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「火、貰ってい?」
そう尋ねてきた彼の手持ち花火に、手元の激しい火を近づけた。二本の赤い光が辺りを彩る。
今日はバスケ部による花火大会。ある男子部員の発案で開かれたらしい。
「なんだよ」
クールなイメージと花火が似合わず、つい笑ってしまった。ううん、と誤魔化す。
そんな時、体育館から男子部員の会話が。
「今日のさ、誰が言い出したんだっけ?」
「確か……」
彼の名前が挙げられ、えっ、と思わず隣を見る。ばつが悪そうにそっぽを向いていた。
「合宿で全員、今度の花火大会に行けねえからって。イケメンで気遣いもできる。モテるわけだ」
「でもあいつ、部内に好きな奴いるって噂あるぜ」
「なるほど、建前か。今頃そいつと一緒かもな?」
勝手な噂だと同情しながらも、勘違いしないように必死だった。
だって今、一緒にいるのは……。
「……なんだよ」
彼の顔は、火が消えても真っ赤に彩られたままだった。
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「西内くん、もう来たかな?」
「テレビで見るよりカッコいいんだろうなぁ」
「メイク直さなきゃ!」
学校内は、女子生徒を中心に今朝からお祭りモードだ。SNSで人気急上昇中の現役高校生モデルが、雑誌の撮影にうちの学校を使うとかなんとかで。
芸能人に興味がない私にとっては、自販機のいちごオレの方が何倍も重要なのだ。
「相変わらずいちごオレ好きなんだな」
ボタンを押す手が止まる。隣を見ると、話題の彼がいた。確かにカッコいい。
というか、相変わらずって……?
「覚えてる? 西内涼太」
にしうち、りょうた……?
「なんだよ、会いたかったの俺だけかよ」
この声、なんなら顔も、私の記憶にあるものだった。彼は、幼稚園児の頃に引っ越した幼なじみだ。
「思い出した?」
何度も頷く。驚きで声が出ない。
「やべぇ、可愛い」
抱きしめられた。懐かしい、大好きな匂い。
「お前のこと、ずっと好きだった」
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「早く! 置いてくよーっ!」
「おい、走んなって」
カップルがそんな会話を交わしながら、私の背後を通り過ぎていく。
今日はクリスマス・イブ。彼らと同じように、私も彼氏とデートに出かける予定だ。
しかし、肝心の彼は現在、先生に呼び出され中。来るまでツリーでも眺めているとしよう。
毎年思うけど、溜息が出るほど綺麗。てっぺんの飾りが野いちごなのも、この学園らしくてステキ。
「だーれだ」
両目を手で隠され、大好きな声が耳に響く。思わずニヤける。
「ごめんな、お待たせ」
「寒かったろ」と心配してくれる彼に、ツリーの魅力を伝えた。待ってるのは全然苦じゃなかった、と。
「……ふーん」
彼の様子がおかしい。
「もうちょっと寂しがってるかと思ってた」
身につけていたマフラーを、私の首に巻きつける。
「ツリーに感動してるのすげえ可愛いけど、今日は俺のことだけ見て?」
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「おーい、帰ろうぜー」
私の彼氏は、カッコよくて、スポーツ万能で、明るくて、男女問わず慕われている、まさに完璧なイケメン……なのですが、困った点が一つ。
「ごめんなさい……、今日はちょっと」
「えー、なんかあんの?」
「妹のお迎えがあって」
「ふーん」
「ご、ごめんね。じゃあ急ぐから」
背を向けて駆け出した瞬間、「待って」と腕を掴まれる。
「な、なに?」
「妹と俺、どっちが大事?」
……彼は、私の妹にも嫉妬しちゃうほどの、彼女ベタ惚れ系男子なのです……!
「答えて」
「そ、そんなこと聞かれても……」
「俺のこと、好き?」
「も、もちろん! だから付き合ってるわけであって……! ただ、家族はまた違うベクトルで……っ!」
彼の唇が、私の言い訳を塞いだ。
「ごめん、嘘だよ。妹想いの彼女、最高。大好き」
ベタ惚れだけど、その分優しくて甘い。そんな彼です。
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「おっ、偶然」
正門前で会ったのは、付き合って三ヶ月になる彼氏。目を逸らし、おはよ、と呟いた。
「なんか変じゃね? お前」
そう、私は今日、変だ。おかしいのだ。ずっとそわそわして、落ち着かない。
「ああ、なるほど。そういうことか」
顔を上げると、ニヤニヤした表情の彼と目が合った。
「俺が夜、晩メシ食いに来るからだな?」
当然のようにバレていた。こくりと頷く。
先日、お母さんが私たちのデートに遭遇した際、半ば強引に彼を招待してしまったのだ。
「俺は楽しみだけどな、家でのお前見れるの」
笑顔で言った彼は、私の手をとって歩き出す。
頼もしい背中に惚れ惚れしていると、次の瞬間、彼はとんでもないことを口にした。
「いっそ泊まろうかなー」
予想外の内容に思わず足が止まる私。理由を尋ねると、「決まってんじゃん」と彼が振り向く。
「いつか一緒になる前の予行演習」
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「ウチら、結構イケそうじゃない?」
「マジで優勝しちゃうかも!」
もうすぐ球技大会。本番に向けて、今日も絶賛練習中!
