ケータイ小説 野いちご > 野いちご学園

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  2. モテる彼氏を持つと大変だ。
    「また怒ってる」
    「先輩の気持ちがわかりません」
    私の言葉に眉を下げる先輩。
    「なにかしちゃった?」
    「先輩触られてた…」
    触る、って言うか腕絡みついてたし。
    呟くように言った言葉を拾った先輩は一瞬キョトンとしてクスリと笑う。
    「何ですか」
    「ヤキモチ?かわい」
    ゆるゆると私の頭を撫でる先輩。
    「っ私怒ってるんですよ!」
    「んー?知ってるー」
    ニコニコと笑う先輩。
    「妬いてくれるのは嬉しいし、かわいいけど気持ちがわからないって言われるのは心外だなぁ」
    傷ついた、だなんて言う先輩はそんな風に見えない。
    むしろ楽しんでる気がする。
    すると今度は悪戯な笑みを浮かべて私を引き寄せて。
    「…好いとーよ」
    腰に回った腕。
    響く心地の良い声。
    普段は完璧な標準語を話すくせに昔博多に住んでいた先輩はたまにそこの方言が出る。
    それに私が弱いことを先輩は知っていて。
    先輩はずるい。

    きゅん

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  3. 空気は冬になっていて寒くて。
    「先輩っ…もうっン」
    先輩と過ごす昼休みは決まって屋上。
    「っダメです」
    「えー、」
    肩を押して離れようとすると腰に手が回ってグイッと引き寄せられる。
    「もっとって顔してる」
    色気のある顔でクスクスと笑う先輩に恥ずかしくなって下を向く。
    「ダメ。こっち見て」
    頬を両手で包むように持たれて顔を上げられて。
    私の顔を視界に入れた先輩は満足そうに目を細める。
    「その顔、すっごいそそる」
    綺麗な顔の先輩はどんな表情をしても似合う。
    そんなことを考えているとまた先輩は顔を傾けて。
    逆らう術なんて持ち合わせている訳なくて。
    深くなるソレに耐えれなくなってもたれかかる。
    「あー、もう連れて帰りたい」
    「…午後の授業終わったらいいですよ」
    久しぶりのお家デートの約束をして。
    「…薬局寄らないと」
    「口に出さなくていいです」
    呆れて言う私に嬉しそうにする先輩。
    そんな冬の屋上。

    きゅん

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  4. 「彼女できた」
    「そう。よかったね」
    告げられたのは忘れ物を取りに戻った時に会った廊下。
    「妬いてんのかぁ?」
    俺のこと好きだもんなってニヤつきながら冗談ぽく言う彼。
    「自惚れんな、一番彼氏にしたくない」
    鼻で笑って返す私。
    私の返事を予想していたのか彼も笑う。
    「まぁ、お前には色々相談乗ってもらってたし…」
    ありがとな、と私の頭にポンっと手を置く。
    ボッと顔に熱が溜まるのを感じて。それを隠すかのように手を振り払う。
    「髪の毛崩れんじゃん」
    その言葉を聞いた彼はまた笑って。
    「じゃ、俺待たせてるし行くわ」
    嬉しそうな顔で言っちゃって。
    「末永く」
    私は思ってもないことを言っちゃって。
    私の言葉に嬉しそうな顔をした彼は背中を向けて彼女の元へ向かう。
    本当は忘れ物なんてしていない。
    下駄箱にあいつの靴があったから気づいたら校舎に戻っていて。
    「戻るんじゃなかったなぁ」
    呟いた声は静かに消える。

