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  1. 286件ヒットしました

  2. 「いいなー、彼氏」

    「違うよ、茉優ちゃん。朔斗は幼なじみで」

    「はいはい」

    幼なじみの朔斗と私の噂は、学校では有名。

    ほんとは付き合ってるんでしょ、とか言われるけど、そんなことない。

    みんなが囃し立てる横でそっぽを向く朔斗は、きっと迷惑に思ってるんだろうな…。



    体育にて。

    「いくよー」

    「はいよ」

    投げられたボールをサーブする練習。

    「…ぅえっあ……!?」

    勢いよくジャンプしたつもりが、ボールには指をかすめた程度で、足がもつれて派手に尻もち。

    「いった…」

    「波柚っ………掴まれ」

    すぐそばまで来た朔斗が私をお姫様抱っこする。

    女子が騒ぎだす。

    「朔斗、こういうことすると、また噂が」

    「なんだよ、嫌なのか?」

    「朔斗が嫌なんじゃ…」

    「ばーか」

    キョトンとしている私の前で朔斗が意地悪く笑った。

    「俺はとっくに幼なじみ以上に思ってんだよ」

    きゅん

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  3. 『与那瀬くん、紗矢ちゃんのこと好きなんだって』

    まただ、根拠のない噂。

    中学の時だって同じことを言われて、勝手にドキドキして、けど何もなかった。

    今回だって信じない。

    「へー、そうなんだ」

    適当に相づちを打って、その場をやり過ごした。


    「紗矢ちゃん」

    平静を保っていた心臓が再びドキッとしたのは、放課後、当人の与那瀬くんに話しかけられたから。

    「今、ひとり?」
    「え、うん」

    与那瀬くんとは席も近くて、他の男子よりは少し仲が良いくらいの存在。

    そして、たぶん、私の片想い。

    「良かったら、一緒に帰らない?」
    「…えっ?」

    急な誘いにザワザワしだす心。

    「…俺、……紗矢ちゃんのこと、」

    3年ぶりの噂が真実味を帯びていく。

    私を見つめてくる与那瀬くんと、与那瀬くんに見つめられる私。


    “好きなんだ”


    きっと、2人とも、真っ赤だった。

    きゅん

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  4. 緊張した面持ちでスマホの画面に表示された〈先輩〉を横にスワイプした。

    「…もしもし」
    「もしもし、実桜?」
    「はい」

    遠距離になって一ヶ月。
    先輩との電話は、まだ慣れない。

    「俺ね、───」

    他愛ない話をして、笑って。

    先輩は外にいるのか、電車の音らしきものも聞こえる。

    「…じゃあ、」
    「先輩っ…」

    まだ、話してたいのに。
    どんなに、くだらないことでもいいから。

    「…あ、いたい」

    こんなの、迷惑かな。

    忙しいって、わかってるけど、電話じゃ足りないよ。

    「俺も会いたいよ、実桜」

    ピンポーンって。
    絶妙なタイミングで鳴ったインターホンに、まさかと思って駆けつければ。

    「…っ、先輩、」
    「はは、サプライズ成功?」

    視界が潤んでく。

    「泣くと思ったよ」

    先輩の腕に包まれた。

    「こうして実桜のこと抱きしめたくて来たんだ」

    大好きな温もりが、私の胸を満たしていった。

    きゅん

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  5. 「はい、これ、プレゼント」

    「え………わっ、かわいい」

    赤いリボンをほどいて出てきた白いウサギのぬいぐるみ。

    「ふっ……瑠奈、ぬいぐるみ好きだよね」

    「はい」

    先輩の言う通り、私の部屋は、いたるところにたくさんぬいぐるみが置いてある。

    「でも、こないだも誕生日プレゼントに素敵なネックレスもらったばっかなのに、いいんですか?」

    「いいのいいの、俺があげたくて買ってるんだから」

    優しく笑う先輩に、今日も好きが増していく。

    「こんなかわいいウサギ、嬉しすぎます。大事にしますね!」

    ベッドの脇にぬいぐるみをちょこんと置くと、先輩が近づいてきて私を抱きしめた。

    「っ、あ…あの……?」

    完全に心音ドクドク。

    「ぬいぐるみも可愛いけど…、俺には瑠奈が一番可愛いよ」

    「…っ」

    そう言って頬にキスを落とす先輩に、今日も心臓が持ちません。

    きゅん

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  6. 「ねぇ、見つけた?」
    「いや、なかなか見つからないね」

