ケータイ小説 野いちご > 野いちご学園

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  2. 「‥‥疲れたあ」

    テストに、委員会。
    今日はやることが多かった。
    ちょっと休もう。


    「‥‥お‥‥み‥お‥‥‥澪?」

    私の名前を呼ぶ好きな人の、陽向くんの声。
    いつの間に寝てたんだろ。

    「寝てんのか?」

    すごく優しい声。
    いつもは怒った口調で、そんな風に話しかけないのに。

    「無防備すぎんだろ」

    あ、普段の不機嫌な陽向くんだ。
    いや、ちょっと違うかも。
    子供っぽい、拗ねた口調。
    陽向くんの指が私の髪の毛を掬う。
    その指はそのまま耳をなぞって、私の頬を壊れものに触れるように包み込んだ。

    「俺のこと、好きになんねぇかなぁ」

    優しくて、切ない響き。

    「‥‥‥すき」

    「スキ」

    「ホントは、お前が好きなんだ」

    耳許にかかる甘い声。
    初めて彼の口から聴いた、好きの言葉。

    コツンと額同士をくっつけ、

    「‥‥だいすき」

    彼は、そうもう一度甘く囁いた。

    きゅん

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  3. 「ねぇ、"ピアノくん"」

    扉越しに聴こえる彼女の声。
    彼女は"ピアノくん"が誰であるか知らない。
    ひょんなことから、僕は彼女の恋愛相談に乗っている。とは言え、僕は気の利いた返事をする訳でもなく、ただピアノを弾いて彼女の語る言葉に耳を澄ませているだけ。
    それが彼女の望みだから。

    「今日の曲はなんだか悲しいね」
    (それはきっと、君の心が悲しいからだ)

    ぐず、と鼻をすする音が聴こえる。
    それだけで胸がつきん、と痛みを訴えた。

    「私、振られちゃったんだぁ。あはは、こんな泣いて、馬鹿みたいでしょう」
    (君の悲しい音は聴きたくない…)

    馬鹿なんて思うわけがない。君が彼をどれくらい想っているか、僕はずっと聞いていた。
    できることならいっそ馬鹿にしてやりたい。
    そんな男やめて僕にしとけば良かったんだって。
    けれど、
    ーー綺麗な音色。また聴かせて。
    彼女の冴えない僕への唯一の望みはそれだけなんだ。

    きゅん

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  4. 「月が綺麗ですね」
    「え?」
    「夏目漱石の言葉」
    「……それは知ってる」

    自分に言われたのかと驚いて、損をした。だって、私は彼に恋をしているから。
    図書室でよく会う男の子。運動神経抜群そうなのに、いつも小難しい小説を読んでいる。

    「じゃあ、これの返事は?」
    「……死んでも、いいわ?」
    「ありがとう」
    「……へ?」
    「だって、俺の告白受けてくれたんでしょ?」

    返事って……そういうこと?!てっきり、呼応が何なのかって話かと……

    「こういうの、君は好きかなって思ったんだけど、違った?俺、君に見合う男になりたくて。よくわかんない小説とか頑張って読んだりしたんだけど。やっぱり駄目だな。初めて話し掛けたときも、今も、君に困った顔させてばっかだ」
    「……困ってないから、困ってるんじゃない」
    「……え?ごめん、俺本当は馬鹿だからよく意味がわかんない」
    「……君の告白が、嬉しかったってことです」

    きゅん

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  5. 「……なにその荷物」

    不機嫌そうな声を上げたのは、私の幼馴染。家が隣で、気がついたら仲良しだった。

    学校祭一週間前。装飾が完成しそうにないから、私は持ち帰りで仕事を引き受けた。
     
    「それ、別にお前がやらなくてもいいんじゃねぇの?」

    私は実行委員を任されている。責任がある以上、仕事を投げることはできない。

    「装飾くらい誰だって作れるだろ。お前が家に持ち帰ってまでやらなきゃいけないことかって聞いたんだよ。ホント、昔から変わんねぇな。しょうがないやつ。……そういうところも、好きだけど。心配だって俺の気持ちも、少しはわかれよな」

