ケータイ小説 野いちご > 野いちご学園

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  2. 「傘忘れたなら彼氏に入れてもらえばいーじゃん」

    というマネージャー仲間の余計な一言によって、私は後輩の傘に入れてもらうことになった。

    「…ごめん。付き合ってないって何回も言ったんだけど…」
    「別に大丈夫っす。…むしろ勘違いしてもらった方が嬉しいんで」

    …キュン。

    「それに、俺から言おうと思ってたんで。先輩、体育館来る時に傘持ってなかったから」
    「えっ、そうなの?」
    「俺としてはラッキーです」

    …キュンキュン。

    「…ねえ、わざとやってる?」
    「は?」

    ザアアと激しく地面を叩く雨音。
    後輩はバサッと傘を広げてハイ、と私を中へ促す。
    「…お邪魔します」
    顔が濡れない程度に中に入ると、反対側の肩をぐいと引き寄せられて後輩の胸元に顔が当たる。
    「濡れるからもっと入ってください」
    ぱっと視線を上げると彼は小さく口角を上げていて。
    「…っわざとやってるでしょ!」
    「なんのことですか?」

    きゅん

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  3. 暴力は嫌い。
    相手を傷つけるのが平気な精神性のヤツなんかロクなものじゃない。それに、

    「…何で毎日ケガが増えてるの」

    口の端が血で滲んで赤くなっている。
    指摘すると、彼はヘラッと笑った。

    「大丈夫、勝ったから」
    「いや答えになってないし」
    「心配してくれてんの?やさしいね」
    「…」

    この男は私を好きだと言った。
    けれどこの男は私の嫌いな部類の人間だ。

    「自分を大事にできないヤツは嫌いなだけ」

    そう言い放つと、彼は目を丸くしたまま惚けたようにぽつりと呟いた。
    「…じゃあちゅーして」
    「…は!?聞いてた?私あんたみたいな人嫌いだってーー」
    「ちゅーしてくれたら喧嘩やめる。もう日課みたいなもんだったけど、好きな子の嫌なことはしたくないし」

    顔が熱くなる。
    ふざけるなと怒鳴りたかったのに、彼の稀に見る真剣な表情に、私の憤りは空気の抜けた風船のように萎んでしまった。

    きゅん

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  4. 今日は酷くついていないみたいだ。
    わざとではない。眠気が取れず思わずふらついた体が見知らぬ人にぶつかってしまった。…見た目がイカつい男性たちに。

    「待てやクソ女ァ!」
    「ごめんなさいごめんなさいわざとじゃないんですー!!」

    正門が見えると、そこには制服チェックをしている先生の姿があった。先生は私と背後にいる男たちを認識すると顔をしかめてハァとため息をつく。

    「せ、先生!警察を…!」
    「いいから早く中入って」
    ぐいと背中を押されて門の内側へ押し込まれる。

    「先生あぶなッ…、い…よ……?」

    男たちは先生を視界に入れた瞬間ギョッと目を丸くしてすぐさま踵を返したーーというより、逃げた…?

    「…先生、知り合いですか?」
    「知らない。ほら早く教室入ってね」
    ひらひらと手を振り促す先生の笑顔はどこか張りついていて。
    「…帰ったら卒アル見せてもらってもいい?」
    「絶対ダメ」

    きゅん

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  5. 「「あ」」

    最悪な場面で遭遇した。
    物音がして路地裏に視線を向けた先にバッチリ目が合ってしまった。

    「おーい待ってよ〜」
    「着いてくんな不良!」
    「おーこわ。不良より怖い」

    いつの間にか並行して走っていて私はピタッと足を止める。
    きちんと規則に従って制服を着た私と、よれたシャツに緩いスウェットサンダルの男。
    「何でちゃんと学校行かないの?」
    「行ってるって。最低限の単位は取ってるし〜」
    「おばさんが心配してたよ。一緒に手繋いで登下校してくれって」
    「げっ。…めんどくせー」

    テキトーに見えて容量が良くて、実は頭の良い幼なじみが苦手だ。真面目に生活しているのが馬鹿らしくて…

    不意にぎゅ、と手を掴まれた。
    「何!?」
    「手繋いで登下校してくれるんだろ?」
    「離して!仲良いと思われたら他のヤンキーに絡まれる!」
    「大丈夫、俺がいるし」

