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  1. 70件ヒットしました

  2. ーゴトン…ゴン,ゴトン

    寝そうだ…と外を眺めながら思う。

    もしかしたらあいつも,と横目で見ると,やはり既に眠っていた。

    …無防備に寝やがって

    俺は少し気に入らない気持ちになりながら,そっと視線を外す。

    するとコトンっとでも言うように,ゆっくりと右肩に重みがやって来た。

    俺は一瞬息を詰めて,努めて平静を装う。



    「ねー,あれ」



    人の気も知らず笑う女性に,俺は内心舌を打った。

    起きろ…とまでは思わない。

    ただ,自力で持ち直して欲しいと切実に思う。

    チラリと視線を寄越すと,穏やかな寝顔が目に入った。

    …やらかそ。

    純粋な興味に,胸が擽られる。



    「…っんあ?」



    間抜けな声。

    パチリと開いた目とかち合い,俺はドクドク心臓を鳴らしながらそっと伸ばしていた指を回収した。

    邪なことはなにも…!



    「んー…あれ? どした?」



    二人の道のりは…長い

    きゅん

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  3. 「へぇ? 漢字,苦手なんだ。意外だね」


    普段完璧な彼の苦手なものに,私はニマニマ。

    すると彼は,むすりとした表情を浮かべる。



    ーったく,自分から聞いといてその反応は無いんじゃない?

    「だって……ふふっ教えてあげようか?」



    目を細めたまま,私は体を斜めにして,彼を見た。

    するとニマリとした彼は,後ろで組んでいた私の手を,ぐいっとひっぱる。


    「う,えぇ?!」


    驚いて奇声を発すると,顔が,異様に近い。



    「ちょっと,な,何?」

    ーそんなこと,言ってていいの?



    男子特有の,掠れた声。



    「やっ…ちょっと,はなして…」



    ぐっと強まった手の力。

    さらに近づく距離。

    息が,唇にかかる。

    真っ赤に染まった私の顔を見た彼は……



    ー照れてる? でも俺,普通に反撃とかしちゃうから。…知ってるでしょ?



    そう言うなり,私の唇を……奪った。

    きゅん

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  4. ーへぇ? 数学苦手なの? 意外。

    「べっ別にいいでしょ!? 私だって苦手な物の1つや2つ……!」



    言い終わる前に鳴ったガタンと響く音に,私は驚いて目を見開いた。

    手が,自分に向かって伸びている。



    ー教えて……あげようか?



    頬に添えられたのは,彼の手。

    いじわるな目が,私を覗き込む。



    「よっ余計なお世話よ……!!!」



    勉強なんて,はかどるわけがない。

    きゅん

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  5. 夢を,見る。
    たかが後輩の私が,モテモテな先輩の彼女になる夢を。
    さめなければと詠ったのは誰だったか……今ならその気持ちがよくわかった。
    ________。
    ずっと,夢を見ていた。
    たかが後輩の私が,モテモテな先輩の彼女になる夢を。
    夢の中の私は,先輩にいつも笑いかけられていて,愛されて,幸せそうにしている。
    現実だったらいいのに……



    「あははっ。夢じゃないよ」



    ポンッと頭を撫でられる。
    私の頭を撫でているのは……


    「先輩!?」

    「やだな。堅苦しい呼び方しないでよ笑 昨日OKしてくれたじゃん」

    「な,にを」

    「もっかい言わせるの? ひどいなー」

    「ちょっ」


    力強く大好きな腕に引かれる


    「好きだよ。付き合って…ーーー」

    『ーーー』

    「なっ」


    名前…!


    「あははっ。いいでしょ? 彼氏なんだから」


    忘れてたばつだと笑う彼は,ひどく楽しそうであった。

    きゅん

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  6. 今日が終わる。そんな時刻。
    私は彼氏と久しぶりの通話をしていた。
    「そろそろ切る?」
    もうこんな時間だ。
    と,私は彼に訊ねた。
    すると数秒の間をおいて
    「…ん」
    と返ってくる。
    名残惜しかったり? な~んてね。
    きっと眠たいだけ。
    私は夜中のテンションで頭がふわふわした。
    『……』
    またねって言おうとしたとき,彼がなにかを言う。
    でも声が途切れて,よく聞こえなかった。
    「ごめんね。Wi-Fi私の部屋じゃ遠くって…」
    こうしてちょいちょい途切れるんです。
    私が項垂れると,短いため息が聞こえてくる。
    呆れ顔で前髪をかきあげる,彼の姿が浮かんだ。
    「…好き」
    プーと切れた,いや切られた電話。
    なにそれ…ずるいよ。
    私は真っ赤な顔で電話マークとLI○Nを見比べ,ええいっと通話マークを押した。
    「私だって好きだよバカ!」
    そして,20コールほど待ってようやく繋がった相手に,思いっきり叫んだのだった。

