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  1. 53件ヒットしました

  2. 暑い。
    こぢんまりした教室にあるのはガリガリと変な音がする扇風機が1台のみ。

    「何でエアコンつけないんですか…」
    「節電活動にご協力ください、って念押しされてんだよ」

    嫌味ったらしいハゲ教頭の顔が浮かぶ。

    「それパワハラ通り越して虐めですよ」
    ピッとボタンを押して冷房をつける。
    それを咎めることなく、先生は私に呆れたような目を向けた。
    「せっかくの長期休みなのに学校来る物好きはお前くらいだぞ」
    「家にいても暇なんですもん。それに人と会えないし」
    「会えるだろ。電話なりSNSなりで友だち誘うとか…」

    じゃあ先生の連絡先教えてください。

    ーーなんて。

    きゅん

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  3. 「今日の降水確率は80パーセント…ですって、先輩」

    ザアアアと振り続ける雨を眺める私と、スマホを淡々と操作している後輩。
    「日本で天の川見れる所ってあるのかな」
    「さあ…北の方とか?」

    はぁ、とため息を吐く私に、彼は物珍しげに目を丸くした。
    「そんなに見たかったんです?」
    「そりゃ…だって絶対綺麗だし、それに1年に1度しか会えないのにかわいそうだなって」
    「先輩、意外とロマンチストだったんですね」
    「あっバカにしてる!?」
    「してませんよ。可愛いです」

    可愛い…なんてからかう生意気な後輩をキッと睨むが完全無視。あ、でも、と思いついたように口を開く彼に、今度は私が目を丸くする番だった。
    「1年に1度しか会えないからこそ、2人きりで再会したいのかも。他の人に邪魔されずに、ね」
    「…意外ロマンチスト?」
    「…先輩のがうつったんです」
    顔を赤らめた彼に、私は少しだけ気分が良かった。

    きゅん

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  4. 「ーー学校では2人きりにならないって言っただろ」

    背中に目でもついているのだろうか。
    驚かせようとしていた忍び足が無駄になってしまった。
    「ちがいますよ。たまたま!偶然!通りかかったら先生がいたんです」
    胸を張って言うと、先生は苦笑してポンポンと座っているベンチの横を叩いた。
    失礼します、と腰を下ろすと自然と先生と肩が触れて、少しだけ気恥ずかしい。
    「先生は何か願い事しましたか?」
    「するか。いい歳したおっさんだぞ」
    「えー。じゃあ何か叶えたい事とかは?」
    んー、としばらく考える素振りをしたあと、私をじっと見て口角を上げた。
    「秘密」
    「な、なんで!気になります」
    「いずれ分かるよ」
    どういう意味?と首を傾げると、先生はそっと耳元に口を寄せて囁いた。
    「お前が卒業したら、俺の願いぜんぶ叶える予定だから。覚悟しておけよ」

    きゅん

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  5. 1年に1度だけの願い事をすれば叶うロマンチックで素敵なイベントーーのはずなのに。

    「どうして毎年曇りなの!?」
    「梅雨と被ってるからだろ」

    窓の外をみて淡々と言い放たれた言葉にショックを受ける。形だけでもと各クラスに笹と短冊を用意されており、各々で願い事を書いて飾る。私は周りに見られないように恋の成就をお願いしたのだが…

    当の本人は全く興味なさそうですがね!

    「今年こそは天の川見れると思ってたのに…」
    「見れないと願い事って叶わないの?」
    「…わ、わかんない」

    きゅ、と手元にある短冊を握りしめる。

    「…本人に聞いてみないと」
    「…じゃあ俺も聞いてみようかな」

    へ?と顔を上げると、彼はまっすぐに私を見ていた。

    「お前が俺のこと好きになってくれますようにって書いたんだけど、どう思う?」

    きゅん

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  6. 彼の優しいところが好きだ。
    でも、優しいすぎるのはどうかと思う。

    「また雑用押し付けられてる!ちゃんと断らなきゃダメでしょ!」
    「押し付けられたんじゃなくて、頼まれたんだよ」
    「意味同じだよ!」

    彼が断らないのを知っていて周りは無神経に用事を押し付ける。掃除当番変わって欲しい、教材を準備室まで運んで欲しい。この間なんか大人数のジュースを1人で両手に抱えていたのを見てさすがに頼んだやつを引っ捕まえて怒った。

