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  1. 61件ヒットしました

  2. 「先にシュート外した方がジュース奢りな」

    部活終わりの体育館で浦田君のドリブルの音だけが響く

    早速一本、浦田君がシュートを決める

    ガッツポーズした浦田君の右腕に筋肉が浮き出る

    たった一本のジュースのために一本のシュートに真剣な浦田君が愛おしい

    「次、岸本の番」

    パスされたボールを受け取る

    集中してボールを投げようとしたとき、

    「…かわいい」

    突然耳元で囁かれて手元が狂ってしまう

    「よっしゃ、俺の勝ち!」

    「はぁ⁉︎最低!」

    結局、自販機に200円入れる

    100円の炭酸をお揃いで2本

    「岸本、金欠なんじゃねーの?」

    からかうように浦田君が言う

    「いーの、大丈夫」

    浦田君と一緒に炭酸を飲める時間が買えるなら200円なんて安いもんだ

    なんて絶対浦田君には言わないけれど

    きゅん

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  3. 卒業式のあと、春の暖かな陽光が包む保健室
    そこに並ぶ影が二つ

    「遥は、170.1センチ」

    「じゃあ次、空の番」

    先輩である私が卒業するまでには、私の身長を超える
    それが空の決めた目標だった

    「空は〜、170.3!」

    「よっしゃー!」

    空が天井に向かってガッツポーズをする

    「負けたー」

    たった2ミリで喜ぶ姿が今日もかわいい
    なんて言ったら空は拗ねるかな

    地元を離れる私は必然的に空とも離れることになる

    「ちょうどこれで身長測るのも最後だね」

    「俺はもっと伸びるから」

    「じゃあ楽しみにしてる」

    その言葉を最後に私は空に背を向ける
    顔はもう見えないのに伸びた影が私の足を止める

    躊躇ったその一瞬で後ろから抱きしめられる
    前より頼もしくなった空の腕の中に安心して涙が出る

    「きっと空はいい先輩になれるね」

    長い時間そうしていたのか、傾いた陽がさらに重なる影を伸ばしていた

    きゅん

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  4. 卒業式の今日くらい、最後に少しでも可愛いと思ってもらいたくて

    唇にリップを塗ってみた

    外に咲いた桜の花びらと恋心をギュッと詰め込んだ淡いピンク色

    窓に映った自分の口元をチェックする

    リップをしまおうとしたとき
    手から落ちたリップがコロコロと廊下の上を転がっていく

    まずい、こんなもの持ってきてるのが先生にでもバレたら…

    早く拾わなきゃ

    リップを追いかけた先に先生の姿

    「これ、佐伯の?」

    「はい、すいません」

    「別に俺はそのくらいじゃ怒んないけど」

    先生は拾ったリップを返してくれた

    「先生、このこと他の先生には秘密で」

    唇の前で人差し指を立ててお願いする

    先生も私のポーズを真似て
    「似合ってるよ、その色」
    と一言

    「それから、卒業おめでとう。佐伯」

    改って言われたら寂しさが爆発する

    これ、先生のためのリップなんだよ

    前を歩く先生の後ろ姿がほんの少し滲んでいた

    きゅん

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  5. あと何枚、花びらが降れば君に背を向けられるだろう

    どんなに言葉を重ねたって最後に背を向けるときは一瞬で、

    まるで明日も会えるんだと錯覚してしまうくらいにあっけない

    最後らしい別れ方は今もまだわからない

    「せーの、で帰ろう」

    「「せーの」」

    二人とも言えた
    もう君の顔は見えない

    ほら、歩き出さなきゃ

    なのに何でだろう
    ずっと言えなかった言葉
    君の顔が見えない今なら言える気がするの

    「好きだよ」

    返事は来ない
    でも君はいる
    ローファーの音が聞こえないから

    立ち止まったままお互いに歩き出せない

    やがて君のローファーの音が響く

    追いかけたいけれど、君の一歩を邪魔するわけにはいかない

    ローファーの音が消えたとき、後ろを振り返った

    君はもういなかった

    君の歩いた道に沿って、ポツリポツリと水玉模様が出来ていた

    きゅん

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  6. 新しい町で新しい人と新しい恋をするであろう先輩