    きゅん

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  7. 昼休み同クラの男子に呼ばれた私。
    今日が何の日かバッチリ知っている私は
    どの子に渡してほしいのかな~
    と,友達の顔を思い浮かべては内心にまにまとしていた。
    やがてその人はやってくる。
    「…すきです」
    彼は真っ赤な顔をして,それだけを私に伝えた。
    「ぇ…と,誰,が?」
    あれ? 思ってたのと違う? と混乱しながら訊ねれば,彼は
    「君が」
    とはっきり口にする。
    「あ…え?!」
    これは,知ってる。
    逆チョコと言うやつだ。
    でもその相手が私だなんて…
    何やら顔が赤くなった。
    実を言えば,私には恋とまではいかないものの気になっている人がいた。
    だけど…
    目の前の,私をじっと見つめる彼を見て,心が確かに揺れている。
    うぅ~でも。だけど,そんな簡単に決めちゃ…
    「友達からでも…いいですか?」
    私は恥ずかしくて,両手で顔を覆う。
    彼は
    「良かった。絶対振り向かせるからっ」
    と,小悪魔に笑って見せたのだった。

    きゅん

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  8. 「それ,お腹一杯だから全部あげる」
    「いいの!?」
    可愛めな幼馴染みとのお昼。
    私はいつもデザートだけ彼に分けてあげていた。
    それを利用して渡したのは一口サイズのガトーショコラ。
    彼だけに作ったのだから全部食べてほしい気持ち故の言葉。
    彼は箱を開けて固まる。
    「一応だけど,今日何の日が知ってる?」
    「…情緒的でいいでしょ?」
    彼の射抜くような目を前に,私は顔を反らした。
    止めてよ,何でわざわざ聞くの。
    こんな日だって納得して,勝手に義理だと思ってくれれば良かったのに…
    すると彼は後ろから私を抱き締める。
    「これって義理?」
    そして私のチョコよりも甘い声で囁いた。
    諦めて私は答える。
    「本命…ごめんね」
    「なんで謝るの?」
    「迷惑かもと思ったから」
    答えた私に彼は間髪いれずに言った。
    「そんなわけない。ありがとう。大好き」
    また私をぎゅっとしてにっこり笑った彼は,ゆっくりと私の手を握った。

    きゅん

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  9. やってしまった…
    音もなく零れる涙。
    私は今日この日に,浮気性の彼に文句を言ってしまった。
    静かに,それもほんの一言だけ。
    でも,私の3年の沈黙は無に帰する。
    仕方ないじゃないか。
    彼が私との約束を忘れて,女の子に手ずからチョコを食べさせて貰っているのを見てしまったら。
    にやける彼を見たら。
    彼の冷たい目,言葉。
    その全てが私をチクチクズブズブと傷つけた。
    「ねぇ」
    「あっ」
    知っている声に顔をあげると,持っていたチョコは取り上げられる。
    そして彼は中身を全て食べてしまった。
    「何するの!善悪の区別もつかないの?!それはあんたのじゃ」
    私が言葉を止めて腕をだらんと下げると,彼は顔を歪めた。
    違う,もう,誰のものでもない。
    そして彼の表情を見て思う。
    彼のしたことはひどいけど,同時にすごく優しい。
    「もっと傷つけ。もっと,もっと気が済むまで。そして,忘れて」
    私は顔を歪める彼に手を伸ばした。