    パシリなんて断らなきゃ!と言うと、
    パシリじゃないよ、頼まれただけだよ。と彼は言う。
    何が違うのかさっぱりなので、私は一方的に怒っているのだが。

    「…なんでニコニコしてるの」
    「え?やー、なんか嬉しくて」
    ふふ、と頬をゆるめた彼は私の頬を撫でた。
    「俺のために怒ってくれてるんだなって。かわいいなぁって、見てた」
    真っ赤になって口をパクパクさせる私に、彼はまた柔らかく笑った。

    きゅん

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  7. 先生が好きだ。
    けど、この気持ちは抑えておかないと。
    いつ誰にバレるかわからないから。

    「…とは言っても、出なさすぎだな」
    「へ?」

    日誌を書いている手を止めて顔を上げると、先生は頬杖をついてどこか複雑そうな表情をしていた。
    「だって、バレちゃったら先生辞めちゃうでしょ」
    「そりゃあな」
    「付き合えないのは、ちょっとだけ不満ですけど、せ、先生も私の事が好きって言ってくれるだけでも嬉しいし、それに…」
    頬が熱い。それに気づいてる先生はニタニタと意地悪に笑っている。
    「私、先生の生徒として卒業したいんです」
    先生の目が丸くなった。
    ぐいと腕をひかれて私は前のめりになる。すると、先生は私の唇に音もなくかすめるようなキスをして離れた。
    先生…!と責めるように睨んだが、
    「可愛いこと言うからだろ」
    と頬を赤らめながら目をそらす先生に、私は何も言い返せなかった。

    きゅん

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  8. 「大丈夫だから顔上げて、ね」

    頭を深々と垂れて土下座をする私の頭上から、気を遣って優しい言葉をかけてくれる彼に、ますます泣きたくなった。

    「…ごめんなさい…まさか、甘い物が苦手なんて、好きな人の嫌いな食べ物も知らないなんて…彼女失格です…死んできます…」
    「こっちこそごめん。せっかく作ってくれたのにわがまま言って。でも嬉しいよ、ありがとね」
    にこっと仏のような微笑みに、私の胸がキュンと高鳴る。好き…!と惚れ直すと同時に、やはり後悔は募るばかりだ。

    「じゃあ、何かして欲しいことありませんか?」
    「して欲しいこと…。何でもいいの?」
    「はい!何でもします!」
    いつもの優しげな口元とは裏腹に、瞳の奥がスッと黒くなったのを見て違和感を感じた。
    あれ?と戸惑っている間に、彼の手が私の首筋に指先を触れさせたまま、するっと鎖骨まで指で撫でた。
    「今年のバレンタインは、君が欲しいな。もらっていい?」

    きゅん

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  9. これはきっと、私に告白する勇気を神様がくれたのだと思う。

    「今日なんか騒がしいな」
    「そ、そうだね…」

    けれど、こんな早く意中の相手と2人きりになれるチャンスが本当に来るとは思わなかった。
    「今日は来ないかと思ってた」
    「?なんでだよ。いつもここで休憩してるだろ」
    …だって、誰かしらから呼び出されてると思ってたんだもん。
    無口だが優しくて気が遣えて、何より容姿も整われていらっしゃるこの男は密かにモテていることを私は知っている。

    「今日ってバレンタインだよな」
    「へ!?あっ、そうだね!」
    「好きな人にチョコあげるイベントだろ」
    「そ、そうだね」
    「オレにチョコくれないのか」

