ケータイ小説 野いちご > 野いちご学園

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  2. 「ルカ!」

    聞き慣れない低い声に振り向くと、美形な青年が駆け寄ってきた。

    「やっと見つけた……会いたかった!」

    抱きつかれて、一瞬思考が停止した。

    「だ、誰…?」

    彼は私のことを知ってるようだけど……

    「ボクのこと覚えてないの?」

    すると、彼は悲しそうに眉尻を下げた。その表情には見覚えがあった。

    「うそ……カイくん?」

    私は、イギリスへ引っ越してしまった幼なじみのことを思い出した。

    「Yas!」

    再び、私を抱きしめる彼。

    「約束は? 覚えてる?」
    「……うん」

    一気に当時の記憶が蘇ってきて、私はうなずいた。

    10年前のクリスマス、彼が旅立つとき。泣いてる私に、約束してくれた。

    『おとなになったら、ボクがルカのサンタになる』

    そして、迎えに来てくれる、って……

    「I love you forever」

    きらめく大きなツリーの下、彼は私の額に優しくキスした。

    きゅん

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  3. 最後に聞こえた音は、強烈な痛みを伴った。

    「……?」

    目が覚めると、視界がボンヤリした。

    「梢ちゃん」

    優しい声がした方を見やると。

    「大丈夫?」

    頬に温かい感触がした。

    「佐伯、センパイ?」

    なんで先輩が?