    きゅん

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  10. 女子の声。
    私は階段側の死角に立ちながら廊下の様子を見た。
    その先には彼。
    私には混ざって渡す勇気もなければ,どうせ渡すなら顔くらい認識されたいと思うあべこべなプライドもあった。
    でも…と私は自分の心と会話する。
    せっかくなら
    「受け取って欲しい!」
    思いは音となって外に漏れた。
    そこで不運な事故。
    なんと降りてきた人にぶつかってしまったのだ。
    しかも
    「え!?俺君の事知らないけど戦果ゼロなんだよ。可愛いし考えてみるわ!」
    ちょっと上から目線でその人は勘違いしている。
    そして私のチョコを受け取ろうとした。
    ーパッ
    「「え」」
    「それ俺の。あんたの勘違いだから」
    「は?」「そっそうです!」
    咄嗟に口を挟むと,先輩らしき人は去っていく。
    「それ本当に俺の? ずっと俺の事見てたよね」
    「ぅ,はい」
    「じゃあ君は? 俺の彼女に,なってくれる?」
    頬を染めてボソボソと喋る彼は,結構純情なのてあった。

    きゅん

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  11. かさりと音をたてるそれには,私の大切な気持ちがこもってる。
    味見は,ちゃんとした。必要以上に作って,お腹一杯になるまで食べた。
    そして気付いたらギリギリの個数しかなくて焦ったのは,つい昨日の事。

    「なに? これ」
    「ガトーショコラ…です」

    私が彼に渡したそれは一口サイズにカットされ,つまようじが一本刺してある。
    本命であると目をじっと見つめると,彼は言った。

    「ごめん」

    私は覚悟していたにも関わらず息を忘れ,頭が真っ白になった。
    口を開けろ,そして笑え。そう暗示をかけても,口のなかはからから。
    せめて泣く前に,と立ち去ろうとしたとき。
    彼は振り返ろうとした私の後頭部を片手で押さえ,自身の胸に引き寄せた。
    混乱する私の耳に,喜色のある低い声が届く。

    「俺も,すきだ」

    私は自分の耳が捉えた音が信じられず,息を飲んだ。
    そしていまだに私を包む温もりに,無性に彼の今の顔を見たくなった。

    きゅん

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  12. 男女6人で帰る。
    俺が混じるのには理由があった。
    それが前を歩いてる彼女だ。
    今日は一風変わった話題が広げられる。
    「なぁなぁ」
    「あははっ分かってるわよ。あんた達のもある。ふふん,義理の中でも最上級の愛を込めてやったわ」
    「おっサンキュー」
    比較的良く喋る女子が男子をさらりと交わすと,何故か彼女に視線を向けた。
    「ね?」
    俺の心臓がドキンと大きく揺れる。
    別れの駅。
    「はいっ」
    期待通りそれは俺に渡された。
    「おぉシンプル!あ?お前のは凝ってんじゃん…マウント?」
    騒ぐ男子。
    「はぁ!? この子にそんなことするわけないでしょ?! 意味があんの! ふんっあんたには関係ないけど」
    話の舵をとる彼女がそう言うと,俺にチョコを渡した彼女は顔を赤くして帰ってしまう。
    チョコを固めただけのそれ。1つ食べて包みを裏返すと,そこには
    『好きです』
    「っ悪い外すっ」
    俺は爆笑する女子達を背に駆け出した。

    きゅん

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  13. 夢一杯浮かれる日💝
    そんな素晴らしい今日,私は彼をとびきり翻弄しようと思う。
    「あ」
    そこで都合良く今日がなんの日かに気づく彼。
    「ね,皆浮かれてるけどどうしたんだろ?」
    私ははやる気持ちを抑え,鈍感なふりをする。
    どう?彼女がイベントを忘れてるなんて。
    「…さぁ?」
    むむむ,手強いぞ。
    彼は私に黒い笑みを向けた…もしやバレてる?
    まさかね,続行!
    「見て? あそこ」
    「ほっ微笑ましい2人だね」
    ここに来て彼からまさかのアプローチ。
    そんなに私のチョコが欲しい? どうしよう嬉しい!
    私は目的も忘れてにまにまと頬に手を当てた。
    「ねぇ? あんまりおいたが過ぎるとホワイトデーもなくなっちゃうよ? あれはお返しをする日だからね」
    「えっ!? ごめんなさいありますっちゃんとあるから~!」
    彼は急いでだしたチョコを受けとると,私にキスを落とす。
    ~っ
    「ありがと」
    そして,満足げに笑ったのだった。