    彼はいつものポーカーフェイスを崩し、頬を赤らめている。

    「…私の、欲しいの?女の子が、好きな人にあげるチョコだよ」
    「…お前のじゃないと、欲しくない」

    たぶん、告白するなら、今だ。

    きゅん

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  10. 「……先輩、もしかしてこれ」
    「バレンタインだよ」
    嘘でしょ、と苦虫を噛み潰したような顔をする彼に、私は首を傾げる。
    「何か変?チョコでしょ?」
    「チョコですけど!これコンビニで200円くらいのやつでしょ!」
    僕ハートの手作りを期待してたのにー!と喚く彼に、私はごめんと謝る。
    「…ほんとに思ってますか?」
    「うん。こんど手作りのお菓子持ってくるから」
    「それも楽しみですけど、お願い聞いてくれたら許してあげます」
    彼はチョコをつまむとぷにっと私の唇に触れさせて、「口移ししてください」と言った。
    私は自分の顔が熱くなるのを感じつつ、慌てて首を振る。
    「や、やだよ、恥ずかしい」
    「お願いします!1回だけ!」
    勢いに負けてチョコが口内に入ると、溶ける前に彼の唇が割って入った。
    とろける感覚に、ぽやんと意識が震える。
    「…ごちそうさまでした、先輩」
    可愛らしく強引な彼に、私はたぶん適わない。

    きゅん

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  11. 「チョコは?」
    彼の自由奔放さに、今回ばかりは無視できなかった。真剣に部活をしていた空気が一瞬で壊れたのを感じて、私は赤くなる顔を隠す余裕もなく必死に小声で反論した。
    「今部活中なんだけど!」
    「俺も今から部活だけど」
    「じゃあ早く行きなさいよ!」
    「だって先帰るだろ、お前。だから貰いに来たんだよ」
    ほら、と手を出す彼は普段の会話をするように淡々としている。なぜ公衆の面前でチョコをあげなければいけないのか。それに、
    「ほ、ほかの女の子からいっぱいもらってたでしょ。私のいらないじゃん」
    そう呟いた私に、彼はふっと笑って横を向いた。
    「なんか、ヤキモチ焼いてるみたいだな」
    「なっ…!いいから早く部活行きなさいよ!」
    「だから早くチョコくれってば」
    「何でそんなに欲しがるのよ!」

    「そんなの、好きな人のは欲しいに決まってるだろ」

    きゅん

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  12. 「…先生、これ全部チョコ?」
    デスクの上にどっさり盛られたカラフルな箱の数に、私は目を剥いた。
    本人は「まあねー」と椅子に座ってファイルを手に書き込んでいる。仕事中だからおとなしくしておこう、と暇つぶしに近場のチョコを手に取った。コンビニで買ったような簡単なものもあれば、綺麗にラッピングされたきちんとしたものもある。
    複雑な気持ちになり、私は手に持っていたものをそっと背後に隠した。
    「あーっそういえば課題やるの忘れてた!私帰りますね!」
    わざとらしく大声を出して扉に向かう私に、「待て」と声がかかる。
    「その手に持ってるのを置いたら戻って良いよ」
    「な、なんで分かって…」
    パタン、とファイルを閉じる音と同時にギッと椅子のきしむ音がして、パッと振り返るとすぐそばに来ていた先生が私の顔をのぞき込むように身をかがめた。

    「何のためにこんな時間まで仕事してたと思ってるの」

    きゅん

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  13. 「キスしたい」
    「……却下」
    なぜだ、とマジな顔で首を傾げる彼の鈍さは天下一だ。私はハアと顔を覆って溜息をこぼした。
    「見てここ駅。夕方の、1番、人が多い時間でしょ。一応聞くけどどこでしようとしてるの」
    「ここだよ」
    「却下!」
    「なぜだ?恋人ならキスするもんだろ。離れ難い思うものだろ?」
    「それは時と場所が大前提の話!」
    堅物の頭に言っても納得してもらえない。どうしたものか、と考えを巡らせていると、彼は「なら質問変える」と口を開いた。
    「俺とキスするの嫌か?」
    「なっ…!」
    ずいと顔を寄せられる。近すぎて焦点を合わせようと、なぜか視線は彼の目から逃れられない。
    「嫌ならしない。今後もそういうことは控えるようにする」
    「何言って…」
    彼の目が悪戯に光る。
    「嫌か?」
    「…いや、じゃ、ない…」
    額に柔らかくキスが落とされて、「そっちか…」と思わずの呟きを聞き逃さなかった彼に結局唇を塞がれた。