    きゅん

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  5. カーテンで閉め切った保健室。外には外出中の札。
    「…ンぁっ」
    甘い声と混ざるのはエアコンの音。
    私の身体に触れる先生の手は冷たくて。
    冷たいはずなのに私の身体は熱くなる。
    先生の眼に映る厭らしく揺れる私は滑稽だ。
    行為後の特有の倦怠感。着替えながら珈琲を飲む先生を盗み見る。
    「もう夏終わるね」
    いつもの様に、と声が震えないように。
    「そうだな」
    「夏休みどっか行った?」
    「…海、行ったな」
    誰と?だなんて聞かない。
    適当に相槌を打って着替え終わった私は鞄を持つ。
    「なぁ、」
    言われる。どこかでわかっていた。でもね、思い通りなんてさせない。
    「私、先生つまんないから飽きちゃった。バイバイ」
    笑え…てると思う。口から出るのは思ってもないこと。
    驚いた顔をした先生は「ごめん」と呟いて。
    その言葉を背に保健室を出る。
    「日焼け止め塗れよ。ばぁか」
    指に残る白い輪っかの日焼けは指輪よりもタチが悪い。

    きゅん

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  6. 顔は昔から瓜二つだと言われて。
    性格だって似ていて。
    運動だって頭の良さだって変わらない。
    「先輩っ、待たせてすいません」
    「大丈夫だよ」
    目の前に広がるのは自分そっくりな双子の姉と優しく笑う彼氏。
    嫌なものを見てしまった。
    双子だからなんでも一緒。好きな人まで。
    手を繋いで帰って行く2人はどこからどう見てもお似合いのカップルで。
    私と入れ替わっても周りの人に気づかない自信はある。
    けど、
    「きっと先輩は気付くんだろうなぁ」
    乾いた笑いが出て。
    何が違うんだろう。親にだって間違えられることがあるのに。
    何が違う?あぁ、わかった。簡単じゃん。
    「私には告白する度胸がなかったんだ」
    お姉ちゃんを妬むのは御門違いで。
    お姉ちゃんと先輩達とは反対の方に体を向けて歩く。
    「泣かせたら許さないから」
    告白する度胸はなかったけどこれぐらい思ってもいいよね。
    どっちに言った言葉なのだろうか。
    きっと両方。

    きゅん

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  7. 泣かされるのはいつも私。
    傘のない雨の日、打ち付けるのは無数の水。
    後悔するってわかってた。けど、好きで先輩しか見えなかった。
    3回目の浮気。流石の私ももう限界で。
    突然私に打ち付けていた雨が止まる。
    「振られたか」
    傘を持った幼馴染は私を見下ろして。
    「私が振ったのっ」
    お腹にパンチをしたのにビクともしないからムカつく。
    「やめとけっつったろ」
    「あんたに関係ないでしょ」
    涙を雑に拭かれて涙でぼやけていた視界がはっきりとする。
    なんで…、涙を拭くのが先輩じゃないのっ。
    「なんで来たのっ」
    こんなの八つ当たりだ。
    ポンっと叩く私の腕をそっと握られて。
    「お前が泣いた時来なかったことあるか?」
    フッと得意げに笑う幼馴染はどこか大人で。
    確かに浮気されて泣いている時は近くにいてくれたな、なんて思って。
    「選ぶ奴間違え過ぎなんだよ。お前」
    真面目な顔で言われたこの言葉は降り付ける雨音に混ざった。

    きゅん

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  8. 好き、だった。
    そんなことも知らないで私の目の前の男は彼女のことを楽しそうに話す。
    「日曜なー、遊びに行ったんだけどすっげぇ可愛いの!」
    嬉しそうに話してバカみたい。
    でも1番バカなのは、
    「ベタ惚れじゃん」
    傷つくってわかっていながらも笑ってこんなことを言う自分。
    照れたように笑う彼。
    自分で言ったことなのに自分の首絞めて私はどうやらマゾ気質らしい。
    「あっ、ちょっと行ってくるわ」
    今日イチの嬉しそうな顔を見せて席を立つ彼の視線の先は彼女で。
    立ち上がる彼の腕を無意識に掴んでしまった私からは変な汗が流れる。
    「…次移動なんだから時間忘れないように」
    ポンっと押すようにして手を離すと「おう」と嬉しそうな顔をして私から背を向ける。
    私が1番聞きたくない話をする彼の話を笑って聞くのはこの気持ちに気づかれて話せなくなるよりはずっといいから。
    今日も、今日とて仮面をかぶる。
    好きだった、なんて嘘。

