょ」

    それは言い訳、と、順くんは手に持っていた教材でぱこんと私の頭を叩く。

    「変わらないな、結衣は」

    甘くて苦い、私の恋する人の言葉。

    きゅん

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  8. 「ホワイトデー、何がいい?」

    「えっ、私が欲しいって言ったものくれるんですか?」

    「物選びのセンスが無いってよく言われるんだ。だから相手が欲しいものを渡したほうが確実でしょ」

    けれど先生は私以外の女の子からも沢山チョコを貰っていたはずだ。そして今日の休み時間、お返しのクッキーを配っているのを見かけた。

    同じ制服を着ていても、彼女達と私を、区別してくれているのが嬉しかった。

    「じゃあ、先生の家に行きたい」

    「それ、欲しいものって言わない」

    「学校でコソコソするより、よっぽど安全な気が」

    言葉の途中で、先生は私のおでこを指で弾いた。少しでも距離を詰めようとすると、いつもこうだ。すぐデコピンされる。

    「僕の家に君が来るってことは、夜になったら君を帰らせる保証はないってことだよ。どこが安全なの」

    「私もう18ですよ」

    先生は深い溜息をついて、言った。

    「卒業まで辛抱して」

    きゅん

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  9. (期待しすぎちゃった、かな)

    後ろ髪を引かれながら靴を履き替えようとしたところで、「青山さん」と呼び止められた。

    「良かった、ぎりぎりセーフ」

    ほんとだよ、もう帰ろうとしてた所だったんだよ。と心の中でいじけつつ、「どうしたの?」と私は半分とぼけて尋ねた。

    「お返し、のことなんだけど」

    「…あっ、今日ホワイトデーだもんね」

    我ながら、すっとぼけるのが上手い。でも、上田くんは手に何も持っていない。「実は付き合っている子がいるから」なんて言われちゃうのかな、と思わず弱気になる。

    「何選んだらいいのか、分かんなくて」

    「…そんな、なんでも嬉しいよ」

    「青山さんが欲しいものとか、良いなって思ったものをあげたい」

    それってつまり、と気持ちの根っこを確かめたくなる。

    「今度の日曜日、空いてる?」

    「…うん」

    「じゃ、どっか行こう」

    それってつまり、デートってことでいいのかな。

    きゅん

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  10. 「せんせ…好き…」

    白衣に顔をうずめる。ほんのりと鼻をくすぐる薬品の香り。先生の匂いだ、と思う。

    最終下校時刻はとうに過ぎている。過ぎてからが、先生と二人きりになれる時間。終わりでもあり、始まりでもある、大切なひととき。

    「…ちょっと、まだ5分しか過ぎてないから。まだ誰か残ってたら、」

    窓の外に目をやる先生。もし見られたら、私達はどうなるんだろう。
    いけないことだということは分かっている。けれど、それでも止められないことが、この世には存在する。

    「何で外ばっかり見てるんですか」

    「ん…ごめん。拗ねないでよ」

    「今は、私だけ見てください」

    眼鏡を外した先生が、ふっと困ったように笑って顔を寄せてきた。私もそれに応える。

    秘密の時間の、始まりの合図。

    きゅん

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  11. 無人の教室。自分の席に座って机に突っ伏す。結局、渡すことができなかった。臆病者の私にとって、やっぱり大それたことだったのだ。

    「何してんの」

    一瞬、夢を見ているのかと思った。怖くて、顔を上げられない。近付く足音。

    「あ、わかった。バレンタインのチョコ渡そうとしたけど勇気が出なかったパターンだ」

    そうです、その通りです。その相手がきみです。でもそんなこと、口に出して言えるわけがない。私は臆病だから。

    「俺さ、今日たくさんチョコもらったんだけどさ」

    知ってます。きみは人気者だから。臆病者と人気者、私ときみはあまりにもかけ離れている。

    「一番もらいたい人からはもらえなかった」

    「…そうなんだ」

    「だけど目の前にいるんだよね。しかもチョコを持て余した様子で」

    言葉の意味を理解するのに時間がかかった。

    「なん、で、私…?」

    「何でって、気になる子だから。他に理由なんて無いよ」

    きゅん

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  12. 「あっ、神田さん!待って待って」

    捕まえられてしまった。後ろを振り向く。

    「これ、部室の出入り口の傍に置いてあったんだけど、神田さんの忘れ物でしょ?」

    バスケ部の副部長、三津谷くんはちょっと天然な部分がある。
    着替え終わって最後に部室を出るのが三津谷くんだとマネージャーの私は分かっているから、目立つ所に置いたのだ。