    多分もう一生会えない

    結局、今日まで振り向かせることは出来なかったけれど

    「透先輩」

    最後に会えて良かった

    案の定、先輩の第二ボタンは既に無くなっていた

    都合が良い

    「先輩、第二ボタン無くなってますね」

    透先輩はよくモテる

    「これ、私の第二ボタン。あげます」

    先輩は少し戸惑ったような顔をしている

    「私、ジャケットのボタンは止めない派なので」

    先輩の手のひらでコロンと私の第二ボタンが転がっている

    離れてしまってもせめて、このボタンで私のことを時々思い出してくれたらいい

    それがただの後輩としてでも構わないから

    この小さなボタンが言葉に出来ない私の気持ちだった

    きゅん

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  7. 冬真君はくだらない話でも、いつだって目を合わせて頷いてくれる

    その頷きに何度、安心させられたことか

    だから私も目を合わせたいのに

    会話を重ねるごとにどんどん緊張していく

    打ち解けたいと思えば思うほど、固まっていく

    だから私は冬真君のほっぺたのほくろを見つめてしまう

    ほくろに逃げてしまう

    「どこ見てんの?」

    ちょっと拗ねたように私の顔を覗き込む冬真君とばっちり目が合う

    跳ねた心臓の勢いに、泳ぐ私の視線を冬真君は追いかけて離さない

    「なんか目、合わせられないや」

    そんな私の言葉にもやっぱり笑って頷いてくれる

    「大丈夫、俺が目合わせるから」

    その一言で余計に目が合わせられなくなってしまう

    今日も君のほくろを見つめてる

    きゅん

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  8. きっと誰もが君からチョコを貰えるか、淡い期待を抱いてソワソワしてる

    カッコ悪いことに俺もたぶんその一人

    あー、今日も可愛い

    視線の先には学年一のマドンナ原田さん

    その手に持っているチョコをきっと誰もが狙ってる

    「新山、はい」

    そんな原田さんからチョコを貰えた

    「お、ありがと」

    嬉しいのに喜びすぎずクールなふり

    「これはこの間、焼きそばパン奢ってもらったお礼ね」

    なんだ、ただのお礼か

    「一番きれいに作れたやつ選んだよ」

    それって…?

    俺の言葉を待たずに原田さんは足早に去ってしまった

    原田さんの言葉に深い意味なんてないかなぁ

    けれど俺の中の淡い期待は確かな甘みを含んで膨らんでいた

    きゅん

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  9. 昨日やっと上手く出来たガトーショコラ
    ちょっと背伸びした難しいレシピ