    きゅん

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  9. 保健医になって2年目。
    「セーンセ」
    「また?」
    「だって会いたかったし」
    フワリと笑って言う言葉に年下のくせにと思いながらもドキッとする。
    「先生だって会いたかったでしょ?」
    当たり前かのように言う彼は空いたベッドに寝転がる。
    「教室戻りなさい」
    私も一応保健医という立場だ。
    「なに真面目な先生ぽいこと言って」
    ベッドにいたはずの彼は前にいて私を見下ろす。
    「これでも一応っ…」
    続く言葉は彼の手で遮られて。
    「口で塞いだ方がよかった?」
    ヘニャリと笑う彼。
    「真面目な先生だったら生徒とこーんなことしないでしょ?」
    口を押さえた手は後頭部に回ってさっきとは違う方法で塞がれて。
    「っちょっ…ン」
    苦しむ私を見てクスクス笑う彼は余裕そうで。
    「鼻で息するんだよ?センセ」
    「それぐらいッ」
    「それぐらい?…へぇ」
    不敵に笑った彼がまた首を傾けて近づいて来た時にはもう力が入らないのはいつものこと。

    きゅん

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  10. 授業が終わって走り出す。じゃないと…
    「先輩!一緒に…」
    「ごめんねー。先約」
    少しも悪びれない様子の先輩は私の好きな人。女好きで有名。今も女の人連れてるし。
    周りはやめとけって言うけど好きなんだから仕方がない。
    「まーた振られてやんの」
    聞き慣れた声が聞こえて振り返る。
    「うっさい」
    「一緒に帰ってやってもいいけど?」
    スカした顔で言うコイツはクラスメイト。
    「クレープ買って」
    奢らせようと考えていた時グイッと後ろに引かれて。
    「食べ物で他の男に懐いちゃうんだ?」
    さっき女の人を連れて帰ったはずの先輩がいて。
    私は先輩の腕の中にダイブしていて。
    「…じゃあ俺帰るわ」
    状況が把握できてないのに一緒に帰ってやるとか言っていたヤツは帰ってしまった。
    「…先輩先約は?」
    「なんか甘いもの食べたくなっちゃって戻って来ちゃった」
    首を傾げて笑った先輩。
    今日も先輩の手のひらで踊らされている気がする。

    きゅん

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  11. 私の彼氏はヤキモチ焼きだ。
    「ねぇ機嫌なおしてよ」
    「やだ」
    こうなると彼は長い。
    彼氏が通う大学のOCに来た私は無駄に広いキャンパス内で体験授業の帰り迷った。
    「道教えてもらっただけだよ?」
    親切に道案内してもらっているときに会って。…今に至る。
    キャンパス内にあるカフェで珈琲を飲む彼はブスっとしていて。
    「あれ絶対下心あった」
    「考えすぎだって」
    ココアを飲みながら答える。
    「手引かれてたじゃん」
    珈琲から目を離した彼は私に手招きをして隣に来させようとする。
    移動すると少し満足した顔をする彼。
    「簡単に触らせないで」
    周りに聞こえないように顔を耳元に寄せた彼の行動で顔に熱が集まって。
    「真っ赤」
    嬉しそうに私の頭を撫でる彼。
    その顔の色気がすごくて周りの女の人が彼を見ているのがわかる。
    「じゃあその顔私以外に見せちゃやだ」
    私の言葉に不思議そうな顔をする彼。
    私も相当のヤキモチ焼きだ。

    きゅん

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  12. 夏休みだしいないか。
    約束なんてしていないし私のことを覚えてるかも怪しい。
    折角だから図書館見ていこうと思ってずらっと並ぶ本を見ていると一つの本に目が止まった。
    跳べば取れるかなと思った時手が伸びて来てフワリと香る匂い。
    「跳ぼうとしてたろ。昔から変わんねぇな」
    「先生…」
    ほら、と言って渡された本。
    「もう先生じゃねぇけど」
    私が中3のときに大学1年で私の塾の先生だった彼。
    「ここ受けんの?」
    「うん。…先生、アレ覚えてる?」
    アレとは塾に高校の合格報告した時私が先生に告白した事。
    院に行く予定の先生だったから同じ大学に受かったら考え直してって言った事。
    「あ、いた。…お前高校生に手出してんの?」
    でも先生の友達の登場で聞けなくて。
    「かわいー、ここ受けるの?」
    ニコニコとする彼は優しそう。
    すると突然グイッと体が傾いて。
    「…これ、俺が先約だから」
    頭上で響く低い声に心臓が音を立てた。