    嘘だ、全然探してないじゃん。

    クラスのみんなは校舎の周りに隠されたエッグを探してるはずなのに。

    君だけは、あの子を目で追ってる。
    今日も私の目には、君の後ろ姿しか映らない。

    話しかけたって上の空で、適当に相づちを打つだけ。

    悔しくて空を仰いだ。

    瞬間、容赦なく照りつける日差しに目を細めると「あっ…」と焦りぎみの声がして。

    君が慌てた様子で私から遠ざかっていく。

    「大丈夫?」

    そんな優しい声、私にはかけたことないくせに。

    君が手を差し伸べた先には、膝を擦りむいているあの子がいた。

    「これ、取れなくて…」
    「待って、俺が取るから」

    木の奥に隠れているエッグを取ってあげる君。

    「「あった!……あ、」」

    声が揃ったふたりが笑い合う。

    それを見ているしかできない私は完全に当て馬で。

    ヒロインは完璧にあの子だった。

    きゅん

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  7. 「おまえ、それ誰にあげんの?」
    「え、、先輩だけど」

    家庭科の授業。

    『イースター』が題材で、班にわかれてクッキー作り。

    綺麗にできた卵型のクッキーは、風邪をひいた時にお世話になった部活の先輩にあげるんだ。

    「楊は誰にあげるの?」
    「…ここにいる誰か」

    え……誰だろう。

    女の子かな…。

    楊の手元を見れば、可愛く焼けたピンク色のクッキーがあって。

    もらう人を想像すると、モヤって感覚が広がっていく。

    「じゃ、じゃあ、私……先輩に渡してくるね」
    「待てよ」
    「え…んむっ」

    振り返った瞬間、口の中に入れられたクッキーがザクッと割れる。

    こ、これって、さっきのピンク色のクッキー。

    「おまえに作ったんだよ、それ」
    「え?」

    ドクドク…と早まる心音。

    「俺にも作っとけ、ばーか」

    ふてくされたようにそっぽを向く楊に、ときめかずにはいられなかった。

    きゅん

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  8. 「いろんなエッグやうさぎが飾ってありますね」

    今日は先輩とデートの日。

    街中はイースターにまつわる置物で溢れていて。

    「見て、あのうさぎ。瑠奈みたい」

    「え、」

    先輩の視線の先をたどれば、頬をぷくっとさせてそっぽを向いている青色のうさぎの置物が飾られていた。

    「それは私がいつも怒ってるってことですか!」

    「ふっ、バレた?」

    「先輩!」

    クスクスと私をからかっては楽しそうに笑う先輩。

    毎度ながら、この笑顔にやられてしまう。

    「せ、先輩だって…たまに甘えてくるとことか、うさぎにそっくりですよ」

    せめてもの仕返し……だったのに。

    「えー……俺はうさぎを狙うオオカミ、かな」

    「え」

    人前で顎をすくわれ、キスされる。

    「せ、先輩っ…」

    「怒った瑠奈も全部、可愛くて好きだよ」

    至近距離で放たれた美声。

    …オオカミの甘さに溶けそうです。

    きゅん

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  9. イースターということで、クラスのみんなでコスプレすることになったんだけど。

