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おい!と背後から怒声がかかり、驚いて見ると、想像通りの顔をした彼がこちらに向かってきていた。
「何で先帰るんだよ!」
「えっ一緒に帰る約束してたっけ?」
「してねーよ!してないけど、分かるだろ!」
ピンと来ない私に悔しげな顔をした彼は、顔を赤くして言った。
「……今日クリスマスだろ」
「クリスマスだと一緒に帰るものなの?」
全くピンと来ない私に、彼はとうとう呆れた通り越して可哀想なものを見るような目になった。
「俺たち付き合ってるよな?」
「な、なに急に」
改めて言われると照れる。何でここでは照れるんだよ!と顔をしかめられ、気がつくと手を握られていた。
「今日は付き合ってるやつらが一緒にいる日なの」
「え、そうなの?」
「そうなの」
触れる手が熱い。
彼の頬も赤く染まっていて、その熱が自分にも移ったように火照るのを感じた。
「でも私今日は家族でパーティするから」
「は!?」
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クリスマスなんてただの平日。
「綺麗だなぁツリー。やっぱいいよなぁ、クリスマスって」
隣でニコニコ中庭のツリーを見上げているいい歳した先生を、可愛いなんて、思ってない。
「…そうですか?楽しいのは子どもだけだと思ってましたけど」
「もうお前のところにはサンタさん来ないのか?」
「来ませんよ。16になって親に「サンタさん引退宣言」されました」
あはは、と吹き出した先生の笑顔が眩しいなんて、思ってない。
「じゃあ、今日は特別に俺がサンタになってやる」
そう言って手渡されたのは銀紙に包まれたチョコレート。
「…生徒に食べ物与えていいんですか」
「俺は今サンタだし。先生じゃないからセーフ」
「あはは、なんですかそれ」
それに、と前置きした先生は背中を屈め目線を合わせて言った。
「一緒にクリスマスツリー見てくれたお礼。ありがとう」
「!」
平日で良かった。
じゃなかったら、先生に会えないもん。
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「…居残り練習はほどほどにー」
「!びっくりした…部活帰り?」
持っていたボールを落としかけた。扉の入口に立っていた彼に驚く。
「何か用?」
「自分の彼女と帰りたくて待ってちゃわりーかよ」
「えっ」
悪くないけど、と口ごもる私につられて彼の頬が赤くなる。照れるなら言わなければいいのに。
すぐに片付けようとした瞬間、ドォンと全身に響くような音がなった。
「花火?」
「今日花火大会だったっぽいな」
隣に並んで空を見上げる。
夜空に彩り良い光が散らばる様子にしばらく見惚れていた。だから不意をつかれた。
突然目の前に彼の顔があらわれて、ふにと素早く唇をかすめ取られる。キスされた、と認識する時には既に彼の視線は花火に向けられていて。
「…なんだよ。花火見ろよ」
「見れるわけないでしょ…何今の」
彼はふいと赤い顔を背けると、
「自分の彼女にキスしちゃだめなのかよ」
と開き直り宣言をかました。
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「せっかくの夏休みに学校に来る学生がこの世にいるなんて信じられないよ先生は」
「褒めるところですよねそこ」
とっくに下校時間は過ぎていたが、無理やり取り付けた『先生から頼まれた仕事』を理由に残っていても叱られない。
「受験生だし、勉強したかったから丁度いいです」
「でも第一希望の学校難しくない成績だろ?根詰めなくてもいいんだよ」
苦笑した先生に私は曖昧に笑う。
もしかしたら、先生と花火が見られるかもしれない。
そんな浅い期待を抱いていたからバチが当たったのかもしれない。予定時刻になっても花火の音は聴こえなかった。
「ほら、もう暗いから早く帰れよ」
「ま、待って!」
一緒に居たい気持ちがぶわりと溢れて思わず引きとめる。
もう少しだけ、もう少しだけ。
チャラ、と頭上で金属の音がした。
「屋上の鍵、たまたま持ってたんだよなぁ」
「え…」
「せっかくだし花火見て帰ろうか」
「!はいっ」
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ーー××くんがやるなら、私もピアノしたい!
