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  1. 26件ヒットしました

  2. 「んだよ、水越」


    わたしの苗字を呼んだのは、同じクラスの星谷くん。
    振り向かなくてもわかる。

    好きな人の声が分からない訳がない。


    「はい、これ……星谷くんに」


    わたしは、両手に包み込まれている袋を渡した。



    昨日、頑張って作った、たった一つのチョコ。


    「他にもチョコ作ったりしたの?」


    「え……? ううん、これだけだけど……」


    「そっか、安心した」


    「え?」


    驚いているわたしをよそに、そのチョコを受け取った星谷くん。



    「ってことだから、今日から水越は俺の女な」



    わたしの頭の中で、その言葉は何度もリフレインした。

    きゅん

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  3. 今日はバレンタインデー。
    私の可愛い彼氏、ハルくんにあげるチョコ。

    ハルくんは子犬みたいに可愛い子で、何かしらのことにすぐ凹んだり喜んだりする。

    ハルくんの教室には……あっ、ハルくんいた!
    もうハルくんしかいない。

    「ハルくん!」

    私が呼ぶと、彼も「あっ、ゆな!」と私の名前を呼んだ。

    「バレンタインチョコだよ!」

    リボンで結ばれた紙袋を渡す私。

    「ありがとー! ってか、あれだ! 俺も渡さないと!」

    と言って、バッグの中をゴソゴソ探るハルくん。
    首を傾げてるわたしをよそに、ハルくんも袋を渡した。

    「逆チョコ!」

    透明な袋に入ってるのは、私の大好きなストロベリーチョコレート。

    「ゆなの照れたような嬉しいような顔、これで見られると思って!」

    そう言ってハルくんは、私にチュッとキスをした。

    きゅん

    4

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  4. 「うわぁ綺麗……」

    誰もいない図書館の中。
    私は勉強していた手を止めて、見上げる。

    木には、紅葉が彩られていた。

    「お前なあ、勉強教えてほしいからここ来たんだろ? 集中しろよー」

    「えへへっ、ごめん!」

    窓を開けると、フワッといきなり風が吹いてきて紅葉が入ってくる。

    「紅葉入ってきちゃったじゃんか。もう閉めとけよ。ここを掃除する人が大変になるだろ」

    彼のきつい言葉に、私はふてくされて窓を閉じた。

    「頭についてる」

    彼は、私のところにまでやってきて頭についた紅葉をとった。

    「確かに綺麗だな」

    ふっと笑った彼。

    「だから言ったでしょ!」

    「可愛い顔してそんな口とんがらがせて台無しだなあ」

    「……そっちこそ」

    優しくてかっこいい顔して、頭いいくせにきつい言葉ばっかり言うんだから。

    「じゃあ、これでいいか?」

    彼が私の唇と自分の唇を合わせて、ちゅ、と音を立てた。

    きゅん

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  5. 今日は文化祭。

    さっきまでわたしも文化祭で係としての仕事があったけれど、やっとそれが終わって交代。


    「沙良(さら)ー!」


    わたしの声を呼ぶ、愛しい彼の声が聞こえた。


    「拓哉(たくや)!」


    わたしと付き合ってくれている拓哉は文化祭でももちろん一緒にいろいろな教室へ行く。


    「お前、確かここ行きたいんだっけ?」


    パンフレットで、指さしながら言う。


    「あっ、うん」


    「行くか」


    「うん」


    拓哉、ちゃんと覚えててくれてたんだ……。
    あの時は、何気なく、ほんとに何気なく言っただけなのに。


    「そんな目で見んなよ。お前の行きたい場所優先して、変かよ!」


    「ううん。ありがとね」


    わたしがお礼を言うと、彼の小さな、おう、と言ったのが聞こえた。

    きゅん

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  6. わたし・寧々と哲史とは幼馴染で、小さい頃もバレンタインチョコをあげた記憶がある。
    だから、哲史にあげても友チョコとしか思ってくれないだろう。

    だけど、友チョコと思われるからって「あげない」というのはなんだか後悔しそうなので作ることにした。

    とにかく友チョコと思われないように、かわいくラッピングもした。

    「はい、これ」

    校舎裏。
    わたしは、哲史にバレンタインチョコを渡した。

    「久しぶりに作ってくれたじゃん、ありがとう」

    いつも通り優しい笑顔で、受け取る哲史。
    ……やっぱり、特別なものとは思わないよね。

    「……どしたの」

    わたしの表情に気づいて、哲史は首を傾げた。

    「寧々?」

    「いつものチョコとは違うと思う」

    「それって……」

    わたしの言葉に、哲史の顔はさっと赤くなった。
    そう、友チョコじゃないんだよ。
    あげたのは、幼馴染だからじゃ、ないんだよ。

    きゅん

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  7. もう、今日は熱で早退すること、教室に連絡がまわったところかな。
    なんて保健室のソファに座りながら考えていると、ガラッとドアが開いた。