    「侑衣ちゃん、これね」
    「え…」

    渡された衣装に思わず固まる。

    だって、見るからに似合わない。

    フリフリのワンピースにピンクのカチューシャまで。

    「どうしよ…」

    次々とみんなが着替えていく中、私は恥ずかしくて隣の空き教室に移動した。

    「誰もいないよね」

    ここなら…と安心して着替え終わると。

    ──ガラッ

    「!?」

    突然、ドアが開く。

    「「あ……」」

    同じクラスの風李くんと目が合って。

    「……か、わい」
    「えっ?」

    呟かれた言葉に驚く。

    「あっ、や……その…めっちゃ似合ってる」

    真っ赤な顔でそんなことを言われ、私の頬も赤く染まっていって。

    2人同時に目が泳ぐ。

    初めて男子に胸が高鳴った瞬間だった。

    きゅん

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  10. 今日はイースター。

    イエス・キリストの復活を祝うという意味で、『復活祭』とも呼ばれてるんだとか…。

    「おい、早く探せよ」
    「わかってるよ」

    家族全員で飾り付けたエッグを、それぞれ庭に隠して、今から探すところ。

    …ていうか、

    「なんで来たの!?」
    「あ? 暇だったんだよ」

    私の幼なじみで彼氏でもある琉唯は、よく隣の私の家にやってくる。

    嬉しい…けど、素直になれない。

    「俺が作ったのを見つけろよ」

    さっきから後ろをついてきて、そればっか。

    「そこじゃねぇよ、もっと左」
    「え?」

    手探りで小石をどけると、コロンとエッグが出てきた。

    「あった!」

    …ふーん、美術部なだけあって絵は上手いんだよね。

    「…え」

    何気なくエッグを後ろに回すと“好き”って文字が書かれていて。

    「…そういうイベント、好きだろ、お前」

    照れくさそうに顔をそらす琉唯に思わず抱きついた。

    きゅん

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  11. 吹奏楽部、一年生。

    男子の少ない部活に俺が入ったのは、先輩がきっかけだった。

    「先輩って、すぐ泣きますよね」

    「うるさい」

    そんな会話通り、先輩は泣き虫だ。

    喜怒哀楽が忙しなくて、おせっかい。

    そんな、俺とは真逆な先輩に、なぜか惹かれるものがあった。

    そして、今…

    「卒業されても、部長たちのこと絶対忘れませんっ」

    卒業目前の部長と離れるのが寂しいのか、やっぱり先輩は泣いている。

    けれど、最後の演奏になると。

    涙を拭いて、しっかり前を向いて。

    先輩の奏でるメロディーが三年生たちに届いていく。

    瞬間、心にストンと落ちてきたのは、

    頬から垂れてる涙をすくいたい。

    抱きしめてあげたい。


    あぁ、きっと、俺は。

    こういう真っ直ぐな先輩に恋してる。

    きゅん

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  12. 『大きくなったら結婚しよう』

    子供じみた君との約束を、バカみたいに信じてた。

    けれど、高校生になった君には好きな人ができて。

    私は相談役で。

    「なぁ、どうしたら意識してもらえるかな?」

    「手でも繋いでみたら?」

    思ってもないことを口に出してしまう。

    「おー、なるほど。
    お前にしか話せねぇわ、こんなこと」

    君がそんなことを言うから、いまだに“幼なじみ”から抜けだせない。

    放課後になって、ふと窓の外を見ると、
    助言通り、手を繋いでる2人が目に映る。

    悲しくて目を逸らした。

    私が君のこと一番わかってるのに。
    私が彼女より、ずっと…

    愚かな考えが心を支配する。

    でもね、わかってるよ。
    君が隣にいてほしいのは私じゃないって。

    目が合った君に口パクで「頑張れ」と送る。

    私ね、これだけは言えるんだ。

    君の幸せを誰よりも願ってる。

    きゅん

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  13. 「先輩、今日はポニーテールしてみたんです、どうですかね?」

    「……瑠奈にはあんま似合ってない」

    ぐさり、先輩のひと言が胸に刺さる。

    私の彼氏である先輩は学校内でも人気で、すれ違うだけで女子が振り返るほど。

    対して、私は冴えない系女子。
    パッと目を惹く可愛さもなければ、可もなく不可もない平凡人。

    先輩の隣にいる彼女としてふさわしいように、もっと可愛くなりたいのに。

    「やっぱり、私って全然だめだなぁ…。先輩だって本当は、もっと美人な子に彼女になってほしかったんじゃないんですか?」

    私、すぐ振られるかも。

    しょんぼりしてると、

    「バカなの?」

    「えっ」

    突然、口調が荒くなった先輩。

    「あんま可愛くなるのも勘弁して」

    「…え?」

    今、先輩……可愛いって…?