    「ん、おいしい」

    そう言う涼の顔はわかりやすく笑顔になったりはしない

    「甘いの苦手な涼のために頑張ったんだよ」

    友達にあげる用の甘いチョコとは別に
    涼の分は特別に

    それでも涼はポーカーフェイスだけど

    「毎日、バレンタインだったらいいのに」

    涼がぽつりと言った

    「何で?」

    もっとストレートな言葉を求めて尋ねる

    「岬が俺のためにチョコ作ってくれるから」

    あ、鼻触ってる

    涼が照れたときにする癖
    私しか気付いていない癖

    表情はめったに変えない
    そんな涼の言葉はほんのり甘い

    苦さの中に隠れた甘さ
    涼の言葉は何度も味見したガトーショコラの味に似ていた

    きゅん

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  10. 「俺、チョコの数勝負してんだー」

    竹田のやることはバカだ

    「そんなんじゃ、貰えるチョコも貰えないよ?」

    大事なのは数より気持ちじゃん
    それなのに男子ってすぐに数を競いたがる

    「チョコの数は男のステータスだから」

    何それ、しょーもない

    「もーいいや。竹田にはあーげない」

    私のチョコもただの数字になるんでしょ
    私の気持ちなんてたくさんの義理チョコの中に隠れちゃうんでしょ

    「私のチョコも男のステータスとやらの一部にしかならないんでしょ?」

    「そんなことないって」

    「月美からのチョコが一番欲しい」

    不覚にもそんな言葉に足が止まる
    こっちだって渡したくて仕方ないんだ

    「言っとくけど義理だから」

    そう言ってチョコを渡す
    素直じゃない自分

    「サンキュッ」

    竹田は嬉しそうだ

    本命だってこと、そのくらい察してくれないと困る
    だってこんなに拗ねたりするのは好きな人の前だけだから

    きゅん

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  11. 受験の資料を提出しようと職員室に向かうと懐かしいあの人の姿

    「百合先輩?」

    「透君」

    「何でここに?」

    「私、浪人してて、だから受験関係で用事があって」

    俺の憧れだった先輩
    その背中を追いかけるみたいに、俺は先輩と同じ大学を志望した

    「今年はライバルだね」

    先輩はふんわり笑った

    「二人とも合格出来たら、今度は同級生として会えるかもね」

    一年前、百合先輩に片想いしていたあの頃の気持ちを思い出した

    その変わらない笑顔や声に、忘れていたはずの気持ちがじわじわとよみがえる

    先輩と同じ教室でいられたら、もっとたくさん思い出をつくれるのに

    なんて考えてはたった一つの年の差がもどかしくて

    もし大学で先輩とまた会えるなら
    今度は同級生として関われるなら

    「頑張ります」

    「うん、また学校で」

    先輩の言う学校はこの高校のことじゃない
    そう気づいた上で約束する

    「また、学校で」

    きゅん

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  12. 久しぶりにあった元宮は少し大人っぽく見えた

    「あけましておめでとう」

    かしこまった挨拶はちょっと変な感じ

    さりげなく元宮が私に手を差し伸べる

    冬だから、寒いから

    心の中で誰に向けてかよくわからない言い訳をしてその手を握り返す

    今年最初に手を繋いだ
    新年ってだけで何でも最初って付けたくなる
    思えば去年最後に手を繋いだのも元宮だった

    最初と最後ってやっぱり特別

    最初と最後が元宮で良かった
    今年の最後も来年の最初も元宮であったらいい
    そしてまた元宮にとっての最後も最初も私だったらいい

    男の子はそんな細かいことは気にしないかな
    元宮みたいな繊細さの欠片もないタイプならなおさらだ

    「今年初、手繋ぎ!」

    元宮の口から意外な言葉

    「そうだね、記念だね」

    思わず緩んでしまった口元をマフラーで隠す

    私の一年の最初と最後をいつまでも元宮に彩って欲しい

    だって元宮は私の特別だから

    きゅん

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  13. 君に一方的に告白をして、返事も聞かず逃げるように去ってしまった