    「こんな大事な物、忘れちゃ駄目でしょ」

    「忘れ物じゃないから、返されても困るの」

    三津谷くんは少し考え込んだのち、「だって、俺、神田さんから部活始まる前にもらったよ。ブラックサンダー」と呟いた。私は頭を抱えたくなった。

    「部員みんなに配ってたの見てたよね…あれは義理チョコだからね」

    「じゃあこれは?」

    小さな紙袋をひょいと目線の高さに掲げ、真剣な顔をして首を傾げている。天然なのか鈍感なのか分からないけれど、そんな所も含めて、私は三津谷くんのことが好き。

    きゅん

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  13. 「ねえ、ほんと大したことないから。もう戻って大丈夫だよ」

    今日の授業内容はサッカー。
    試合形式での練習の最中のことだった。はっきり言ってどんくさい私は、コートの中のどこにいたらいいのか分からず、うろうろしていただけなのに、変に足首をひねった。恥ずかしさしかない。

    体育委員の阪本くんが、保健室まで付き添ってくれた。

    「開いてるけど先生がいねえな」

    職員室かな、と言おうとしたけれど、寸前で止まった。息ごと止まったかと思った。阪本くんが、急にしゃがんで、私の足首にそっと触れたから。

    「……びっくりした」

    「俺だってびっくりだよ。何で何もない所でコケるかな」

    呆れたようにそう言いながらも、阪本くんはじーっと足首を観察したまま、手も離してくれない。

    なんだか、悪化しているような気がする。ひねった部分がやけに熱い。

    きゅん

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  14. 「うまっ」

    「本当!?良かった……」

    安堵の息が漏れる。何度も何度も練習して、初めて自分で手作りしたガトーショコラ。嬉しそうに頬張る彼の横顔を見ているだけで、私までじんわりと甘い気持ちに満たされる。

    「今日うちのクラスの男子がさ、手作りチョコは重いとか受け止めきれないとか言ってたの。ひどくない?女子の頑張りを全否定してるよね」

    「そうだよな。あずさ、本当は超大ざっぱなのに、よく頑張ったよ。レシピちゃんと読んで、分量間違えなかったんだもんな」

    えらいえらい、と彼は私の頭をわしゃわしゃと撫でた。なんだか、馬鹿にされてるような。

    「そんな顔すんなって」

    「だって」

    反論しようとしたら、目の前にフォークを突き出された。ぱくりと食べる。我ながら、上出来。

    「俺にも食わせて」

    フォークをバトンタッチする。食べさせ合いっこ、なんて子どもみたいなことを言っている彼が、一番あまい。

    きゅん

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  15. ずい、と左から伸びてきた手。上に向けられたその手のひらを私はじっと見つめた。

    「その手はなに」

    「チョコは?」

    バレンタインは普通、女の子が勇気を出して男の子に渡すものだ。渡される側が催促するものではない。

    何を考えているか分からないのはいつものことだ。私の気持ちに気付いているのか、いないのか。大体、他の女の子から既に沢山貰っているはずだ。私が好きになってしまった人は、何故だか妙にモテる。

    「もういっぱい貰ってるくせに」

    「うん、でも手作りってなんか重ーい。受け止めきれなーい」

    「今の発言、全女子を敵に回したね」

    差し出されたままの手のひらに、私は仕方なくチロルチョコを落とした。

    「わーい。やっぱこれだよね」

    うきうきと包み紙を剥がすその姿を横目で見ながら、何でこんな人を好きになってしまったのかとため息をつきたくなった。

    きゅん

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  16. 「うう…さむっ。今日手袋忘れちゃったんだよね…」