扉を開けると、予想していた人物が1人ピアノ椅子に腰掛けているのが見えた。
こちらに気づいた彼女は気まずそうに視線を逸らしたので、期待通り「もう下校時間だよ」と少し低い声で言う。
「ごめんなさい。何か思い出すかと思って…」
「…そっか」
こくりと頷く彼女。
「私、小さい頃からピアノやってるんです」
知ってるよ。
「三日坊主で終わっちゃうんですけど、これだけは10年以上続いてて」
それも知ってる。
「…あれ?ピアノ始めたきっかけ、なんだっけ…」
沈んだ気持ちを隠しつつ彼女の横に立って鍵盤に指を置く。ポロン、と和音を奏でると、彼女は目を丸くしてこちらを見上げた。
「先生、ピアノ弾けるんですか?」
「習ってたからね」
すごい、と言って笑う彼女は目の前にいるのに触れられない程遠く感じる。
早く思い出して。
じゃないと僕は、君に触れられない。
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「傘忘れたなら彼氏に入れてもらえばいーじゃん」
というマネージャー仲間の余計な一言によって、私は後輩の傘に入れてもらうことになった。
「…ごめん。付き合ってないって何回も言ったんだけど…」
「別に大丈夫っす。…むしろ勘違いしてもらった方が嬉しいんで」
…キュン。
「それに、俺から言おうと思ってたんで。先輩、体育館来る時に傘持ってなかったから」
「えっ、そうなの?」
「俺としてはラッキーです」
…キュンキュン。
「…ねえ、わざとやってる?」
「は?」
ザアアと激しく地面を叩く雨音。
後輩はバサッと傘を広げてハイ、と私を中へ促す。
「…お邪魔します」
顔が濡れない程度に中に入ると、反対側の肩をぐいと引き寄せられて後輩の胸元に顔が当たる。
「濡れるからもっと入ってください」
ぱっと視線を上げると彼は小さく口角を上げていて。
「…っわざとやってるでしょ!」
「なんのことですか?」
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暴力は嫌い。
相手を傷つけるのが平気な精神性のヤツなんかロクなものじゃない。それに、
「…何で毎日ケガが増えてるの」
口の端が血で滲んで赤くなっている。
指摘すると、彼はヘラッと笑った。
「大丈夫、勝ったから」
「いや答えになってないし」
「心配してくれてんの?やさしいね」
「…」
この男は私を好きだと言った。
けれどこの男は私の嫌いな部類の人間だ。
「自分を大事にできないヤツは嫌いなだけ」
そう言い放つと、彼は目を丸くしたまま惚けたようにぽつりと呟いた。
「…じゃあちゅーして」
「…は!?聞いてた?私あんたみたいな人嫌いだってーー」
「ちゅーしてくれたら喧嘩やめる。もう日課みたいなもんだったけど、好きな子の嫌なことはしたくないし」
顔が熱くなる。
ふざけるなと怒鳴りたかったのに、彼の稀に見る真剣な表情に、私の憤りは空気の抜けた風船のように萎んでしまった。
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今日は酷くついていないみたいだ。
わざとではない。眠気が取れず思わずふらついた体が見知らぬ人にぶつかってしまった。…見た目がイカつい男性たちに。
「待てやクソ女ァ!」
「ごめんなさいごめんなさいわざとじゃないんですー!!」
正門が見えると、そこには制服チェックをしている先生の姿があった。先生は私と背後にいる男たちを認識すると顔をしかめてハァとため息をつく。
「せ、先生!警察を…!」
「いいから早く中入って」
ぐいと背中を押されて門の内側へ押し込まれる。
「先生あぶなッ…、い…よ……?」
男たちは先生を視界に入れた瞬間ギョッと目を丸くしてすぐさま踵を返したーーというより、逃げた…?
