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  1. 15件ヒットしました

  2. 笑顔だった。
    「励ましなんかじゃないのに……」
     片思いがこんなに辛いなんて。
     さっきセンパイが言った言葉。センパイが言う資格、ないですよ。だって、センパイの片思いのせいで、センパイのこと好きな後輩が同じこと思っているのだから。
    (本当にセンパイのことが好きなんです)
     今だったら……、この気持ちはセンパイに届く? 今勇気出せば……。
    「あの……」
    「あ、ごめん。練習しなきゃだよね」
    「さっきの言葉が、もし、励ましじゃなかったら、センパイは……、どう思いますか……?」

    きゅん

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  3. 「でも……! 私は好きです、濱田センパイのこと!」
     気がついたら、そう叫んでいた。言ってからハッとする。いくら励ますためとはいえ、こんな恥ずかしいことを大声で叫ぶことができた自分にまず驚きだ。
     当然のようにぽかんとするセンパイ。
    「あのっ、ちっ、ちがっ……」
     パニックになって否定も肯定もできていない私に、センパイは言った。
    「励ましてくれて、ありがとう」

    きゅん

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  4. 「昨日、岸田にはっきり振られた。付き合っていたときは仲よかったし、別れても普通に話してくれてたから、まだ希望持ってもいいかなーなんて思ってたけど、好きな人がいるんだって。もう無理だわ」
     そして、黒板にポキポキと白いチョークを折りながら『完全玉砕』と書いた。
    (濱田センパイ、振られたんだ……)
     センパイへの同情もあったが、もう岸田センパイと濱田センパイが付き合う確率は少ないということに反面少し安心している自分もいて、私の方が複雑な気持ちになる。
    (私って性格悪いな……サイテー)
    「好きな人に好きになってもらえないって、片思いがこんな辛いなんて、知らなかった」
     そう言ったセンパイの声が震えていた。泣いているんだ。

    きゅん

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  5. 「え? あ、高い音? アパチュアを狭めて、鋭く息を入れる感じ。」
    「はい!」
     質問の答えも、素っ気なく感じる。他のことを考えられないくらい、頭の中がいっぱいなんだ。
    (あれ……? 『プロバンスの風』の楽譜がない……。音楽室に忘れてきたのかも)
    「センパイ、楽譜忘れてきちゃいました。音楽室にあると思うんで、ちょっと取りに行ってきます」
     
     教室に戻ってくると、センパイは目を伏せて泣いていた。
    (やばっ、今、入っちゃダメだ)
     教室の扉の前で気がついたが、動揺してしまい、引き返すときドアを蹴ってしまう。
    (やばっ……!)
     部屋の中から、ガタッと椅子から立つ音。
    「誰?」
     足音でこちらに向かってきていることがわかる。
    (か、隠れなきゃ……)
     焦って、足がもつれた。バタッと倒れ込んだときにセンパイが出てきた。
    「も、望月さん……?」

    きゅん

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  6. 「センパイ、あの、ここがわからないんです。なかなか高い音がうまく出なくて……」
     八月頭、太陽がギラギラとクーラーのついた音楽室でさえ光り、暑い。
     今日は、東野センパイは体調不良で休み、岸田センパイには適当な理由つけて休みってことにしておいて、と頼まれている。本当の理由は、濱田センパイに会いたくないからなのだけれど。
     あの日から、濱田センパイは元気がない。岸田センパイが辞める理由は、濱田センパイにあったとしても、すべてではないはず。私としては、いつもの明るい濱田センパイに早く戻ってほしいな、と思っていた。
     でも、無理だろうな、とも思う。だって、岸田センパイのことがまだ好きなのが濱田センパイを見ているだけではっきりとわかるから。
    (岸田センパイのことをそんなに思って辛くなってしまうのなら、自分のことを好きな人を好きになったらいいのに……。本当に、好きなんだな……)