「あ」
教室に戻る途中、チームメイトが足を止めた。
「男子たち、サッカーしてる」
その中でひときわ目立つ、キラキラ男子。
「やっぱりカッコいいよね」
「飛び抜けてイケメンだよね」
クラス一……、いや、学年一モテるイケメンの勇姿に、彼女たちは口を揃える。
実は私も、彼に想いを寄せる一人だったり。
ああ、今日もステキ。カッコいい。ずっと見ていたい。もはや神々しさすら感じる。
「おっ、女子も練習?」
彼が私たちに気づいた。隣の彼女が「そうだよ、バレーのね」と答える。
「お疲れさん。あ、ポニーテール」
彼の科白に、「え」と顔を見合わせた。
「珍しいな! 可愛いじゃん」
ひときわ赤面しているのは、チームで唯一のポニーテールだった私。
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「すげえ、虹出てる」
空を指差し、そう教えてくれる彼。
ついに今日、一学期最後の授業を迎えてしまった。
移動教室で行われるこの授業は、他クラスの彼の隣に座ることができる。
想いを寄せる私にとって、この時間も、二人で見上げるあの虹も、奇跡そのものだ。
「明日から夏休みかー」
「どうせ部活三昧だけどな」と苦笑する彼が愛しい。
何の接点もない彼とこうして話せるのも、最後かもしれない。
そう考えるだけで上手く笑えない。声が出ない。
「どした?」
優しい声に胸が痛む。大丈夫、と精一杯の笑顔で誤魔化した。
「……夏休みさ、予定ある?」
声を出して驚いてしまい、抱えていたペンケースやノートが腕から落ちていく。
「ごめん、急に」
拾い上げてくれた中に、一枚の紙切れ。
『花火大会、よかったら二人で行かない?』
彼は虹を見上げていた。
その耳は、赤い。
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「おはよ」
耳元で囁かれる。と同時に、背後から抱きしめられる。
「ひぇ、って。可愛いな」
私の反応を笑い、「可愛い可愛い」と頭を撫でてくる。
彼はただのクラスメイト。特別親しいわけではない。
それなのに彼は朝、私を見かけると必ずこうして抱きしめてくる。
普段、男友達や他の女子にはクールに接しているのに。なんで私だけ。
ある日、珍しく一人でいる彼を見かけた。
その瞬間、いつもの仕返しをしてやる、と闘争心がメラメラ湧いた。
隙を見計らい、彼の背中にダッシュする。そしてタックル!
「うおっ」
腕を体に巻きつけ、ホールドする。
「急に誰だよ……、って、はあああ?」
犯人は私だと認識した彼の様子がおかしい。
「えっ、ちょ、な、なにして……、え?」
異常に赤くなっている顔に、いつもの仕返し、と説明した。
「好きな奴にやられたら、勝てる気しねー……」
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「ねえ、俺と付き合わない?」
本当にツイてない。
朝、パパから再婚の報告があった。
ママが死んだ日から、二人三脚でがんばってきたのに。
他人と暮らさなきゃいけないなんて、嫌だよ。
「聞いてる? 付き合ってよ」
しかも登校早々、上級生に絡まれるし。もう、最悪。
「悪いけど、それは無理」
声の主に腕を掴まれ、引き寄せられる。
「この子、俺の彼女だから」
上級生は舌打ちをして去っていった。
お礼を言おうと見上げた目に映ったのは、とんでもないイケメンだった。思わず息を呑む。
「電話、鳴ってるよ?」
彼に指摘され、応答する。相手はパパだった。
『すっかり忘れていたよ。相手の女性に、柊 拓真《ひいらぎ たくま》くんっていう息子さんがいるんだ』
名前を復唱すると、彼が私を見つめる。
「なんで、俺の名前……」
ステキな彼と秘密の同居、始まります……!