    あの日からもう何日経っただろう

    夏休み前の浮き足立った気持ちが漂う暑い日だった

    外を見るともう雪がチラついている

    私は新しい学校でも元気にやってるよ

    でも一つ、心残りがあるとしたら北野君と作ったオルゴールを捨てちゃったことかな

    オルゴール見て北野君のこと思い出すと辛いから、だから捨てちゃった

    北野君は元気にしてますか

    こんな感じかな
    年賀状に、あんまり重い話を書くわけにはいかない

    やっぱりあの時、返事を聞いておけば良かった
    もっとゆっくり話せば良かった

    あの告白はもう時効が来てしまったかな
    この気持ちも時間が消してくれると思ってたのに

    北野君のことが好き
    この気持ちに時効はないみたいだ

    きゅん

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  14. 空君には年上の可愛い彼女がいる

    私は空君のことが密かに好きだった
    だから私は空君のことを嫌いになりたい

    空君の短所を探してみた

    身長が低いところ
    細かいことで張り合うところ
    子供っぽいところ

    全然、完璧なんかじゃないのに
    空君はそれさえも長所にしちゃうんだ

    空君の長所は誰にでも優しいところ
    その優しさに簡単に心惹かれた
    今はそんなところが一番、嫌い

    嫌い、嫌い、嫌い、好き
    心の中で唱えても、自分が惨めになるだけだ泣きそうになって上を向く

    どこまでも澄んだ青空が広がっている
    今の私には似合わない、雲ひとつない空
    空君によく似合う、そう思わせるような空

    快晴の空からたった一滴、雨が降った
    それが私の正直な気持ちだった

    きゅん

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  15. 冬の体育は長距離走があるから嫌いだった
    でも今日はちょっと楽しみだったりする

    陸上部の武智のかっこいい姿を見られるから

    スタートの合図とともに男子たちが走り出す
    クラスの大半が長距離走は適当にこなす
    そんな中、武智は本気だってわかる
    そのいつになく真剣な表情が私まで緊張させた

    最終コーナー、一番に角を曲がってきたのは武智だった

    ラストのゴールまでの一直線
    どこまでも軽やかに駆け抜けて
    ゴールした瞬間、今日一番の笑顔

    「西野、疲れた〜」
    そして私の所にやってくる

    かっこよかったよ、って褒めようと思ったのに

    「なぁ、俺かっこよかった?」

    なんて聞いてくるから褒める気が失せる

    「そういうの自分から言うと台無し」

    そう言って武智の髪をわしゃわしゃとタオルで拭いた

    でも、武智が本気なら私だって本気で走る

    「私も頑張るから見ててよ」

    かっこいい武智を見たからきっと私も頑張れる

    きゅん

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  16. カーテンがふわりと揺れる
    放課後のオレンジ色の教室