    きゅん

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  7. (望月さんは、濱田が好きなのに……。他の人に優しいとか、言うなよ……。好きになりそうじゃん)
     部屋の中の東野センパイがそう思っていたとは、まだ知らなかった。
     濱田センパイと岸田センパイと私の三角関係……。そこに東野センパイも加わって、もっとややこしいことになってきたホルンパート。あまりいいとは言えない四角関係。三つの恋心が、今動き出す。

    きゅん

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  8. 「望月さんって、濱田のこと好きだよね?」
    (……ええ? 気づかれてる?)
     いきなりの発言に驚きを隠せない。
    「濱田のこと、軽蔑した?」
     今度はさっきよりも大きく横に振る。
     東野センパイはクスッと笑った。
    「よかった。濱田のこと、嫌いになっていなくて」
    「え?」
    「僕にとって、濱田はとても大事な友達だから。嫌われていたら悲しいし、望月さんも大事な後輩だろ。岸田さんもね。大事な人同士がこれ以上トラブルになるのは嫌だからさ」
     東野センパイは、自分のことよりも人のこと先に考える人なんだな。濱田センパイのこと、大事に思っているのがよく分かる。
    「東野センパイって、優しいんですね」
     私は無自覚にそう呟いていた。
    「え?」
    「なんでもないです。色々、ありがとうございました。パニックになっていたけれど、少し落ち着きました。……お先、失礼します」
     そう言って私は部屋を後にした。

    きゅん

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  9. 「あの二人、付き合ってたんだよ」
    (!)
    「岸田さんが入部してきてすぐかな。濱田が三年で岸田さんが一年の時。……でも、二人って相性よく見えないだろ」
     確かに、優しくてそんなにズバズバ言わない濱田センパイとサバサバ系女子の岸田センパイは反対のように思える。
    「それに濱田はモテるだろ。付き合ってからも告白してくる奴は沢山いたんだ。濱田は断り続けてたんだけど、岸田さんも辛くなっちゃったんだろうね、一年と少しでダメになってしまった。濱田の方は別れてからも好きだったからアプローチしてた。でも岸田さんは違ったんだよ。もう嫌いだった。今まで通りに接してくる濱田から逃げたんだ」
     だから岸田センパイは濱田センパイにきつかったのかとわかり、少しすっきりした気持ちになりながら、新たな事実に気がついた。
    (濱田センパイ、岸田センパイのことが好きなんだ……)

    きゅん

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  10. 「また真顔。ほら」
     私もハッとしてつられて笑う。
     そーそー、とセンパイはうなづく。
    (笑顔の方がいい……)
     好きでもない相手にそんなこと言うなんて反則です。好きな人に笑顔の方がいいなんて言われたら、ずっと笑顔でいてしまうじゃないですか。絶対叶わないって知っているのに、ほんの少しだけ……、期待してしまうじゃないですか。
    「センパイって……女ったらしですか?」
     小さな声で聞いてみる。
    「なんか言った?」
    「なんでもないです!」
     私が今できる最高の笑顔で言った。

    きゅん

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  11. 「そんなおかしかった? 結構マジだったんだけど」
    「おむすびころりんみたい。想像したら、おかしくって」
     センパイは、じっと私の顔を見た。時が止まったみたいに、センパイは私を見てる。
    「……へ?」
     驚いて、譜面で顔をばっと隠した。センパイの目が、驚くほど純粋でドキドキしてしまう。
    (なんなの? 今の……)
    「笑った。やっぱ望月さん、笑ってた方がいいよ」
    (……え?)
    「望月さん、さっき友達といた時はめっちゃ笑ってたのにさ、オレと二人きりになったら全然笑わないじゃん。緊張してた?」
    「……はい。少し、だけ……」
     センパイはニカッと笑って言った。
    「やっぱそうかー! そんな気がした。女の子だからさー、やっぱ笑ってた方がいいよ、絶対。そっちのがかわいいよ」
    (かわ、いい……?)
     私がキョトンとしているとセンパイは片手で自分の口角をにっとあげた。