    最後の方はモゴモゴして、何を言っているのかわからなかった。

    「っ、いちいち聞き返すな!俺の独り言!あーもう!夜、俺が手伝いに行ってやるから、窓開けとけよ」

    なんだかんだ言って、鉄太は優しい。クシャリと髪を撫でられて、彼の温もりがじんわりと身体に流れてきた。

    きゅん

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  6. あれ?今日先輩いないんだ。
    なかなかクラスに馴染めなかった私は、よく図書室に通っていた。そんな私に声を掛けてくれたのが図書委員の先輩。今では先輩のアドバイスのおかげクラスにも馴染めたけれど、こうして先輩を探しに未だにここへ来てしまう。

    「先輩に会いたいなぁ……」
    「なんで?」

    後ろから伸びてきた手が私を抱きしめた。

    「せ、先輩?!」
    「今日本当は休みなんだけど、君がいるかなと思って来ちゃった」

    目尻が下がった柔らかい笑顔。
    私の身体はすっぽり先輩に包まれてしまう。

    「なんで俺に会いたかったの?また困ってる?」

    力になるよ、なんて言って頭を優しく撫でてくれる。

    「困ってるって言ったら、助けてくれますか?」
    「うん、君のためならなんでもするよ」
    「先輩が、好きです。好き過ぎて困ってます」
    「……じゃあ俺が責任とんなきゃだね」

    ちゅっという短い音と共に、額に柔らかな感覚が走った。

    きゅん

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  7. 「おい!」

    階段を降りていると、後ろから呼び止める声が。振り返ると、そこには私の好きな人。息を切らして、急いで走ってきたことがわかる。

    「ど、どうしたの?なにかあった?」
    「お前、なんで最近俺のこと避けてんの?」

    彼のことが好きだと気がついたのはほんの数日前。それに気づいたら恥ずかしくて避けるようになってしまっていた。

    「そんなことないよ」
    「避けてるだろ。……俺とは目合わせるのすら嫌なのか」
    「ちがっ」
    「じゃあこっち見ろよ!」

    壁際へ追い込まれて逃げ場を失ってしまう。

    「俺、なんか嫌なことした?……お前にだけは嫌われたくねぇ」
    「え、それって」
    「お前が好きだ」

    真っ直ぐ交わった視線が逸らせなくなる。

    「私も、好き」
    「えっ……え?ホントに?」

    頷くと、彼は顔を優しく緩めて私をぎゅっと抱きしめた。

    「良かった……もう避けたりすんなよ。嫌って言っても側にいるから」

    きゅん

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  8. 具合悪い……
    保健の先生、今いないのか。
    ちょっとだけベッド貸してもらお。
    そう思ってベッドに向かうと、先に同級生の男の子が眠っていた。
    同じクラスだけど話したことないし、ちょっと気まずいかも。
    暑いけど、カーテン閉めなきゃ。

    シャーッ

    「いいよ。閉めなくて」

    その音で彼が目を開けた。

    「え、でも」
    「俺ただのサボリだから。君、ホントに気分悪そう。外出中の札掛けてあるし、よっぽど具合悪いとかじゃなきゃ誰も入ってこないからカーテン必要ないと思う。ちゃんと休んで」
    「あ、りがとう」
    「こんなときくらい、何も気にしないで目いっぱい甘えればいいんだよ」

    スッと伸びてきた手に思わず目をきゅっと瞑ると、彼の手が私の頭に優しくぽんぽんと触れた。
    そして、私をベッドに寝かせ冷却剤を持ってきてくれた。

    「お大事に」

    彼は柔らかく微笑み保健室を後にした。

    きゅん

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  9. あ、ヤバい。目が合っちゃった。
    下校中友達と話していると、正面から知らない男子学生がふたり歩いてきた。
    あの制服、不良校で有名なK高だ。髪染めているし、ピアスいっぱいついてるし、制服ダルダルに着てるし。すれ違うだけでも怖い。
    なにか持っているのが見えてチラッと横目で確認する。暑いわけでもないのに箱アイス?疑問でジッと見ていると、

    「食べる?」

    声を掛けられた。

    「へ?いや、あの、」
    「ははっ!そんな困らせたかったわけじゃないんだけどな」

    見た目にそぐわない、可愛い笑顔。
    突然伸びてきた彼の手に、なにをされるかわからず怖くてぎゅっと目を瞑る。身構えた瞬間、頭に柔らかな感覚。

    「ごめんな。可愛かったから、つい声掛けちゃっただけ」

    予想外の優しい手に、心臓が跳ねる。

    「じゃあな」

    私の頭を柔らかく撫でた手と、眉尻の下がった笑顔からは怖さは微塵も感じず、ただ彼の優しさが溢れていた。

    きゅん

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