    「滝川……くんっ!?」

    見ると、滝川くんがバッグを持っている。

    「先生に頼まれて、カバン持ってきたんだよ」

    「え?」

    いやいや、待って?
    おかしいよ?
    今日は、みずほだって学校に来ているはずだし、わたしとみずほが仲良いことも先生は知っているはず。

    それなのに、何故みずほじゃなくて滝川くん!?

    「そんな目で見るなよ……。いつも鈍感なくせに、なんで今日に限って……」

    わたしの表情を見て、ため息をついた彼。

    「先生に頼まれたんじゃなくて、俺が自分で行くって言ったの。


    だって……。
    お前の近くに、1秒でも長くいたいって思ってたから」

    きゅん

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  8. 今、違うクラスの女子がわたしの大好きな人の隣にいる。
    2人とも文化祭の実行委員なので、一生懸命なのはわかってる。

    わたしも一応仕事があるので、学校に残っているけれど、よりによって彼とわたしは一緒じゃない。

    仕事とはいえ、わたしだって隣にいたい。

    「はい、そろそろ帰るぞ」

    実行委員の仕事も終わり、わたしの仕事も終わったので2人で帰れる。
    ……やっと2人になれるけれど、さっきのモヤモヤが消えない。

    「そんな不機嫌そうな顔すんな。ずーっとそんな顔してるよな?」

    「気付いてたの?」

    「気付くから、普通」

    そう言って、わたしの頭をコツンと叩きながら笑う彼。

    「実行委員の仕事、お疲れさま」

    「お前もな。それから……」

    と間を置いてから彼は、

    「俺のこと好きでいてくれて、ありがとう」

    と言う。
    そんな優しい顔しないでよ。
    もっと離れたくなくなるじゃん。

    きゅん

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  9. 「織姫と彦星には……なりたくないよな」

    わたしの横で、唐突に言った彼。

    「どうして?」

    「1年に一度しか会えないんだよ。しかも日本では、天気が晴れないと会えないって言われてるし」

    確かに、両思いの人には1年に一度しか会えないだなんて、わたしには考えられない。

    「そう言われてみると、本当に会えてないよね。七夕に晴れるなんて、そうそうないし」

    梅雨真っ只中の七夕に晴れないと会えないだなんて、自分のことじゃなくても本当に胸が締め付けられる。

    「でも、外国では会えてるって言われるんだよね」

    「そうなんだ」

    外国のことについては、よく知らないな。

    「けどさ……」

    「うん?」

    突然、彼はわたしの後ろへと言った。
    そうして、いきなりわたしの体を包み込む。

    「こういうことは、1年に1回じゃ足りないよね」

    静かにささやいた彼の声を聞いた瞬間、わたしは改めて彼の気持ちに共感した。

    きゅん

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  10. トイレを済ませて、わたしは教室へ戻った。



    「あっ……」



    もう誰もいないと思っていた教室の中には、彼がいる。



    「まだ帰ってなかったんだ」



    わたしが話しかけると、彼は静かに頬を緩めた。



    「待ってたからだよ」



    「えっ……。別に待たなくてもいいのに……」



    わたしが少し笑いながら言うと、いきなり彼に両肩を掴まれた。



    「気づいてよ。俺、お前のこと、1人ぼっちにしたくないんだから」



    「え?」



    わたしの頬をむにむにと触りながら言う彼は、真剣で。



    わたしの心は、ドキドキと落ち着かなかった。

    きゅん

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  11. あー、頭がぼうっとする。

    数学の授業は苦手だ。特に、今授業でやっている図形は苦手中の苦手。

    「この問題は……。美澄さんに解いてもらいます」

    うわ、最悪。
    分かる訳ないよ、先生。

    「美澄」

    隣から声がしたので見ると彼、高杉くんがルーズリーフを渡してきた。

    「これ……!」

    ルーズリーフには、今の問題の解き方が詳しく書かれてある。

    「解き方、忘れたんだろ?いいから、それ見ながら解けよ」

    「ありがとう……」

    わたしがお礼を言うと、ふっと笑った彼。

    何故だかその瞬間、胸がズキュンと音を立てながら跳ねた。

    え、何。今の感情は。
    こんなにドキドキすることなんて、今まで無かった。

    もしかして『恋』ってこういうことをいうのかな。

    きゅん

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  12. 「ごめんなさい……」