    盛大にため息をついた先輩が、私を抱きしめた。

    「瑠奈の可愛さは俺だけが知ってればいーの」

    きゅん

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  14. 「お前、告白されたんだって?」

    「まーね」

    「その男、趣味わるっ」

    「うるさいなー」

    いつも憎まれ口をたたく、同じクラスの亜貴。
    私がああ言えばこう言う。
    みんなからは仲良いね、なんて言われてるけど、正直よくわかんない。

    「で?付き合うの?」

    「関係ないじゃん」

    興味もないくせに。
    亜貴はいつも通り、私が告白されたって何とも思ってなさそう。
    断るよって言ったって、どうせ「あ、そう」とか返されるだけ。
    まぁ、そうだよね…と、軽く落ち込んでしまう自分に心の中でため息をついた。

    「今から返事に行く約束してるから、じゃあね」

    そう言って私は立ち上がる。
    だけど、なぜか腕を掴まれて。

    「断ってこいよ」

    なんか不機嫌な声色。

    「っ、なんで」

    「お前が男と付き合うの、嫌だから」

    「…っ」

    ずるいんだ。
    いつもより赤い耳を少しだけ逸らす亜貴は。

    きゅん

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  15. 「私、空賀くんのことが好きなのっ…」

    偶然、見てしまった告白に思わず目を見張る。

    私の幼なじみ、空賀。
    顔は整ってるしモテるけど、実際に告白を見たのは初めてで。

    「あの、良かったら…」

    その続きを聞きたくなくて背を向けた。

    「…はぁ」

    今日はツいてない。

    きっと、空賀は告白をオッケーするんだろう。
    あの子は、学校でも指折りの可愛い子だし。
    何度か、仲良さそうに話してるのだって見かけたことがある。

    「…い、弥宵、聞いてんのか」
    「…え?」

    いつの間にか、すぐそばに空賀が立っていて。

    「話、あんだけど」
    「おめでとう、恋人できたんでしょ」
    「やっぱり見てたの、お前だったか」
    「ごめん」

    私だって見たくなかったよ。

    「泣きそうな顔してるってことは期待していいのか?」

    「え?」

    ふわって、空賀の匂いが私を包んだ。

    「俺はお前と恋人になりたいんだよ」

    きゅん

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  16. 先生を好きになった場所も。

    先生と交わした言葉も。

    先生が頭を撫でてくれた手の感触も。

    一週間後には全部、思い出になる。

    「先生っ…」
    「結羽、また来たのか」

    美術室の窓から顔を覗かせて私は先生を驚かす。

    「部活はいいのか?」
    「今、休憩なの」

    運動部の私のコンプレックスだった身長も、先生がかわいいと言って頭を撫でてくれたおかげで少し好きになれた。

    「先生がいなくなるなんて寂しいー」
    「はは、俺も」

    冗談っぽく言えば、冗談っぽく返されて。

    「嘘だぁ、先生…ちょー笑顔じゃん」

    一週間後に先生は結婚する。

    「良かったね、いい人と出会えて」
    「結羽も良かったな、ちょっと身長伸びたんじゃないか?」

    先生の手がくしゃり、髪に触れる。

    「へへ、でしょ?」

    言えない。

    先生の頭を撫でる感触を最後に覚えておくために背伸びしてるからだよ、なんて。

    きゅん

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  17. 「おー、頑張ってんな、お疲れ」

    「先輩…」

    片手に荷物を持って。
    もう片手で私の頭を撫でる先輩。

    「いっつも片付け、サンキューな」

    「いえいえ、マネージャーですから」

    先輩は知らない。
    私がサッカー部のマネージャーになりたかったのは、先輩がいたからだってことを。

    「今日は、もう終わり?」

    「え、あ……はい」

    「送ってやろうか?」

    「そ、そんな…いいです」

    先輩は誰にでも優しくて。
    私を心配してくれてるだけで。
    期待なんかしてはいけないと、わかっているけど。

    「俺がお前と帰りたいの」

    笑って手を引く先輩に胸が高鳴る。

    「アイスでも奢ってやるよ」

    今日もまた。
    先輩をもっと好きになる。

    きゅん