    きゅん

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  14. 先生、と駆け寄るとどうした?と優しく問いかけてくれる。大した質問も相談もないくせに、私は何かと先生に聞きに行く。2人きりで話す理由が欲しくて。
    「こんな時間まで居残りか?」
    「や、その、先生のこと待ってました。先生、人気者だから。普段なかなか聞きにいけなくて」
    「そんなことないよ。いつでも話聞くのに」
    でもそっか、と先生は照れくさそうに笑って頬をかいた。
    「悪いことしちゃったね。本当ならもう家に帰れてたはずなのに」
    「い、いいんです。…おかげで、先生のことひとりじめできたし」
    少し、踏み込みすぎただろうか。
    ちらりと視線だけ向けると、先生は驚いたように目を丸くして頬を赤く染めていた。きちんと理解した上で受け取ってくれたのだと確認できて、私は唇を噛む。
    「じゃあ、僕も君のことひとりじめしてるね」
    先生の手が私の手に触れる。
    きゅっと掴まれた先生の手は、私と同じくらい熱かった。

    きゅん

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  15. 「せんぱーい!」
    「げっ」
    体育館に鳴り響く聞き慣れすぎた声に振り返りながらも顔をしかめる。そこには予想通りの人物が、綺麗な顔でこちらに手を振っていた。ぎっとにらむ体育教師にすみませんと軽く頭を下げつつそちらへ駆け寄りーーおもいっきり頭をひっぱたいた。
    「いたい!何するんですか!」
    「授業中だバカ!不良に構ってる暇ないんだよ!」
    「失礼な!今は休憩中ですよ、ちゃんと真面目に授業してますから」
    ぶう、と頬を膨らませる彼の愛らしさに胸が鳴ったがなんとか振り切る。外見が好きだから許されるわけじゃない。決して。
    「外から先輩がいるの見えて我慢できなかったんですもん。会いたくて」
    自分と同じくらいの背丈の男が、もんって。
    「…何だそれ」
    「俺の愛です!」
    断じて、かわいいわけでは、ないからな!

    きゅん

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  16. 「せーんせ」
    ギシッと肩を強張らせて振り向くと、男子生徒が笑みを浮かべて立っていた。
    何となく嫌な含みを感じ、持っていた名簿帳で口元を隠す。
    「何か用事ですか」
    「警戒してるの?かーわい。猫みたい」
    彼は以前から私をからかって遊んでくる。おかげで一部の女生徒から嫌がらせを受けていることは知らないのだろう。10代の嫌がらせなんぞ私の逆鱗に触れることはないが面倒臭い。彼の顔面の良さを全面的に出してかわいこぶる所も面白くない。
    「先生がオレと付き合ってくれんならもうからかうのやめるけど」
    もう我慢ならない。人目がないのを良いことに、私は彼のネクタイをぐいと引いて顔を寄せた。不意打ちの近さに目を丸くする彼をキッと睨む。
    「ガキに興味ないの。もっと周りが見えるような大人になって出直すことね」
    吐き捨てた言葉と同時に踵を返す。
    「…ぜってー落とす」
    背中を向けた私の耳に、彼の呟きは届かなかった。

    きゅん

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  17. 「何で電話出ねーの?」
    ひゅっと身を縮める。風が冷たかったせいだ。決して彼の責めるような言葉が原因ではない。
    「そ、それは、忙しいと思って」
    「時間があるからかけてるんだけど」
    下手な言い訳は火に油だ。だけど本音を言えば嫌われてしまう。
    「…急に避けられると傷つくんだけど。オレのこと嫌いになった?」」
    「ご、ごめ…ちがうの、ごめん」
    目を伏せて悲しい顔をする恋人に、きゅうと胸が締め付けられる。
    「声聞いたら、絶対会いたいって言ってしまう気がしたの。負担になるようなこと言っちゃうような気がして、それで…」
    いつの間にか彼の顔が鼻先まで来ていて息をのむ。ふて腐れていた彼の顔に、意地悪な笑みが浮かんだ。
    「やっと言った。遅いよ」
    「え…?」
    「会いたいと思ってるのはそっちだけじゃないってこと」
    ちゅ、と頬にキスを落とされて、目を丸くした私に彼は目を細めて笑った。
    「電話出て。会いに行くから」

    きゅん

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  18. 電話の通知を切った。
    LIMEの通知を切った。
    メッセージの通知を切った。