    …絶対好きなんかじゃない。
    こんなテキトーなやつ。

    きゅん

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  6. 開いた口が塞がらないとはこのことで、口からポロリとたまご焼きが落ちた。

    「ん?」

    童顔の彼はこちらに気づくと目を丸くさせつつも、胸ぐらを掴んでいる相手をボゴッと殴り倒す。
    初めて人が殴られる姿を見て思わずビクリと肩を震わせる。

    「ごめん、ご飯まずくなっちゃったね」
    「い、いえ、別に…」

    人の良さそうな笑顔に幻覚だったのかな、と疑ったが背後で倒れてる先輩らしき男の姿にやはり現実だったと認識する。

    「おねーさん先輩だよね。ぼっち飯?」
    「そうですけど…」
    「ふーん」
    あれ、私絡まれてる?
    「…先輩、俺の事怖くないの?」
    「…怖いですけど。人殴るとか、良くないし…その手も痛そうだし」

    え、と今気づいたかのように彼は赤くなった手の甲を見た後、ブッと吹き出した。

    「先輩やさしいね。ね、明日もここでご飯食べてよ。俺もそうするからさ」
    「…はい?」
    「仲良くしよーよ。セーンパイ♡」

    きゅん

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  7. 本が好き。
    静かに、心穏やかに過ごせるから。
    図書室は私にとって癒しの場だったーーのに。

    「…あの人、さっきからずっとこっち見てない?」

    図書委員の友人にひそ、と耳打ちされる。
    私は口早に「気のせいだよ」と答え手元に視線を下ろした。

    嘘だ。気のせいじゃない。
    私も気づいていた。ここ最近、窓際一角を陣取り、本を読むそぶりもなくただこちらを睨んでいる。恐ろしく喧嘩が強い(らしい)と噂ではきいたことがあるが、実際話したことないし、そもそも嫌われる理由がー……

    「おい」
    「はひっ!?」

    噂の当人がいつの間にか目の前にズンと立っていた。ぶわりと汗が額に浮かぶ。リンチされる!?殴られる!?

    と、バサリとテーブルに置かれたのは黄色の花束で。え?と首を傾げると、彼はこちらを睨みながら真っ赤な顔で言った。

    「す、好きだ。俺と友達になってくれ」

    …想定外のピュアなお誘いに、私は小さく頷いた。

    きゅん

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  8. わたしの好きな人は絶対にわたしを好きにならない。わたしに魅力がないから。

    友だちが次々に恋人を作ってわたしから離れていくのをみると辛くて、授業の時間以外は自然と1人で行動することが多くなった。

    逃げ場はいつも図書室。

    「…誰か、わたしのこと好きになって」

    ぽつりと呟いた声が誰もいない部屋に落ちて、じわりと涙が滲む。孤独と疎外感が一気にのしかかってくる。

    涙をぬぐおうとした瞬間、擦る直前に手首を掴まれた。驚いて顔を上げると、クラスメイトの彼がじっと私の顔を見下ろしていた。

    「いるよ」
    「え?」

    かあ、と頬を赤らめた彼はふいと視線を落として低く言った。

    「あんたのこと好きな人、俺だから。…泣くなよ」

    きゅん

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  9. 黙々と食器を洗う水の音が響く中、彼はずっと頬杖をついたまま「機嫌治った?」と聞いてきて。
    私は蛇口を止めながら「早く帰りなよ」と冷たく言い放つ。

    ホワイトデーのお返しをもらった。
    可愛い小箱のそれはお菓子で「ありがとう」と伝えると彼はひとつ頷いた。
    そして、全く同じ小箱を他の女子たちに配ったのだ。
    嬉しくて舞い上がった私の気持ちは急降下に冷めて、1日無視を決め込んでいると部活が終わる頃に彼はやってきてひたすら謝られていた。

    「だって義理でも貰ったもんは返さなきゃだろ?」
    「そうですかーわたしは義理と同列なんですねー」
    「拗ねんなよ」
    「拗ねてない。悲しいの!」