「…先生、知り合いですか?」
「知らない。ほら早く教室入ってね」
ひらひらと手を振り促す先生の笑顔はどこか張りついていて。
「…帰ったら卒アル見せてもらってもいい?」
「絶対ダメ」
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「「あ」」
最悪な場面で遭遇した。
物音がして路地裏に視線を向けた先にバッチリ目が合ってしまった。
「おーい待ってよ〜」
「着いてくんな不良!」
「おーこわ。不良より怖い」
いつの間にか並行して走っていて私はピタッと足を止める。
きちんと規則に従って制服を着た私と、よれたシャツに緩いスウェットサンダルの男。
「何でちゃんと学校行かないの?」
「行ってるって。最低限の単位は取ってるし〜」
「おばさんが心配してたよ。一緒に手繋いで登下校してくれって」
「げっ。…めんどくせー」
テキトーに見えて容量が良くて、実は頭の良い幼なじみが苦手だ。真面目に生活しているのが馬鹿らしくて…
不意にぎゅ、と手を掴まれた。
「何!?」
「手繋いで登下校してくれるんだろ?」
「離して!仲良いと思われたら他のヤンキーに絡まれる!」
「大丈夫、俺がいるし」
…絶対好きなんかじゃない。
こんなテキトーなやつ。
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開いた口が塞がらないとはこのことで、口からポロリとたまご焼きが落ちた。
「ん?」
童顔の彼はこちらに気づくと目を丸くさせつつも、胸ぐらを掴んでいる相手をボゴッと殴り倒す。
初めて人が殴られる姿を見て思わずビクリと肩を震わせる。
「ごめん、ご飯まずくなっちゃったね」
「い、いえ、別に…」
人の良さそうな笑顔に幻覚だったのかな、と疑ったが背後で倒れてる先輩らしき男の姿にやはり現実だったと認識する。
「おねーさん先輩だよね。ぼっち飯?」
「そうですけど…」
「ふーん」
あれ、私絡まれてる?
「…先輩、俺の事怖くないの?」
「…怖いですけど。人殴るとか、良くないし…その手も痛そうだし」
え、と今気づいたかのように彼は赤くなった手の甲を見た後、ブッと吹き出した。
「先輩やさしいね。ね、明日もここでご飯食べてよ。俺もそうするからさ」
「…はい?」
「仲良くしよーよ。セーンパイ♡」
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本が好き。
静かに、心穏やかに過ごせるから。
図書室は私にとって癒しの場だったーーのに。
「…あの人、さっきからずっとこっち見てない?」
図書委員の友人にひそ、と耳打ちされる。
私は口早に「気のせいだよ」と答え手元に視線を下ろした。
嘘だ。気のせいじゃない。
私も気づいていた。ここ最近、窓際一角を陣取り、本を読むそぶりもなくただこちらを睨んでいる。恐ろしく喧嘩が強い(らしい)と噂ではきいたことがあるが、実際話したことないし、そもそも嫌われる理由がー……
「おい」
「はひっ!?」
噂の当人がいつの間にか目の前にズンと立っていた。ぶわりと汗が額に浮かぶ。リンチされる!?殴られる!?