    いつものように、わたしは彼に謝った。

    「謝るなって。お前は悪くないんだよ」

    「ありがとう……」

    わたしはベッドの上にいる。
    病気で、3ヶ月前に余命宣告をされた。

    ……余命3ヶ月。

    今月、わたしはこの世のものじゃなくなる。
    いや、今日かもしれない。

    意識が薄れてきた。

    「大丈夫だ、俺は一生お前を愛しているから」

    「……あ……り……が……とう……」

    彼は、わたしの手を握った。
    彼の温もりを感じながら、わたしは目を閉じる。

    「お前は故人じゃない。俺の恋人だ」

    それだけが聞こえた。


    もう一度、ありがとうと言いたかった。

    きゅん

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  13. 「俺さ」

    下校中、彼は突然言い出した。
    彼は、わたしの幼馴染。
    ……そして、わたしの好きな人。

    「彼女、できたんだ。一個下の」

    彼の言葉に、わたしの足はふらついた。
    それに気がついた彼は、目を丸くした。

    「ん?どうかした?」

    「ううん、なんでもない!」

    わたしが言うと、彼は、ふっと頰を緩めた。

    「幼馴染だから丸わかり。なんかあるんでしょ?」

    「ええっとね!思い出しただけ!わたし、今日塾があるんだった!ごめん」

    わたしは彼を置いて、家まで走った。

    その人って誰?

    わたしの方が、ずっと彼と一緒だったのに。

    わたしの恋の終わりは、突然だった。

    きゅん

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  14. 「好きです!」

    あたしは、ずっと前から好意を寄せていた彼に告白した。

    彼は、一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐに眉を下げた。

    「……ごめん。実は、俺、恵と付き合ってるんだ……」

    恵……。あたしの親友。
    メグ、あたしにそんなことを一言も言ってなかった。

    「メグと……?」

    「うん。ごめん、ごめんな」

    「ううん、大丈夫!大丈夫だよ!」

    あたしは、彼に背中を向けて1人で走り去った。

    メグは、可愛くて綺麗で、明るくて優しいから。あたしなんかよりも、男子に人気があるのは、分かっている。


    分かっているのに……。


    やっぱり、涙を流すということだけは、我慢できないよ……!

    きゅん

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  15. 彼は、また本を読んでいる。さすがクール男子。

    わたしは、本を読んでいる彼に声をかけてみた。

    「な、何を読んでるの?」

    「本だけど?」

    読書の邪魔をされたからなのか、彼は少しだけ不機嫌そうだった。

    「いや、何の本を読んでるのかなー、なんて」

    「これ」

    彼は、栞を挟んで本のタイトルをわたしに見せた。

    「へ、へぇ。お、面白そう、だねっ」

    「本心と思えないぞ」

    彼は、嫌そうに目を細めた。

    「そ、そう? 本心、だよ」

    「もし本心なら……」

    彼は、ゆっくりと口の端を上げた。

    「お前に邪魔されるのも、悪くないかもな」

    ちょっと待って。
    そんなに堂々と言われたら、動機が止まらないよ。



    ……嬉しさで。

    きゅん

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  16. 皆が廊下を出て行くことを待って、わたしは廊下で涙を出した。

    家で泣いて、お母さんに心配をかけたくないので、ここで泣けば、誰にも心配されない。

    「樋口さん、どうしたの?」

    しまった。
    わたしの片思いの相手だ。
    見つかってしまったか。

    「なんでもない……」

    わたしは、彼を背中にして、言った。

    「じゃあ、どうして泣いているの?」

    「それは、ゴミが入って……」

    「ねえ、隠さないで。本当にゴミなの?」

    彼が、近づいてくることが分かった。

    「本当はね……。好きなの。でも、桐谷くんが女子が苦手って聞いたから……」

    「樋口さん、僕の『女子が苦手』というのが、どういう意味なのか分かってないんだね」

    振り向くと、彼は少し悲しそうに笑っていた。

    「正しくはね、樋口さん以外の女子が苦手っていうことなんだ……」

    きゅん

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  17. 今日から新学期だ。わたしは、またいつも怖い顔をしている彼と同じクラスになった。