    「…オレさ、寝る前絶対お前のこと考えるんだよね」
    「はい?」
    「今起きてんのかなとか、風呂入ったかなとか。明日はバイトないし何しようとか、色々」

    「毎日お前のこと考えてる。それじゃダメ?」
    「…っそんなんで絆されないから!」

    きゅん

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  10. キュ、とシューズの擦れる音がした。
    顔を上げるとそこには制服に着替えた彼が居て、私は持っていたモップを手に首を傾げる。

    「どうしたの?」
    「…今日、14日っす」

    無口で口下手な後輩が喋った。
    それだけで驚いている私の頭では、それを聞いて察することができず。

    「えっと、何かあったっけ?」

    彼の顔が渋くなる。
    私の返答は間違えだったらしい。

    彼はムスリとしたまま手提げの小さな紙袋を差し出した。そこでやっとホワイトデーの存在を思い出し、まさかこんなお返しがくるとは…と再び驚いた。

    「え、もらっていいの?」
    「チョコ美味かったんで」
    「ありがとう。…でもこんなちゃんとしたもの返されちゃうと、まるで本命のやりとりみたいになっちゃうよ」
    「オレはそのつもりですけど」
    「………は?」

    視線を逸らしたまま頭を掻いてそう呟いた彼の耳は真っ赤に染まっていて、モップの音がカランと体育館に響いた。

    きゅん

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  11. ガラリとドアを開けると、そこに居るはずない人物がいた。

    「あ、おつかれさま」
    「先生!?」
    隣町の学校に転勤した先生ーーもとい私の恋人が、にこやかに微笑んで手を振っている。

    「ちょっと置き忘れた資料があって、取りに来てたんだ。もしかしたら会えると思って」
    「...待っててくれたんですか?」
    そう聞くと、彼は少し頬を染めてうんと頷いた。
    か、かわいい...!

    そういえば、と思い出してカバンを漁る。
    「この後チョコ渡しに行こうと思ってたんです。たまたま会えて良かった」
    どうぞ、と綺麗に包まれた箱を差し出すと、ありがとうと受け取ってもらえた。

    「...本気で僕がたまたま資料取りに来たと思ってる?」
    「え?あの...」
    ガタンッと横にあった椅子にぶつかる。
    いつの間にかメガネのフレームが乗った先生の鼻先が、私の鼻先に触れそうなくらい近づいていた。

    「チョコも嬉しいけど、君に触れたい」

    きゅん

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  12. ーー先生は、好きな人いるんですか。彼女いますか。年下は恋愛対象に入りますか。

    「ーーぃ、おい。話聞いてるか?」
    ハッと我に返ると鼻先に赤い箱が当てられた。
    今朝私が先生の目の前で落としてしまった『学校に必要でない物』。
    「見逃してやりてーけど、他の生徒に示しつかねーからなぁ。一応預かっておくから、休み時間に取りに来い」

    「で、放課後まで取りに来ないってどういう事だ」
    「す、すみません...」
    そのまま持って帰ってくれないかなぁと淡い期待をした。それは先生へのチョコだから。
    「...早いうちに返そうと思ってたんだよ。悪かったな、相手もう帰っちまったか?」
    「...目の前にいます」
    「え...、...。」

    声が震える。
    体が熱い。箱を両手で差し出しながら、赤い顔を上げて先生を見つめた。
    「...先生、もらってください」

    かわいそうな私のチョコレート。
    せめて好きな人に食べてもらいたい。

    きゅん

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  13. 「はいっコレあげる!」
    「...何これ」
    満面の笑顔で手渡された高級そうな箱。
    「チョコレートだよ」
    「...私って彼氏だったの?」
    「彼氏は俺でしょ!じゃなくて、普通に俺があげたいなーと思って用意しただけ」
    「...私があげたやつさぁ...」
    「あ、チロルチョコ?嬉しいよ。俺ミルク味好き」
    申し訳なさすぎる。
    これは挽回しないといけない。彼女としての立場とプライドのために。だってまさか、こんな本格的なものを用意してくるとは...。
    「...ごめんね。後日ちゃんとしたの渡すから」
    「いいよそんなの」
    「私の気がすまないの!」
    すると彼は一瞬目を輝かせ、うーん、とわざとらしく唸る。...何か嫌な予感。
    「じゃあ来週俺の家泊まりに来ない?」
    「行かない」
    「なんで!付き合って1年だよ?イチャイチャしたいよー」
    「恥ずかしいからいやだ」
    「お返ししてくれるんでしょ?」