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  18. ホワイトデーは私にとって…

    「おい、紗綾、運ぶの手伝えよ」

    最悪のイベント。

    「すでに両手いっぱいなんだけど」
    「まぁ、俺がモテるからな」

    む、むかつく。

    毎年、逆チョコとやらを大量にもらう私の幼なじみ、歩夢。

    私はいつも荷物持ち。

    重そうにしてるから断れないし。
    こんな幼なじみが好きだったりするから、余計断れない。

    「おー、そういえば」

    何かを思い出したようにポケットから小さなチョコが出てきて。

    「これ、やるよ」
    「っ、いらないよ! 女子からのなんて」

    なんて神経してるんだ。
    ほんと、悲しくなる。

    「ちげーよ、これ、俺が買ったやつ。朝、コンビニで」
    「えっ…」

    しばし思考が停止する。

    「俺からのチョコなんて光栄だと思えよ」

    そう笑って乱暴にチョコを投げ渡す歩夢。

    それでも嬉しいなんて思うこの心は、きっとどうかしちゃってる。

    きゅん

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  19. 「なぁ、味見てくれよ」

    左隣からかけられた声に思わず眉を寄せた。

    「えー、なんでさ」
    「結実ちゃんにあげるんだよ、このチョコ」

    ズキ。

    やっぱり…。

    「私に頼まないでよね、男子いるじゃん」
    「こういうのは女子の方がいいだろ」

    だから、なんでよりによって私なの。

    キミが私のことをなんとも思ってなくても
    私は違うのに。

    『岡田って話しやすいよな』

    キミが私に言った第一印象。

    そんなのじゃなくて私はずっと、
    結実ちゃんみたいにドキドキする関係でありたかった。

    けど、どうやらキミのドキドキは私に向いてはいなくて。

    私だけが一方通行。

    「なぁ、頼むよ」

    目の前で困ったような顔をするキミ。

    「味見のチョコは全部あげるからさ、な?」

    痛む胸を抱えながら、仕方ないなと手を差しだす。

    「じゃあ、ちょうだい」

    でも本当は、この手のひらはキミからのホワイトデーを待ってる。

    きゅん

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  20. 「あの、これ…」

    「もらえませんよ、こういうのは」

    職員室前、思わず聞こえてしまった男女の会話。

    …そうだよね。
    先生、ホワイトデーなんてもらわないよね。
    同僚の先生でも断られるんだから、私のなんて論外だ。

    ため息をついて遠ざかろうとする。

    「…比奈瀬?」

    すると、ドアを開けて出てきた先生に見つかってしまい……。持っていた箱を思わず隠す。

    「それ…俺に?」

    でも、遅かった。

    「いや、これは…」

    とっさに誤魔化そうとする私。

    「俺にじゃないの?」

    急に不機嫌な声。

    「じゃあ、没収」

    「えっ」

    「他の男にホワイトデーなんか渡さないで」

    「っ…先生、のです」

    正直に白状する。

    「え……マジ?」

    箱を手に、赤く染まっていく先生の頬。

    その表情は……期待してもいいですか?

    きゅん

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  21. 「先輩、先輩、今日、なんの日か知ってます?」

    気持ちよく昼寝している横で騒がしい声。

    毎度、笑顔で寄ってくるこいつは、俺の後輩で恋人の姫。

    「今日? 知らね」

    嘘だけど。

    「もうっ、そうだと思いましたよー」

    頬をふくらませて怒る姫。
    それを横目で眺める。

    「まぁ、いいですよ。私、こういうこともあるかと、逆チョコってやつを作ってきたので!」

    「は?」

    今度は素で驚く。

    「ジャジャーン!」

    さっきまで後ろ手に隠していたのか、紙袋が目の前に出てくる。

    中を開けると、いろんな形のチョコがあって。

    なんだよこれ…嬉しすぎんだけど。

    「あー…姫、俺もあるけど、いる?」

    ポケットから昨日用意しておいたクッキーの入った箱を渡す。

    すると、目を輝かせる姫。

    「作ってこないわけねーだろ」

    「先輩……っ大好き!」

    「知ってる」

    俺も大好き、なんて言ってやらないけど。

    きゅん

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