ケータイ小説 野いちご > 野いちご学園

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  2. 「美咲は、その…佐藤にチョコあげるの?」

    真辺君は少し緊張した様子で、私にそう尋ねた。

    「ううん。あげない」
    「何で?好きなんでしょ?」

    そう、私は佐藤君が好きだった。
    この間までは。

    「もう好きじゃなくなっちゃったの」
    「そっか」

    嬉しそうな、ちょっぴり申し訳なさそうな、複雑な顔をする。
    先週、2人で帰った時に相談したことが、彼の頭に残っていたのだろう。
    真辺君は優しい。

    「じゃあ、今年は男子にはあげないんだ」
    「去年もあげてないけどね」

    男子にチョコをあげた時なんて一度もない。
    というか、イベントにかこつけて告白するのは嫌なのだ。

    だから、これは「そういうの」じゃないの。

    真辺君に小さな箱を手渡す。

    「え、これ…」
    「これはその…この間のお礼だから」
    「相談聞いた時の?」
    「うん」
    「そっか…」
    「告白はまた違う日にするね」

    その言葉を残し、私は家へ逃げ帰った。

    きゅん

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  3. 「美香先輩すみません!待たせてしまって…」

    しょんぼりとした様子で、私の可愛い後輩君は謝る。
    弟のように可愛がっているから、ついつい構いたくなってしまう。

    「私との約束の時間に遅れてまで何してたのかなー?」
    「それは…その…チョコ断ってました」

    予想外の言葉に驚く。

    「え?何で貰わなかったの?ハル君チョコ好きじゃん」

    昔から甘いものが好きで、この時期になるといつもそわそわしていたのに…。
    私の言葉に、ハル君は少し顔を赤く染める。

    「俺、好きな人以外からチョコ貰いたくない」
    「えー。せっかく持ってきたのに…」

    毎年あげていたから、今年もつい作ってしまった。
    しょうがない。自分で食べるか。
    バックから取り出した、赤い箱を見つめる。
    するとハル君がそれを取り上げて、中のチョコを一粒口に入れた。

    「好きな人以外から貰わないんじゃないの?」
    「はい。俺、先輩以外からチョコ貰いません」

    きゅん

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  4. あの箱は、駅前の洋菓子店の数量限定のチョコレート。
    あのラッピングは、有名チョコレート店のロゴが入ってる。
    あの紙袋は、手作りかな?気合入ってる…。
    「先輩。大量ですね」
    「おう。今年は去年よりも多いな」
    今年が最後のチャンスだから…。
    先輩は何でもないことのように、それでも嬉しそうにそれらを一つにまとめる。
    私はその間、キャンバスに視線を向けていた。
    頭がくらくらするのは、きっと油絵具のツンとした臭いのせいだ。
    「水樹は今年もくれないの?」
    「そんなに貰って、まだ欲しいんですか?」
    「えー?だって大事な後輩からも貰いたいじゃん?」
    大事な後輩、ね。
    別にどうでもいいけど。
    「あげませんよ」
    少しがっかりしたような表情で、先輩は帰っていった。
    その後ろ姿を見送りながら、今年も渡しそびれてしまったチョコを一人頬張る。

    先輩には絶対にあげない。
    だって、あげる前にもう答えが分かっているから。

    きゅん

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  5. また、押し付けられちゃった。
    誰もいない教室で、私は一人、学級日誌を書く。
    仕方ないよね…。
    佐藤君だって部活忙しいだろうし。
    そう思いつつも切なくなる。
    だって今日は、一緒に居られるチャンスだったから。
    普段は恥ずかしくて声もかけられないけど、
    週番だったら仕事の話とか気軽に出来ると思ったのに。
    当てが外れてしまった。
    「あれ?美咲、まだ仕事やってたの?」
    後ろのドアが開いて、真辺君が入ってきた。
    「うん、もう少しで終わるところ」
    「佐藤は?」
    「部活、行っちゃった」
    「え、でもあいつ…」
    何かを言うのを途中で止めて、少し考えこむ。
    「どうしたの?」
    「え?あぁ、何でもない。それ俺手伝うよ」
    そう言って隣の席に座った。
    「大丈夫だよ!もう終わるし」
    「じゃあ、一緒に帰ろ」
    真辺君の伸ばした手が私の頭に優しく触れる。
    「話、聞くよ」
    張りつめていた糸が切れたように涙が溢れた。

    きゅん

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