    きゅん

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  12. 「望月さん、行こ」
    「はい!」
     濱田センパイに声をかけられ、三人のセンパイについていく。パート練の教室に行くまで、岸田センパイと東野センパイが先に行ってしまったので、濱田センパイと二人きりになった。
    「楽器、持って帰ってんの?」
     こくっとうなづく。さっき人がいるところではできた、はい! という返事も二人きりになると緊張して出なかった。
    「えらいじゃん。あれ、望月さんってバス通だっけ?」
    「バスと、電車です」
    「バス? えー、いいなー」
    「え?」
    「オレ、チャリと電車なんだよね。電車はいけるんだけどね、チャリだとカゴにホルンとスクバ二つ入んなくてさ、坂道ヤバイんだよー。スクバ落ちる」
     おどけた感じで言ったセンパイの声がおかしくて、クスリと笑った。

    きゅん

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  13. 私は、中学受験をして中高一貫学校に通う中学一年生の望月 まい。部活は吹奏楽部で、ホルンパートだ。この学校の部活は中学一年生から高校二年生まで。一年から五年と呼ぶ。ホルンのセンパイは五年の東野翔センパイ、三年の岸田結衣子センパイ、それから五年(吹奏楽部の部長でもある)の濱田遥希センパイ。私は四才年上の濱田センパイに恋をしていた。好きになったキッカケは入部してからちょうど一週間が経った五月のこと……

    きゅん

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  14. 〜第一章〜 好きな人に笑顔の方がいいなんて言われたら……。
     
     「秋の文化祭目指して頑張ろう!」
     雨でジメジメとしている六月。気温なんかの関係で、ホルンが吹きにくくなる時期らしい。(濱田センパイいわく)
     部長の濱田センパイがみんなに声をかけた。
    はいっ! とみんなの元気な声。濱田センパイはその調子、と顔をくしゃっとさせて笑った。私は、その笑顔をガン見。本当にかっこいい。濱田センパイはミスターコンでグランプリを受賞するくらいの整った顔立ちだ。部内でも、濱田センパイのことが好きな人は沢山いる。好きになったキッカケは容姿ではなかったが、一目見た時からかっこいいなとは思っていた。

    きゅん

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  15. 「ドからソまでは出るから、次はー、ラ!」
     きた。苦手なラの音を吹く時が。家に楽器を持って帰って何回練習してもラ以上の音は出ない。新たな緊張が降りかかる。
     濱田センパイの合図に合わせてスゥッと息を吸って、はいた。
     しかし、出たのはふゃーと、ラとはいえない汚い音。私のラを聞くと、二人は自分の練習に戻ってしまった。でも、濱田センパイだけは違ったんだ。
    「オッケー、大丈夫。初めはそんなもんだって、平気平気! 望月さん、口の形は悪くないんだよな、息の量だと思うよ。運動苦手な人? 肺活量足りてないから。お手本ね」
     コクリと頷きながらセンパイをみた。
     どこまでも聞こえるようなはっきりしたラ。センパイが真剣に吹いている時の眼差しが、とてつもなくかっこよかった。
     それ以来、私は濱田センパイのことが好き。この恋が叶うわけない。それはわかっている。そんな私の切ない恋物語が始まる。

    きゅん

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  16. 私は、中学受験をして中高一貫学校に通う中学一年生の望月 まい。部活は吹奏楽部で、ホルンパートだ。この学校の部活は中学一年生から高校二年生まで。一年から五年と呼ぶ。ホルンのセンパイは五年の東野翔センパイ、三年の岸田結衣子センパイ、それから五年(吹奏楽部の部長でもある)の濱田遥希センパイ。私は四才年上の濱田センパイに恋をしていた。好きになったキッカケは入部してからちょうど一週間が経った五月のこと……

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