    きゅん

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  14. 『胸へのキス』



    午後2時頃,パチッと目を開けると,隣には彼がいた。

    お昼寝,添い寝,そういう類いのもの。

    天気が良く温かいと,時々こうして一緒に寝たりすることがある。



    「…ぅん?」



    ゆさゆさと彼を揺り起こすと,彼は寝ぼけた頭で目を開けた。

    そして私の足に自分の足を絡めると,ぎゅっと私に抱きつく。

    今日はやけに寝ぼけているな。

    私は不思議に思った。



    ーほら,そろそろ起きないと



    私は彼に声をかける。



    「もうちょっとだけ,じっとしてて」



    彼はふわふわとした声でそう言うと,さらに私に近づいて,私の胸にキスをして顔をうずめた。



    ーちょっと? もぉ~



    彼は全く起きようとしない。

    まぁ,いっか。

    私は諦めたように笑うと,そのままそっと目蓋をおろした。


          ー『所有したい·独占したい』

    きゅん

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  15. 「お兄ちゃん」
    私は靴を脱ぎながら,その背中に声をかける。
    両親の不在も同時に確認。
    「お前まだお兄ちゃんとか言ってんの? まじでバカ」
    分かっててやってるんだよ。
    その歪む顔が見たくて,歪んだ私がときめくから。
    でも
    「こんなことされても?」
    すっと降ってくるキス。
    煽るのはこうして触れてもらえるから。
    「俺が兄妹なんてごめんだって思ってること忘れんな」
    そんなのは私だってごめんだ。
    言葉に沢山の意味を含ませた彼は私の頭にポンと手を置く。
    私はその手を自分の頬にあてると,なんて返すのが効果的かと打算しながら斜め下へと視線を流した。
    そして良いこと思い付いたと小さく口角を上げ,私は彼の耳元へ近づく。
    「大好きだよ,ーー」
    耳に触れるか触れないかのすれすれで,名前を囁く。
    「っお前,今日は覚悟しろよ。2人も今日は遅い」
    連れていかれたのは普段断固拒否される彼の部屋。
    その意味は…分かるよね?

    きゅん

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  16. 寒い。
    「雪か,最悪」
    「えっなんで?」
    雪なんて
    「ひどいと電車止まるし,会社行く人は歩いてかなきゃなんねぇし。歩きずれぇし」
    「ふっ。うん,滑るよね」
    「じゃなくて,足跡つけたり黒くなってんの見ると,胸くそ悪くて人が一回通ったとこばっか見つけて通らなきゃなんねぇから」
    「そ……ふふっ,ごめっそうなんだ」
    「さっきからなんなの」
    「いや,あんまり自分以外の事ばっかり気にしてるから」
    しかも,彼女は続ける。
    「雪,ほんとは大好きじゃん」
    ……そんなわけない。
    「でも良いよね」
    俺の話なんて聞いてない彼女は,素手で雪を掬い上げると,俺の前まで持ってきて
    「ほらっ」
    真上にふわっと放った。
    小さな粒が2人の上から降ってくる。
    「綺麗でしょ? それに……」
    寄ってくる彼女になんだと視線を向けると
    「手が冷たくなったと手を繋ぐ理由ができる」
    ふふんと笑う彼女に,俺は理由なんか要らねぇよと笑った。

    きゅん

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  17. 「ゆぅきがこんこん。あーられがこんこん…ねぇ何で2つを一緒にしたのかな。似てるから?」
    「知らねぇよ」
    相変わらずどうでも良いことばかり気になる俺の彼女。
    「あ! 雪で思い出したんだけど,昔私のほっぺに雪つけてからかったでしょ! 仕返しするから目瞑って!」
    いつの話だよ,下手したら小一くらいだろそれ。
    まぁそれくらいで気がすむなら,と従う俺。
    そっと頬に手が触れる。

    -ちゅっ
    「へへっ冷たいかと思ってビックリした?」
    キラキラした顔で言う彼女。
    そして,今度はサクサクと歩く感覚を楽しみだす。
    子供かよ…
    「つーか待て,勝手に話し終わらせんな」
    -ガバッ
    「ふぇえ!?」
    「仕返しの仕返し」
    「バカっ,そもそもほんとは私そんなことされたことないから仕返しじゃない!」
    なにそれ。
    素直じゃない。
    「俺,お前のそうゆうとこ好きだよ」
    彼女はまた子供みたいに頬を膨らませて照れる。
    …ほんとだよ?