    びっくりして、急速に意識が覚醒する。

    「俺のこと分かるんだね? 良かった……」

    安堵したような表情で、ため息を吐く先輩。

    「あ……私、ボールがぶつかったんですね?」

    サッカーの練習をしている先輩を見ていたら、こっちにボールが飛んできて……とっさに頭を下げたら、それが良くなかったようで。

    「あああ……すみません」

    恥ずかしくなって、両手で顔を隠す。

    「すごく心配した」

    顔から手を外され、そのまま握りしめられる。

    「せ、せんぱい?」
    「あのさ。目が離せないから、俺の彼女になって」

    先輩の言葉に、息を呑む。

    「好きだよ」

    うなずくと、唇が重なった。

    きゅん

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  4. 「今日の実果、何か違うな」

    改札を通る人並みを眺めていると、大地が隣で呟いた。

    「そう?」

    視線を外せなくて、顔を見ずに答える。

    「ん……あのさ、オレ」
    「あっ」

    大地が何かを言いかけたけど、私はそれを遮ってしまった。

    「ごめん。……何?」

    無理やり視線をはがして、大地の顔を見上げる。

    「やっとこっち向いた」

    微笑みながら、私の髪を撫で回す大地。

    「ちょっ、何すんのよ!」

    さっき洗面所で整えてきたばかりなのに……

    今日は特別な日だから。

    あなたの目に留まるように、少しでも綺麗にしたくて。

    「相変わらず、仲良いな」

    ふと、大人の声がして振り向くと……あなたがいた。

    「親父か。おかえり」

    そう、あなたは幼なじみの父親で。

    「あの、誕生日おめでとうございます」
    「ありがとう。髪クシャクシャだね」

    彼の大きな手が私の髪を優しく撫でてくれて……ひどく胸が痛んだ。

    きゅん

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  5. 「禅、ありがと……」

    そう言って俺の制服をつまんだ歌乃の手は、震えていた。

    先ほど電車内で中年の男に触られそうになったところを、気づいた俺が阻止して未遂に終わったんだけど。

    「けど、本当に良かったのか? 追いかけなくて」
    「いいの。逆恨みされたら困るし」

    未遂とはいえ、見ず知らずの男に近づかれて嫌な思いをしたよな。

    ……つか、俺もマジで嫌なんだけど。

    「禅?」

    歌乃の手を取り、人気のない路地へ入る。

    「俺に触られるのは、嫌?」

    握りしめた手に指を絡め、歌乃の顔をのぞき込む。

    「うっ、ううん」

    慌てて首を横に振る姿に、愛しさが込み上げる。

    「上書きしていい?」
    「えっ?」

    俺は、返事を待たずに歌乃を抱きしめた。

    「もう、あんな思いはさせない。俺が護るから」
    「禅……」

    こんなことがあってから気づくなんて、俺はバカだ。

    世界中の誰にも歌乃を渡したくない、って。

    きゅん

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  6. 「永瀬先輩♪」

    放課後、廊下で後ろから声をかけられた。
    聞き覚えのあるその声に振り向くと……

    「会いたかった~!」

    姉の恋人の弟で、私のふたつ年下の麻生雅くんが駆け寄ってきた。

    「みやくん、合格おめでとう」

    無邪気な笑顔が可愛らしい。

    「サンキュ。オレ、ほたるに会うためにがんばったんだよ?」
    「そうなの? 私も会えて嬉しいよ」

    みやくんのことは小学6年生のころから知っているから、本当に弟のようで。
    自分の後輩になったんだと思うと、感慨深いものがある。

    「あのさ。カレシとはうまくいってんの?」

    急に真面目な顔つきで寄ってきて、私は押されるように壁まで後ずさりした。

    彼のお兄さんにも昔同じ質問をされたことを思い出して、やっぱり兄弟だなぁと思う。

    「うん」

    うなずくと、みやくんは壁に両手を突いて顔を近づけてきた。

    「ふうん。……あのさ。そいつと別れて、俺と付き合えよ」

    きゅん

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  7. 足元にバスケットボールが転がってくる。

    「わり、取ってもらえる?」

    ネット越しに、同中の洋太が息を切らせながら声をかけてきた。

    「がんばってるね」
    「まあね」

    一年生で、もうレギュラー入りしてる洋太をうらやましく見つめる。
    センスがあって努力もしているから、当然なんだけど。

    不注意から足を捻って、練習にも出られない今の自分が情けなくなる。

    「はい」
    「サンキュ」

    ボールをネットの脇から差し出すと、洋太はカワイイ笑顔を浮かべた。

    この笑顔にやられたんだよね……

    中一のときに同じクラスになって、席が隣になって。
    洋太を追いかけて、バスケ部に入って。

    今では、バスケも大好きになった。

    「どうしたの?」

    なかなか受け取ってくれなくて、洋太を見上げる。
    すると、彼は私の手に手を重ねてきた。

    「よ、洋太?」
    「早く治るといいな。オレ、くるみと……くるみのバスケが好きなんだ」

    きゅん

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  8. 放課後、図書室の一番奥に来て。

    ってメールをもらって、息を切らせながら指定の場所へ向かう。


    「お、お待たせしましたっ」


    そこにはすでに先輩がいて、慌てて駆け寄る。


    「息切れするほど急いで来たの?」


    先輩は楽しげに笑って、私の前髪を優しく整えてくれた。


    「だって、あの……は、早く会いたくて」

    「ははっ、ももちゃんはストレートだなぁ」


    先輩はポケットに手を突っ込んで本棚に寄りかかった。


    「バレンタインのお返ししたいから、ちょっとだけ目つむってて」

    「えっ……は、はい」


    不安と期待の1ヶ月……私は覚悟を決めて目を閉じた。

    カサカサと音がして。

    先輩が近づいてくる気配。

    唇にやわらかい感触がしたあと、甘くて硬いものが口の中に入ってきた。


    なに……キスと、飴?


    目を開けると、先輩はぎゅっと私を抱きしめた。


    「チョコありがとう。俺も大好きだよ」

    きゅん

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  9. お昼休み、教室に突然やって来て。
    半ば強引に手を引かれて歩いてきたけど……
    着いた場所は、校舎の裏で。

    「どうしたんですか?」

    訳がわからず、蒼一さんを見上げる。

    「本当は朝一番にしたかったんだけどさ。ちょっと、後ろ向いて」
    「はい……?」

    言われるまま、蒼一さんに背を向ける。

    「おまえ、人目を気にするから」

    背後から手が伸びてきて。

    「誕生日、おめでとう」

    蒼一さんに、後ろからぎゅっと抱きしめられた。

    「あ、ありがとう……ございます」

    大きな体にすっぽり包み込まれて、ドキドキが止まらない。

    「好きだよ」

    甘いささやき声が耳をくすぐる。

    「私も、大好きです」

    振り向くと、蒼一さんは微笑んでキスをくれた。

    「俺のもんって、目印つけとかないとな」

    体が離れて、首に冷たい感触がした。

    下を向くと、銀色のチェーンが掛けられていて、その真ん中には蒼い石が輝いていた。

    きゅん

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  10. 「おはよ」
    「わっ、びっくりしたー」

    後ろから、頭を軽くはたかれて顔を上げる。
    思った通り、犯人は向かいの家に住んでるアツシで。

    「おはよ。……なんで笑ってるの?」

    朝は大抵不機嫌なのに、今朝はなぜか顔をにやつかせてる。

    「いや、サキってわかりやすいよな」
    「なんのこと?」

    隣に並んでアツシを見上げると、彼は私の髪をクシャっと撫でた。

    「ホントに切るとは思ってなかったからさ」
    「えっ?」

    私は慌てて髪を整えた。

    だって、アツシはショートカットが好きだって……

    「あっ」

    その情報源がもう一人の幼なじみのメイだったことを思い出し、がく然とする。

    「うそ、ハメたの?」

    アツシは答える代わりに笑った。

    「つか、髪型で好きになるわけじゃねーし」

    そう言って、手をつないでくる。

    「けど、案外似合ってんじゃん?」

    アツシは嬉しそうに何度も、私の髪をクシャクシャと撫でた。

    きゅん

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  11. 「おい、起きろ」

    小さく肩を揺さぶられ、まぶたを開く。

    「もう完全下校時刻だぞ」
    「はっ……うそ、寝ちゃった!?」

    慌てて顔を上げると、先生があきれ顔で私を見下ろしていた。

    「ひとりで居残ってたのか?」
    「はい。私、要領悪いから」

    冗談交じりに言ったのに、先生の目が同情のようなまなざしになる。

    「捨てられた子猫を見るような目つきで見ないでください」

    今度ははっきり冗談とわかるように、笑ってみせる。

    「そういう目では見てないよ」

    なのに、先生は真面目な顔で見つめ返してきた。

    「じゃあ、どういう気持ちで見てるんですか?」

    さして期待もしないで、プリントをまとめながら訊いてみる。

    「それは……内緒。ほら、帰るぞ」

    ふいに頭をポンポンと優しくたたかれ、私は先生を見上げた。

    「いつか、教えてくれますか?」
    「卒業するまで待てたらな」

    先生はまっすぐに私を見て、微笑んだ。

    きゅん

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