    そしたら本人がやって来た。
    「な、何してるんですか!?」
    駅前の広場に、彼はいた。サングラスはしているが、隠しきれない色気に周囲の女性陣が様子を窺っている。
    「会いに来た。連絡くれないから」
    「だからってこんな所に…自覚あるんですか、あなた芸能人ですよ!こんな人目が多い所…」
    とにかく離れようと彼の手首を掴んで足早に広場を出た。
    「謝らせてもくれない?」
    気にしないようにしていた事を、ド直球に抉られた。数日前に出たスクープ。彼と人気モデルの熱愛報道。
    「…いいんです。だって芸能界って綺麗な人と可愛い人がたくさんいるし、私みたいな芋女が彼女なんて何かの間違いだったんです…ぐえっ」
    がばりと後ろから抱きしめられて言葉が止まる。
    「…俺が好きなのは君だけだよ。それに芋も好きだ」
    「芋は…関係ないです…」

    きゅん

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  19. 「おーい。もう15分経つけど」
    「ま、まだダメです」
    本で顔を隠す私を、頬杖ついて面白くなさそうに見る彼。直視できるはずない。だってファンだもの。
    「あの、どうしてここに?忙しいんじゃないの…ですか」
    「まぁな、この後仕事あるけど。つか敬語やめろ。前みたいに普通に話して」
    やめろと言われても…とおずおず本をズラして目の前の人物を覗く。ぱちりと視線が合ってしまってビクリと肩が跳ねた。
    「なあ。何で逃げんの?ファンなんだろ、俺の」
    「だ、だからこそですよっ」
    怪訝そうな顔をする彼に、震える口角をどうにか動かして言い放つ。
    「私だけひとりじめするなんて幸せすぎて、贅沢だから」
    「…ひとりじめか」
    何やら納得したように口元に指をあて、ひとつ頷く彼の仕草すら絵になる。
    見蕩れていると、彼はするりと手を伸ばして私の手を掴み指を絡ませた。
    「じゃあ、俺にもお前の時間ちょうだい」
    私の推しが殺しにキテる。

    きゅん

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  20. 女子の黄色い声が扉付近に集っている。
    何事だと眉をひそめていると「芸能人サマが登校してたみたいよ」と耳打ちされて、納得するのと同時にドキッと胸が高鳴った。

    来てるんだ。

    つい最近まで一緒に登校していた幼なじみが芸能界に入って以降、まともに顔を合わせていない。
    ふと、用具室の扉の隙間から手が覗いた。静かに近づいて中を覗くと、ぐいと手首を引かれて体ごと引き込まれた。

    「しー。久しぶり」
    人差し指越しの綺麗な顔の幼なじみのどアップに体が硬直する。
    「空き時間なんだ。顔が見れてよかった」
    筋張った、私よりも大きな手。
    「半そで半パンって寒くないの?」
    いつの間にか合わなくなった視線。
    「?……」

    でもくせっ毛だけは変わってないな、と口を緩ませると、ふにっと唇に柔らかいものが当たる。
    「また、会いに来るね」
    赤面した彼の火照りに当てられて、自分の顔が熱くなるのが分かった。

    きゅん

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  21. 思春期の男女が二人きりでいるだけで、例えばそれがただの幼なじみだったとしても、ウワサ話のネタにされるのがオチだ。

    だから極力人目のつく所では会わないようにしていた。ーーのに。

    彼はなぜか私の手を掴んだまま離さない。
    あろうことか恋人繋ぎのように指を絡ませてきた。
    「…何してるの」
    「んー」
    「んー、じゃなくて!離して、誰かに見られたら…」
    「見られたら困る?」

    いつもの優しい顔じゃない。
    真剣で冷静で熱のこもった視線に、私は思わず頬を赤らめた。困るのは私じゃない。
    「俺は困らないよ。むしろ噂になればいいと思ってる。牽制できるし」
    な、と同意を求めてくる。何に対しての牽制よ、と問いたくなったが、彼は返事を求めるように繋いだ手を揺らした。
    「…私、も、困らない」
    消えそうな声で呟いた私に、彼はハハッといつものように笑った。

    「俺、お前のそういうとこ好きだよ」
    「は!?」

    きゅん

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