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「でっかい溜息ついてんなよ」
声でわかった。幼なじみの彼だ。振り向く気力もない。
「なんかあった?」と尋ねてくる彼に、私は呟くように話した。
今日は朝から、絵に描いたようにツイていない。
寝坊してお母さんにも生活指導の先生にも怒られ、授業で忘れ物をして先生に怒られ、体育で顔面にボールをぶつけられ、女友達と大喧嘩して、挙げ句の果てに部活でミスを連発。
今は、すっかり忘れていた遅刻の反省文に取り掛かり中。
「一文字も書けてねえじゃん。こういうのは適当にやればいいんだよ」
悩みなんかなさそうだよね、と捻くれた返事をすると、彼の声色が変わった。
「あるよ、すげえある」
どうせ大したことのないものなんだろう。はいはい、と投げやりな態度で返した。
「でも全部、お前のことに関してだけどな」
息が止まる。思わず彼を見た。その顔は、赤い。
「……だから、そーいうこと」
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「許して、イケメン先生! お願い!」
「俺はそんなありきたりな褒め言葉には騙されねえ」
どうやら課題を忘れてしまったらしい女子生徒と、新任教師として最近就任した、幼なじみの恭一こと恭ちゃんのやり取り。
「でも先生って、超イケメンだよね」
「うるせー、誤魔化すな」
気安く恭ちゃんに触らないでよ。他の女の子の頭、撫でないでよ。
恭ちゃんをずっと慕ってきたあたしにとって、この距離は天国であり、地獄だ。
「どした?」
顔を上げると、あたしを心配そうに見つめる恭ちゃんがいた。
えっと……、と言葉に詰まっていると、不意に頭を撫でられる。
「こうしてほしかったんだろ?」
……なんでわかるの?
「お前のことなら何でもわかるよ」
「幼なじみだからな」と付け足す。大人の笑顔。ドキドキする。ズルい。
「安心しろ。家帰ったら、俺のこともこの手も、お前の好きにしていいから」
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「お、いた」
日誌を書いていた私を発見するなり、ぎゅっと抱きしめた。
学校祭が無事に終わり、校内はお祭りモードから日常へとシフトしていく。
「今日から部活かー……」
久しぶりの練習だからか、普段は部活大好きの翔が珍しく溜息をついた。
「ん」
私の首元に腕を回したまま、頬を近づけてくる。
なに? と返しても、「だから、ん」と科白は変わらず。
もしや。感づいた瞬間、頬がさらに近づき、私の唇に触れた。
頬から寄ってくるという、珍しいキスの仕方だ。
「いってらっしゃい、のキス」
してやったりな笑顔。
悔しい。けど、カッコいい。
「顔、赤え」
背けると、「もっと見せて」と正面へ向けられる。
再び降ってきた。今度はちゃんと唇だった。自然と目は閉じる。
翔との、キス。すき。
そっと離れ、同じタイミングで目を開けた。
「いってきます、のキスな」
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「これ持ってて」
そう言われて受け取ったのは、さっきまで彼が着ていたジャージ。
目を疑った。でも間違いない。何度確認しても、彼の名字が刺繍されてある。
コートに向かったのを見計らい、ぎゅっと抱きしめた。まだ温かい、彼の匂い。
一年生の頃からずっと、彼のことが好きだった。
だからすごく嬉しい。でも、どうして私に?
困惑しつつも、夢みたいなこの現実を噛みしめる。
「さんきゅ」
試合を終えた彼にジャージを返した。名残惜しいけれど仕方がない。
「お前のおかげで勝てた」
どうして? と尋ねると、ジャージを指差した。
「ぎゅっとしてくれてたから」
笑顔で答える彼に言葉を失う。顔が熱くなる。
見られてたんだ……。
「見守ってくれてるような気がして……、嬉しかった」
「だからさ」と、私の手をとる。
「次も勝てるように、今度は俺をぎゅっとしてくれない?」
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「カップルなんか見つめて、どうしたの?」
突然の声に驚き振り向くと、クラス一人気者の彼が立っていた。
「彼氏、欲しいの?」
窓から偶然見えた、一組のカップル。
手をつないだり体を寄せ合ったりして、とっても幸せそうだった。
私もいつか、大好きな人とあんなふうに。なんて思っただけ。
「じゃあ、する?」
え、と声が出る前に手を握られた。
「恋人ごっこ」
引き寄せられ、彼の体にぶつかる。ぎゅっと強く、けれど優しい力で抱きしめられた。
シャツの感触、熱い体、彼の匂いにドキドキする。胸が苦しい。
「緊張してんの? 可愛い」
細くて長い指が、私の頭に触れ、撫でる。
「キス、してみる?」
どこもかしこも整った顔を近づけられ、恥ずかしさのあまり目をつぶる。
「ごめん、やりすぎた」
目を開けると、優しく笑う彼が言った。
「キスは、ホントに付き合ってからな」
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きゅんができる!
本当に解除しますか?