    白いイヤホンを耳に突っ込んで、最近見つけたお気に入りのバンドの曲を聴く

    「何聴いてんの?」

    心地よい音色の裏から大好きな和哉の声

    私の左耳のイヤホンがあっという間に和哉の右耳へ

    「この曲、俺も知ってる」

    ちょっと切ない片想いの歌

    「舞もこーゆー気持ちになる相手いるんだ」

    和哉がニヤリと笑う

    「違うよ、ギターに合うかなと思って聴いてただけ」

    そう言ってはみるけれど、この曲を聴いて考えるのは他の誰でもなく和哉のこと

    「確かに、これギターで弾きたいな」

    和哉は持っていたギターで今聴いたあの曲を奏で始める

    和哉が弾いて、私が歌う

    たった二人の寂れたバンド

    歌詞が私の想いを乗せてカーテンとともにゆらゆら揺れる

    和哉もこの曲を聴いて私のこと考えてくれてたらいいのにね

    だけど、残念ながらこの曲はちょっと切ない片想いの歌

    きゅん

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  17. 駅のホームに二人並ぶ

    隣のさくらは小さい手で大切そうに熱々のホットココアの缶を握っている

    とっくにプルタブを開けたはずなのに、さくらは口をつけない

    「飲まないの?」

    「うん、まだ」

    ホットココアの温かい湯気がひんやりとした空気と混ざり合う

    「冷めちゃうよ」

    「冷ましてるの」

    ようやく口をつけた、と思ったら
    「熱っ」
    て言って顔をしかめる

    その表情すらどこか幼くて可愛い

    猫舌っていうより、本当に猫みたい

    「早くしないと電車来ちゃうよ」

    ちょっとせかしてみたら

    「次の電車まで一緒にいようよ」

    甘い返事が返ってきた

    こういう時、身長差って不便だ

    中々冷めないココアをじっと見つめているさくらの表情は見えない

    いいよ、その返事の代わりにそっとさくらに寄り添った

    きゅん

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  18. ごめん、別れよう

    クリスマスの今日、突然告げられた言葉

    別れる理由すら教えず彼は去っていった

    最低なヤツだ

    なのに涙が出るのが悔しい

    寒さに洗練された冬の空気の中
    冷たい顔を伝う涙だけが熱かった

    一人の帰り道マフラーに顔をうずめて歩く

    いつもより地下鉄の駅が遠く感じられた

    地下鉄の駅のエレベーターに足を踏み入れたとき、突然後ろからギュッと抱きしめられた

    一瞬期待して、顔を上げる

    エレベーターの奥の鏡に映っていたのは意外な人物だった

    「冬真くん」

    「だから、あんな奴やめとけって言ったんだ」

    耳元で声が聞こえる

    冬真くんは全部わかっていた

    二人を乗せたエレベーターの扉が閉まる

    地下に降りるまではこのままでいたい

    君の体温で私の凍りついた心を溶かして欲しい

    手の平にのせた雪がじわりと一瞬で溶けるように

    泣いて泣いて乾いた目からじわりと熱い涙が一滴つたうように

    きゅん

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  19. イルミネーションが光り輝く帰り道
    目の前を万里華が通り過ぎていく

    お互いの気持ちがすれ違って、話せないまま気付けばクリスマスイブになっていた

    今日もまたこの現状から目を逸らしてしまえば楽かもしれない

    でも今日だけはそれ以上に後悔する気がした

    勇気を出さなきゃ、関係は平行線のままだ

    「万里華」

    声が少し震えてしまったのはきっと寒さのせい

    僕の不安とは裏腹に万里華は僕の頼りない声に振り向いてくれた

    「僕はやっぱり万里華じゃなきゃ駄目みたい」

    なんて言われるだろう
    今更こんな想いを伝えたって遅いかもしれない
    冬の空気が沈黙を際立たせる

    万里華の目から町中の光を集めた涙がポロポロとこぼれ落ちた

    「私もだよ」

    その柔らかい泣き笑いの表情を何よりも守りたくて

    「遅くなってごめん」

    強く万里華を抱きしめた

    クリスマス前夜、少し早めにもらったプレゼントはほんの少しの勇気だった

    きゅん

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  20. ベランダを掃く手を止めて空を見上げる

    「雪、降らないかなぁ」

    あいにく空は快晴だ

    「おいっ、掃除サボんなよ」

    頭をコツンと肘で小突かれる
    宇佐見君だ

    「だってもうすぐクリスマスだよ?」

    「じゃあ、俺が雪降らせてやる」

    そう言うと、宇佐見君は手に持っていた黒板消し同士を叩き始める

    真っ白なチョークの粉がふわふわと風に運ばれてゆく

    それはまるで雪のようで

    「ちょっと綺麗かも」

    「だろ?」

    そう言って宇佐見君は得意気に笑う

    それだけで私にとって、もう最高のプレゼントだ

    私のためだけに降った雪が太陽に照らされてチラチラと目の前で輝いていた

    きゅん

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  21. カーディガンを着るようになって、コートを着るようになって、
    マフラーを巻くようになって…

    本格的に寒くなってきた頃

    駅前ではイルミネーションがやっていた

    『イルミネーション見に行きたい!』

    そんな私のひと言で私達はイルミネーションを見に来ていた

    ただの駅前の広場がこんなにもロマンチックになるなんて
    冬ってやっぱり最高だ

    「私、彼氏とイルミネーション見るの夢だった」

    と私が言うと

    「ベタだなぁ」

    と海斗は笑った

    夢中になってはしゃぐ私の腕をふいに海斗が引っ張った
    海斗の方にグッと近づく

    驚く私に海斗がそっと顔を近づける
    イルミネーションの影で私達は密かにキスをした

    コートよりもマフラーよりも温かいキスだった
    じんわりと心が溶けていくようだった

    きゅん

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