と、バサリとテーブルに置かれたのは黄色の花束で。え?と首を傾げると、彼はこちらを睨みながら真っ赤な顔で言った。
「す、好きだ。俺と友達になってくれ」
…想定外のピュアなお誘いに、私は小さく頷いた。
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わたしの好きな人は絶対にわたしを好きにならない。わたしに魅力がないから。
友だちが次々に恋人を作ってわたしから離れていくのをみると辛くて、授業の時間以外は自然と1人で行動することが多くなった。
逃げ場はいつも図書室。
「…誰か、わたしのこと好きになって」
ぽつりと呟いた声が誰もいない部屋に落ちて、じわりと涙が滲む。孤独と疎外感が一気にのしかかってくる。
涙をぬぐおうとした瞬間、擦る直前に手首を掴まれた。驚いて顔を上げると、クラスメイトの彼がじっと私の顔を見下ろしていた。
「いるよ」
「え?」
かあ、と頬を赤らめた彼はふいと視線を落として低く言った。
「あんたのこと好きな人、俺だから。…泣くなよ」
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黙々と食器を洗う水の音が響く中、彼はずっと頬杖をついたまま「機嫌治った?」と聞いてきて。
私は蛇口を止めながら「早く帰りなよ」と冷たく言い放つ。
ホワイトデーのお返しをもらった。
可愛い小箱のそれはお菓子で「ありがとう」と伝えると彼はひとつ頷いた。
そして、全く同じ小箱を他の女子たちに配ったのだ。
嬉しくて舞い上がった私の気持ちは急降下に冷めて、1日無視を決め込んでいると部活が終わる頃に彼はやってきてひたすら謝られていた。
「だって義理でも貰ったもんは返さなきゃだろ?」
「そうですかーわたしは義理と同列なんですねー」
「拗ねんなよ」
「拗ねてない。悲しいの!」
「…オレさ、寝る前絶対お前のこと考えるんだよね」
「はい?」
「今起きてんのかなとか、風呂入ったかなとか。明日はバイトないし何しようとか、色々」
「毎日お前のこと考えてる。それじゃダメ?」
「…っそんなんで絆されないから!」
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キュ、とシューズの擦れる音がした。
顔を上げるとそこには制服に着替えた彼が居て、私は持っていたモップを手に首を傾げる。
「どうしたの?」
「…今日、14日っす」
無口で口下手な後輩が喋った。
それだけで驚いている私の頭では、それを聞いて察することができず。
「えっと、何かあったっけ?」
彼の顔が渋くなる。
私の返答は間違えだったらしい。
彼はムスリとしたまま手提げの小さな紙袋を差し出した。そこでやっとホワイトデーの存在を思い出し、まさかこんなお返しがくるとは…と再び驚いた。
「え、もらっていいの?」
「チョコ美味かったんで」
「ありがとう。…でもこんなちゃんとしたもの返されちゃうと、まるで本命のやりとりみたいになっちゃうよ」
「オレはそのつもりですけど」
「………は?」
視線を逸らしたまま頭を掻いてそう呟いた彼の耳は真っ赤に染まっていて、モップの音がカランと体育館に響いた。
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ガラリとドアを開けると、そこに居るはずない人物がいた。
「あ、おつかれさま」
「先生!?」
隣町の学校に転勤した先生ーーもとい私の恋人が、にこやかに微笑んで手を振っている。
「ちょっと置き忘れた資料があって、取りに来てたんだ。もしかしたら会えると思って」
「...待っててくれたんですか?」
そう聞くと、彼は少し頬を染めてうんと頷いた。
か、かわいい...!
そういえば、と思い出してカバンを漁る。
「この後チョコ渡しに行こうと思ってたんです。たまたま会えて良かった」
どうぞ、と綺麗に包まれた箱を差し出すと、ありがとうと受け取ってもらえた。
「...本気で僕がたまたま資料取りに来たと思ってる?」
「え?あの...」
ガタンッと横にあった椅子にぶつかる。
いつの間にかメガネのフレームが乗った先生の鼻先が、私の鼻先に触れそうなくらい近づいていた。
「チョコも嬉しいけど、君に触れたい」
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ーー先生は、好きな人いるんですか。彼女いますか。年下は恋愛対象に入りますか。
「ーーぃ、おい。話聞いてるか?」
ハッと我に返ると鼻先に赤い箱が当てられた。
今朝私が先生の目の前で落としてしまった『学校に必要でない物』。
「見逃してやりてーけど、他の生徒に示しつかねーからなぁ。一応預かっておくから、休み時間に取りに来い」
