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  2. 「はい、没収」
    「あー! 先生酷い!」

     目の前で昨日頑張って作ったチョコを取り上げられて私は叫んだ。

    「こんなに堂々と机に出しているお前が悪い。放課後、生徒指導室まで取りに来るように」
    「も~最悪っ!」

     友人たちの同情の視線を感じながら私は机に突っ伏す。――そして隠れてぺろりと舌を出した。



    「失礼しま~す」

     生徒指導室の扉を開けると指を舐めている先生と目が合った。

    「チョコ美味かった。ご馳走さま」
    「うそ、もう食べちゃったの!? 食べてるとこ見たかったのに」
    「来るのが遅い」
    「え~急いで来たんだけどな。でも先生、私の演技なかなかのものだったでしょ」
    「60点ってとこかな」
    「低くない!?」

     情けない声で叫ぶと先生は吹き出した。

    「でもチョコは100点満点だった。ご褒美をやらなきゃな。おいで」

     先生は私の頭を優しく撫でて、それから飛び切り甘いキスをくれた。

    きゅん

    3

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  3. 常時メガネとマスク着用の陰キャな彼に近づく子はいなかった。私も含めて。

     でもあの夏の日――。

     忘れ物をして夕陽に染まった教室に戻った私は、一人机に突っ伏す彼を見つけた。
     この猛暑でもメガネとマスクをしたままで心配になった私は初めて彼に近づき。
    「睫毛長っ」
    「へ!?」
     飛び起きた彼の顔からメガネが外れ私の足元に落ちてきた。
    「やべ!」
     私はそれを拾い慌てた様子の彼に手渡す。
    「壊れてはいないみたいだけど」
    「あ、ありがとう。……驚かないんだ?」
    「睫毛が長くて驚いた」
    「そうじゃなくて」
    「え?」
    「……バレてないならいいんだ」
    「よくわからないけど、熱中症じゃなくて良かった」
     笑顔で言うと、彼の瞳が大きく見開かれた。


    「あれで俺は恋に落ちたんだ」
    「またその話。気付かなくてごめんね! どうせ疎いですよ」


     彼が実は超人気モデルだと知ったのは、その少し後のことだ。

    きゅん

    5

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  4. 「ねぇ、そろそろ教室戻らないと」
    「もう少しだけ」

     彼は甘えるように私の肩に額を擦り付けた。
     先ほど予鈴が鳴って、今屋上には私たちしか残っていない。

    「メガネ外してるとこ、誰かに見られたらマズいんじゃないの?」

     私の彼には秘密がある。それは、彼が今人気急上昇中のモデルだってこと。
     クラスの女子も雑誌の中の彼を見て騒いでいるのに本人がすぐ傍にいる事には気づいていない。
     それは彼が学校では陰キャを演じているから。
     マスクは常に着用、メガネはダサいし、いつも俯いている。

    「それにまた寝癖。今日も放課後撮影なんでしょ」
    「ヘアメイクさんがいるから平気」
    「でもさ、学校でももう少しちゃんとしてみない?」
    「なんで」
    「この間、なんであんな陰キャと付き合ってるのって言われた」
    「じゃあ、いっそ皆にバラしてみる?」
    「……ううん。いい」

     私もこうして彼を独り占め出来て嬉しいのだ。

    きゅん

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