    きゅん

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  18. 『丁度良かった。寂しいから一緒にきてよ』
    そう手を引かれてやって来た図書室。
    俺,関係ない。
    そう思いながらも,俺で良かったと素直についてきてしまうのは惚れた弱み。
    彼女は俺じゃなくても声をかけたから。
    「わ! 雪だよ!」
    「…本は?」
    「良いじゃん,ね?」
    彼女は窓の外の雪におおはしゃぎ。
    「私ね,雪とスノードロップが大好きなの」
    可愛いからいいけどなにそれ?
    「そうなんだ」
    それだけ返す。
    「あのね,雪には色がなかったの。だけどそのお花だけが色を分けてくれて,だから今の色なんだよ」
    ここで漸くその正体が花だと知り,へぇと思った。
    「まるで君みたい。だからすき。私をいつも助けてくれてありがとう」
    …誰がこんなオチを想像できた? まるで
    「…告白みたいだ」
    ポロリ。
    「っそんなつもりじゃ……でもその,間違っては,ない,よ?」
    あぁ,君の心はいつだって真っ白で,どんな花よりもずっと綺麗だ。

    きゅん

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  19. 誰もいない公園,去年のこの日を思い出す。
    バカだなとは思うけど,祝日で,ご丁寧に名前のついた日だったから忘れられなかった。
    私はこの日,幼馴染みだった彼に少しの期待をもって『すき』を伝えた。
    玉砕して,今では話すことも叶わない。
    想いを告げた自分の間違いに気付いた私は,小さい頃の想い出の詰まったこの公園にきた。
    記憶の中の彼と作った小さな雪だるまを再現して,出来上がって,隣に彼がいない事実に胸が痛んだ。
    (明日になったらこの子も溶けて,私の涙はきっと隠してくれる)
    それでこの恋を終えようと
    誓った。
    なのに私はまたここにきて雪だるまを作っている。
    あの子が溶けてなったのは,液体ではなかった。
    私の中で,今も記憶と後悔として残っている。
    「ねぇ,何してるの? 俺,あんたの事さがしてて…祝日で良かった。俺,一年のうち一回の日なんて覚えてらんねぇもん」
    いや,まず誰?
    -雪が溶けたら春が来る。

    きゅん

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  20. 「月,綺麗だな」
    これは,告白ではない。
    2人とも,夜の星や月をなんとなく眺めるのが好きで,回りに虹がかかったり大きくなったりするとすぐ気付く。
    だから,これは日常。
    「うん…綺麗」
    それに,彼は文学に興味などなく,ましてやネットの恋愛記事など読まない。
    だから夏目漱石の逸話など知るはずない。
    それでも私のバカな心臓は跳ねる。
    平静を装って,私は思った。
    (どうせ子供っぽい冗談だと思われる。伝えてみてもいい?)
    練習として。
    伝えるとは呼べないのかもしれないけど。
    「今,なら…手が届くかもしれないよ?」
    彼は笑わずに,私にスッと視線を移すと,真っ直ぐな瞳で言った。
    「伸ばしてみてもいいの?」
    明らかに私に言っていた。
    しってた,の?
    -カァァァ
    本番に,なった…
    それに,その言い方だとまるで…
    …嘘でしょ?
    「ならもらう,ちょーだい」
    彼は私を抱き締めた。
    「は,はぃ」
    月が,綺麗ですね。

    きゅん

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  21. 幼馴染みで彼氏な彼の家。
    彼は自分のベッドで寝ていた。
    (ふ,黒猫みたい)
    癖っ毛な彼の髪をそっと撫でる。
    そうしているうちになんだか暇になって,ベッタリとうつ伏せていた彼の横に私も並んだ。
    そのまま彼の髪に手を伸ばすと,少しテンションが上がってくる。
    (かっかわいいー!)
    寝ていることをいいことに,私は彼にペタペタふさふさ触る。
    するとパッと手を掴まれて,気づけば私の手首はシーツに縫い付けられていた。
    彼は私の上にいる。
    寝起きとは思えない俊敏さ。
    やっぱり猫みたいだ。
    「ねぇ,誘ってる?」
    彼の目は熱く濡れている。
    低く掠れた声に,私は身の危険を察知した。
    「わっいやっちがう! ごめんね!」
    「ちょっと,うるさい」
    「きゃぁっ」
    彼は私の口を塞ぐ。
    彼は猫みたいだけどそうじゃない。
    私が起こしてしまったのは,ネコ科の猛獣だったらしい。
    「んっぁ」
    銀の糸をひく彼は,まさに猛獣だった。

    きゅん

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