    「何? さっきからこっち向いて」

    誰もいない教室の中で、彼は聞いてきた。

    「いや、また同じクラスだなって」

    「なんか悪い?」

    わたしは激しく首を横に振った。

    「まあ、お前は全然嬉しくないよな。俺は嬉しい」

    今のは聞き間違いか、と疑いたくなるほどの言葉だった。

    「その、どして?」

    「お前さ、俺がお前のこと嫌いだって解釈してたの?」

    もう、何が何だかさっぱり分からない。わたしの知っている彼じゃない。

    彼は少し笑って、

    「自分の評価下げんなよ。長所、いっぱいあるんだから、な」

    と言った。
    わたしは彼の笑顔を長いこと見つめていた。

    きゅん

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  18. 「おはよう」

    登校中に、わたしは同級生の男子と会った。

    「はっ! お、おはよ……」

    「どうしたんだよ? 熱あるんじゃねえか?」

    彼は、わたしの額に手を当てる。顔が赤いのは熱じゃない。あなたのせいだよ。

    「だいじょ! 大丈夫だよ」

    わたしは思わず、彼の手を勢いよく払った。

    「いいか? よく聞け」

    少しぶっきらぼうに彼は言った。怒らせたのだろうか。

    「俺は、よく体調を崩すお前が心配なんだ。だから……」

    確かに、わたしはよく体調を崩す。でも、同級生にそんなことを言われるのは初めてだ。

    「だから?」

    「無理するんじゃないぞ」

    彼は優しく笑い、そしてわたしの髪がくしゃくしゃになるぐらいに撫でた。

    きゅん

    2

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  19. 数学のノートを学校に忘れたので、わたしは取りに行った。

    机の中を見ると、ノートのほかに、何かある。

    「何これ?」

    可愛い箱と手紙が入っている。箱の中を見てみると、クッキーが入っていた。

    『バレンタインのチョコ、ありがとな』

    そのメッセージの下に、『小澤』と書かれてあることに気づき、わたしははっとした。

    わたしはバレンタインの日、小澤にチョコをあげた。彼は、無口なので、チョコを受け取った時も何も言わなかったから、気を悪くしたのだと思ったけれど。

    チョコを渡したことを、覚えていてくれていたんだ。

    そう思うと、顔が熱くなってきた。

    下駄箱の方へ行くと、彼の後ろ姿が見えた。

    「お、小澤!」

    わたしが呼ぶと、小澤が振り返ってきた。

    「机の中のアレ、ありがとう……」

    顔が熱いまま、わたしがお礼を言うと、彼は目を大きく見開いて赤面した。

    きゅん

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  20. わたしは放課後、彼に呼ばれて屋上へ行った。

    「待ってたぞ、真由」

    彼は、わたしに気づいてそう言った。

    「用って何?」

    「目つぶって、じっとしてろ」

    「はい?」

    なんだか訳が分からない。

    「すぐ終わるから目開けないでじっとする。いいな?」

    「……分かった」

    わたしは言われた通り、目を閉じてじっとした。
    細いものが、わたしの首を触った。
    後ろから彼が、わたしの両肩に手を置いてから、

    「もういい」

    と言った。
    わたしは目を開けて首を見る。

    「ネックレス……!」

    わたしの首にかかっているのは、銀色をしたハートのネックレスだった。

    「お前、バレンタインにチョコくれたからお礼」

    驚いているわたしを見て、彼は言った。

    「ありがとう、蓮」

    「喜んでくれて、そして似合ってて良かった」

    小さな声だったけれど、わたしには、はっきり聞こえた。

    きゅん

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  21. わたしは、部活中に転んだので保健室に行った。

    「これくらいの怪我なら、大したことはないけど、一応安静にしておきなさい」

    「はい。ありがとうございます」

    先生に絆創膏を貼ってもらった後、わたしは保健室を出た。

    「あれ、赤根くん。赤根くんも怪我したの?」

    いつのまにか、すぐ近くに後輩の赤根くんがいた。背は高いけれど、活発で可愛い後輩だ。
    赤根くんは、にっこり笑う。

    「待ってましたよ、先輩!」

    赤根くんは、後ろを向いてしゃがんだ。

    「乗ってください」

    「えぇっ?」

    「先輩のためなら、俺、どうなってもいいです。俺は自分より先輩の方が大事ですから」

    彼の顔は真剣そのものだった。

    いつもの子供っぽくて活発なところがない。
    改めて、赤根くんも男の一人なんだな、とわたしは思った。

    きゅん

    5

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