    俺に君の時間ちょうだい。

    きゅん

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  14. 「お疲れさま、はいコレあげる」
    ガサ、とシンプルな小袋を差し出すと、背の高い後輩は目を丸くしてそれを眺めていた。
    恥ずかしくなってそれを押し付けて逃げるように背中を向けると「待ってください」と淡々と引き止められる。
    だって向こうの方がリーチ長いし。

    「…なんですか」
    「これチョコレートですか?部活前に配ってたやつ、俺もらいましたけど」
    「そ、それは部員全員用の義理だし」
    「じゃあこれは?」

    い、意地悪だ。
    明らかに本命だといってるようなものなのに、わざわざ聞いてくるあたり彼らしい。
    「…好きな人用の、やつ…」
    急にあたりがシンとなった気がして、そっと顔をあげると、いつもは堅物な後輩の顔が真っ赤に染まっていて。

    「お、俺も好きです」

    私は嬉しくなって思わず目の前の体に飛びついた。

    きゅん

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  15. 「…教師が隠れて喫煙するのどうかと思います」
    「お、来たね優等生ちゃん」
    私が隣に並ぶと、彼は吸殻を落としてつま先で潰し、紙ポケットのようなものに入れた。
    …私に気をつかってる。
    「…ん?何か顔赤くない?」
    「赤くないです。これ」
    ガサ、とパンパンに膨らんだ紙袋を先生に差し出す。カラフルな箱がはみ出るそれに、彼は目を丸くした。
    「…これ全部君が作ってくれたの?」
    「違います!他の!女生徒からですっ!」
    私の「あみだくじで負けたから私が代表で届けに来た」と焦る様子を一瞥して、「…ふぅん」と彼は落ち着いた一言。
    「…じゃ、じゃあ私はこれで!」
    「待って」
    ピク、と肩が揺れる。
    「ほんとに君のは入ってないの?」
    「…ないです!」
    ピシャン、と閉まる激しい音に「入れてますって言ってるようなもんだよなぁ」と先生が嬉しそうに笑っている事なんか、「バレてないよね!?」とプチパニックな私には知る由もない。

    きゅん

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  16. 「…なぁ、そんな毎日頑張って勉強する意味あんの?」
    「あたりまえでしょ!した分だけ結果が出るんだから。大して勉強してなくてもいい点取れるあんたとは違うんですー」
    「オレ天才だからね」
    「腹立つ」
    私は人より倍頑張らないと結果が出ない。だから今頑張らないといけないんだ。…こいつと同じ大学に行く為にも。
    「あ、そういえばオレ大学行かねーから」
    ガタンッと倒れかけるイスの音が響く。
    「は、は!?うそ、なんで!?」
    「働く。勉強そんな好きじゃねーし」
    「同じ大学行けると思ってたのに…」
    ハッと慌てて口を抑えるが無意味。諦めて小さい声で聞いた。
    「…会える時間なくなっちゃうね」
    「なくならねーよ。一生」
    え、と顔を上げると、頬杖をついた彼はニッと笑って言った。
    「結婚するから。オレたち」
    「…は!?」

    きゅん

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  17. 4年前、私の好きな人が姿を消した。
    といっても、大学進学きっかけで家出ただけだけど。

    ふー、と口の端から煙を吐き出す。
    授業サボって校舎裏でタバコ。明らかな不良だ。でも悪い事だとは思っていない。好きな人の匂いを、自分の体の中に入れたいと思った。

    「お前、いつの間に不良になったんだよ」

    聞き覚えのない声が耳に入る。
    顔をあげると、目の前に見覚えのある顔が私に向かって手を伸ばしていた。
    「懐かしいもの吸ってんな。俺が昔バカみてーに買ってたヤツじゃん」
    私の口からタバコが抜き取られる。
    「こんなん吸うもんじゃねーよ。肺真っ黒になるぞ」
    「…何でここにいんの…?」
    チャリ、と首にかけた証明カードを突きつけられる。
    「俺、ここの実習生なの。不良な生徒を連行しにね」
    ただいま、という彼の首に思わず抱きつくと、「俺いま先生だから!捕まる!」と焦る声が耳元で響いた。