「で、放課後まで取りに来ないってどういう事だ」
「す、すみません...」
そのまま持って帰ってくれないかなぁと淡い期待をした。それは先生へのチョコだから。
「...早いうちに返そうと思ってたんだよ。悪かったな、相手もう帰っちまったか?」
「...目の前にいます」
「え...、...。」
声が震える。
体が熱い。箱を両手で差し出しながら、赤い顔を上げて先生を見つめた。
「...先生、もらってください」
かわいそうな私のチョコレート。
せめて好きな人に食べてもらいたい。
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「はいっコレあげる!」
「...何これ」
満面の笑顔で手渡された高級そうな箱。
「チョコレートだよ」
「...私って彼氏だったの?」
「彼氏は俺でしょ!じゃなくて、普通に俺があげたいなーと思って用意しただけ」
「...私があげたやつさぁ...」
「あ、チロルチョコ?嬉しいよ。俺ミルク味好き」
申し訳なさすぎる。
これは挽回しないといけない。彼女としての立場とプライドのために。だってまさか、こんな本格的なものを用意してくるとは...。
「...ごめんね。後日ちゃんとしたの渡すから」
「いいよそんなの」
「私の気がすまないの!」
すると彼は一瞬目を輝かせ、うーん、とわざとらしく唸る。...何か嫌な予感。
「じゃあ来週俺の家泊まりに来ない?」
「行かない」
「なんで!付き合って1年だよ?イチャイチャしたいよー」
「恥ずかしいからいやだ」
「お返ししてくれるんでしょ?」
俺に君の時間ちょうだい。
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「お疲れさま、はいコレあげる」
ガサ、とシンプルな小袋を差し出すと、背の高い後輩は目を丸くしてそれを眺めていた。
恥ずかしくなってそれを押し付けて逃げるように背中を向けると「待ってください」と淡々と引き止められる。
だって向こうの方がリーチ長いし。
「…なんですか」
「これチョコレートですか?部活前に配ってたやつ、俺もらいましたけど」
「そ、それは部員全員用の義理だし」
「じゃあこれは?」
い、意地悪だ。
明らかに本命だといってるようなものなのに、わざわざ聞いてくるあたり彼らしい。
「…好きな人用の、やつ…」
急にあたりがシンとなった気がして、そっと顔をあげると、いつもは堅物な後輩の顔が真っ赤に染まっていて。
「お、俺も好きです」
私は嬉しくなって思わず目の前の体に飛びついた。
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「…教師が隠れて喫煙するのどうかと思います」
「お、来たね優等生ちゃん」
私が隣に並ぶと、彼は吸殻を落としてつま先で潰し、紙ポケットのようなものに入れた。
…私に気をつかってる。
「…ん?何か顔赤くない?」
「赤くないです。これ」
ガサ、とパンパンに膨らんだ紙袋を先生に差し出す。カラフルな箱がはみ出るそれに、彼は目を丸くした。
「…これ全部君が作ってくれたの?」
「違います!他の!女生徒からですっ!」
私の「あみだくじで負けたから私が代表で届けに来た」と焦る様子を一瞥して、「…ふぅん」と彼は落ち着いた一言。
「…じゃ、じゃあ私はこれで!」
「待って」
ピク、と肩が揺れる。
「ほんとに君のは入ってないの?」
「…ないです!」
ピシャン、と閉まる激しい音に「入れてますって言ってるようなもんだよなぁ」と先生が嬉しそうに笑っている事なんか、「バレてないよね!?」とプチパニックな私には知る由もない。
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「…なぁ、そんな毎日頑張って勉強する意味あんの?」
「あたりまえでしょ!した分だけ結果が出るんだから。大して勉強してなくてもいい点取れるあんたとは違うんですー」
「オレ天才だからね」
「腹立つ」
私は人より倍頑張らないと結果が出ない。だから今頑張らないといけないんだ。…こいつと同じ大学に行く為にも。
「あ、そういえばオレ大学行かねーから」
ガタンッと倒れかけるイスの音が響く。
「は、は!?うそ、なんで!?」
「働く。勉強そんな好きじゃねーし」
「同じ大学行けると思ってたのに…」
ハッと慌てて口を抑えるが無意味。諦めて小さい声で聞いた。
「…会える時間なくなっちゃうね」
「なくならねーよ。一生」
え、と顔を上げると、頬杖をついた彼はニッと笑って言った。
「結婚するから。オレたち」
「…は!?」
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きゅんができる!
本当に解除しますか?