    ため息を漏らすと、隣を歩く浩也が「俺なんていつも素手だよ」とドヤ顔で返してきた。素手という言い方がなんだかおかしくて、思わず笑ってしまった。

    部活帰りに校門前で待ち合わせて、並んで歩く。デートらしいデートはまだしたことがないけれど、他愛のない話をしながら一緒に帰るこの時間が、私は好きだった。

    物足りなくなんか、ない。

    密かに思いを寄せていた相手から好きだと言われて、付き合うようになっただけで、もう十分すぎるくらいに幸せだ。

    「寒いよ〜〜手が凍る〜〜」

    「うるせえなあ」

    突然、手を取られた。驚きのあまり、ひっと変な声が出そうになった。

    初めて、手を繋いだ。

    「こうしてればそのうちあったかくなる」

    曖昧に頷くだけで、精一杯だった。

    きゅん

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  17. 「うーわマジかよ塚本の隣かよ〜」
    「それこっちのセリフなんですけど。一番隣の席になりたくない人が島田だったのに…」
    スラスラと自分の口から出る嘘。自画自賛するのも変な話だけど、私は嘘をつくのが割りと上手だと思う。
    席替えの際、今までは隣どころか近くにすらならなかった。私が嘘ばかりついているから神様が席を近付けてくれないんじゃないか、なんて思ったりもしたけれど、それが今回どうしたものか。まさかの隣。窓の外に広がる空に向かって手を合わせた。神様ありがとう。もちろん心の中で。
    「何ぼーっと外見てんだよ」
    「神様にお願いしてたの。次の席替えの時まで島田が大人しくしてくれますようにって」
    「はあ?つか先生の話聞いてねえのかよ、席替えはこれで最後だってよ」
    うそ。思わず口からこぼれるところだった。でも先生は私と違って嘘なんてつかないはず。
    にやけてなんかない。私は嘘もポーカーフェースも得意なんだから。

    きゅん

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  18. 「ちょっ……せんぱ、い」

    急に抱き寄せられた。ひとけが無いとは言え、学校の敷地内だ。逃れようと身をよじったけれど、逆に腕の力を強められた。抵抗は、許されない。

    その力がふいに緩んだと思ったら、抱かれた状態のまま今度は顔が近付いてきた。反射的にうつむく。

    けれど先輩のほうが1秒早く、私の顎を捕らえた。そのままくいっと上を向かされる。

    「2人の時は先輩呼び禁止って言ったよね、忘れたの?」

    言葉を返す隙さえ与えられなかった。そのまま先輩に口を塞がれてしまったから。

    きゅん

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  19. 教室の後ろにあるドアが、がらりと開いた。

    「おっす、千津(ちづ)」

    今日一番会いたくない人ーー幼なじみの、亜祐汰だった。

    「こんな日まで勉強かよ」

    「こんな日?」

    あくまで冷静にとぼける。亜祐汰はため息をつきながら、「バレンタインだろうが」と呆れたようにぼやいた。

    「ほんと興味ねぇよな、そういうの。てか聞いてよ。俺の下駄箱にさ、入ってたんだよ」

    「何が」

    「何がって、チョコだよ。…でもさぁ、誰がくれたのか分かんねぇんだよなー」

    色恋に関心がない人間、そしてただの幼なじみーー私のことを亜祐汰はそう見なしている。

    だから、面と向かってチョコを渡すことなんて、私にはできなかった。

    でも、渡したかったのだ。

    「なぁ、俺に気がある奴って誰だと思う?」

    嬉しそうに尋ねてくる亜祐汰に罪はないけれど、思わず睨んでしまった。

    「…知らない。自分で考えれば?」

    きゅん

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  20. 「気持ちは嬉しいけどさ…、この量はちょっと困っちゃうよね」

    榛野先生はそう言って、机の上に積み上げられた可愛らしい山にちらりと目をやった。

    リボンで結ばれた袋。

    柄が入っていたり、シックな色合いだったりの箱。

    「まあ、どれも義理チョコだろうけどさ」

    榛野先生は人気がある。見てくれが良くて、物腰穏やかで、女子がチョコをあげたがるのも分かる。

    私だってあげたい。

    でも私があげても、きっと先生は「ありがとう」と普段通りに微笑むだけだ。

    他の女の子達に対して微笑むのと同じように。

    先生にとって、私は、いち生徒でしかない。

    「持って帰るの大変じゃないかと思って…、これ、もしよかったら使って下さい」

    大きめの紙袋を、私は先生に手渡した。

    「咲田は気が利きすぎて時々怖くなるよ。でも、ありがとう」

    チョコは、渡さない。

    黄色い声を出しているあの子達と、私は違うんだから…

    きゅん

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  21. 「…あの、何度も言ってますけど、付き合っている人がいるんです」

    飛鳥先輩に呼び出されて告白されるのは、これで4度目。

    どうして飛鳥先輩みたいな人気者が、私なんかにここまで執着するのか、全く分からない。

    「でも、他校なんでしょ?」

    その情報もどこから仕入れたのか。

    「そうですけど…、とにかく、先輩の気持ちには答えられません」

    ごめんなさい失礼します、そう言って逃げようとした私の腕を、先輩がぐいっと引っ張った。

    「じゃあ、奪う」

    「…はい?」

    「略奪愛、ってやつ?」

    今すぐ逃げたいのに、体が動かない。

    先輩の視線に、射すくめられる。

    「俺なしじゃ居られないようにしてやるよ」

    きゅん

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