    きゅん

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  18. 試験の総合点が上位に入っていなかった。
    最近何も上手くいかない。
    人と関わることが苦手で、友だちがほとんどいなかった。だからせめて勉強だけでもできないと、自分という人間がダメになってしまう気がしてーー

    「そんな根詰めて大丈夫っすか?」
    視界にひょこりと顔を出した後輩に驚いて、私は咄嗟に曲がっていた背中を伸ばす。
    生徒会の仕事の途中らしい彼の両手には大量のプリントの束。
    「…そっちの方が忙しそうだけど」
    「俺はこれ職員室に届けるだけなんで。それよりも…」
    すり、と目元を指で拭うように撫でられる。
    「寝てないでしょ」
    「…寝てる余裕なんかないから」
    「先輩。試験のこと気にしてんの?なら尚更寝た方がいいっすよ。頭ん中入んない」
    説教じみた言い方にイラッとする。
    「そんなの言われなくたって…!」
    ふと目の前が暗くなって、唇に何かが触れる。
    「何…」
    「頑張ってる姿好きだけど、無理して欲しくない」

    きゅん

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  19. 赤と金の糸で作られた小包型のお守り。
    それを貰ったのは私が小さい頃で、毎日肌身離さず持ち歩いている。

    「ーーそれ、大分年季が入ったなぁ」

    頬杖をついてこちらを見ている先生の視線の先は、わたしの首から提げた生徒証ーーに付いたお守りだった。
    「本来なら翌年に神社に返しに行くもんだろ。10年以上経ってないか?」
    「…分かってますけど、でも嫌です」
    少し黒ずんだそれを指で遊びつつ呟くと、先生は「一途な事だねえ」と自嘲の笑みを浮かべた。
    「他人事みたいに言いますけど、先生の話ですからね。わたしの気持ちを1度もまともに受け止めてくれたことない癖に」
    「だからだよ」
    え?と顔を上げると、真剣な眼差しがこちらを貫いている。
    「今はお前の真剣な気持ちを受け止められる立場じゃない」
    「…それって、生徒じゃなくなったら良いってこと?」
    ふ、と微笑んだ先生はそれに答えず、

    「そのお守り、一緒に返しに行くか」

    きゅん

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  20. 自分に、少しだけ自信が欲しかった。
    いつも校則通りのスカート丈を5センチ短くしてみた。友人は「似合う!そっちの方がかわいい」と褒めてくれたけど、

    「何だそれ。今すぐ戻せ」

    彼は気に食わなかったようで。

    「な、何でそんなこと言われなきゃ…」
    「変。お前っぽくない」

    グサッと乙女心を抉られた音がした。
    可愛いと思って欲しい人に否定された現実が、想像より辛いのもあるが、
    「…前にこういうの好きだって言ってたくせに」
    「は?」
    もういい、と俯いた私の腕を掴んで「おい」と呼んだ彼は少し焦っていた。
    「俺が言ったからそんな格好したのか?」
    「…うん」
    「俺にかわいいって思われたかった?」
    「…だからそうだってば!」
    何言わせるの、と半ギレで言うと、彼は頬を赤らめて口を隠す。
    「…かわいいよ。でも俺以外のやつがいる所では禁止な」

    きゅん

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  21. 「…お前、分身なんてできるようになってたのか?」
    「先輩、それ幻覚です」

    そうか、と改めて手元の資料に視線を戻す彼の様子に、私はため息を着く。
    「遅れてすまない」と真っ赤な顔をしてフラフラと教室に入ってきたと思えば何も無いところでつまづき、12月真っ只中なのに「今日は梅雨明けか?」とか言い出すし、資料も逆さのままだ。

    「先輩、熱ありますよね」
    「ない」
    「帰りましょう、荷物持つんで」
    「ないと言っているだろ」
    「先輩」

    ぐいと腕を引いて彼の額にピタッと自分の額をくっつける。
    「体調管理も仕事のうちですよ。帰りましょう」
    「…わかった」

    意外とすんなり頷いた様子に、私は首をかしげつつ教室を出た。


    「…先輩、何か近くないですか?」
    「そうか」
    「どうして手を繋いでるんですか」
    「熱があるからだ」
    「さっき熱ないって…」
    「熱がある。だから、少しだけ甘えさせろ」

    きゅん

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