    きゅん

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  13. 高校と比べ物にならないくらい大学は広い。
    「ここ外ッ」
    「んー?大学は広いから死角が多いし大丈夫」
    首筋に顔を埋められて身をよじる。
    年上の彼氏が通う大学が第一志望の私はオープンキャンパスに来ているわけで。
    体験授業も終わってキャンパス内を案内してくれるって言うから待ち合わせして大学内で会ったけど、
    「っキャンパス案内は…?」
    「後でね。ほら、こっち見て?」
    頬を固定されて首をコテンと倒す彼。
    そんな仕草に私は弱い。
    でも今日はなんか、
    「今日甘えただね?」
    普段から私に甘いけど今日は一段と甘い。
    「…なんでワンピース着てんの?」
    「え?」
    「キャンパス内、男多いんだからズボンでいいでしょ」
    彼の顔を見るとムスッとしてて。
    けどすぐに意地悪く笑ってスルリと太腿を撫でる。
    「こういうことされたら?」
    「そんなことする人いないっ」
    「今俺にされてるけどね」
    クスリと笑った彼は甘えたで意地悪だ。

    きゅん

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  14. 「先生って暴走族と仲良いよね」
    前から思っていたことを呟いた。
    日直だったから日誌を出しに行った職員室での出来事。
    他の生徒は帰ってて職員室にもほとんど先生がいない。
    「なんで人少ないの?」
    「飲み会」
    「…誘われてないの?」
    哀れんだ目で言うと「お前が日誌出すの遅ぇんだよ」と頭を叩かれる。
    「体罰に世間は厳しいよ」
    「教育の1つだ」
    ザッと日誌に目を通した先生は「お疲れ」と言って日誌を閉じた。
    「でさ、さっきの質問なんだけど」
    「暴走族と仲良いって話か」
    「そーそー、確かに先生若いしチャラそうだけどさ、」
    先生のことたまに名前でさん付けの人いるじゃん。と、この前たまたま耳にしたことを言う。
    すると「あー、」と言って少し複雑そうな顔をして。
    「お前さ、ペラペラ言うんじゃねぇぞ」
    いや、何が。
    でもその意味はすぐ分かって。
    「俺、OB」
    子供っぽく笑った先生にいろんな意味で心臓が音を立てた。

    きゅん

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  15. ギジリと音を立てるベッド。
    音が大きくなるにつれて比例する女の人の甘い声。
    「覗き見?」
    数分後、音の原因だった人が隣のカーテンから顔を出して妖美に笑う。
    「隣にいるのわかってましたよね」
    「バージンちゃんには刺激強かった?」
    クスリと笑って言うこの先輩は暴走族の幹部の1人で私の好きな人。
    暴走族とは縁遠いように思わせる甘いマスクで女の人を喰らう。
    数日前にこの保健室で会ってから私のことを彼はバージンちゃんと呼ぶ。
    だから悔しくて、
    「バージンじゃありません」
    少し目を逸らして嘘をつく。
    その瞬間「へぇ」という低い声が聞こえて気がつけば視界に広がるのは先輩の顔と天井。
    その顔はいつもの甘い顔じゃなくて。
    見たことない冷たい目をしていてゾクリとする。
    頭上でまとめられた両手首からは男女の力の差がはっきりしていて。
    「ハジメテ、貰った奴、だれ?」
    低く呟かれた声。
    暴走族の彼を見た瞬間だった。

    きゅん

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  16. 人を殴ることに疑問を覚える。
    殴れば殴り返される。避ければ別だけど。
    「マゾなの?」
    「うるせぇ」
    幼馴染の彼は気づいた頃には暴走族なんかに入ってしまって顔を合わせるたびに傷が増えている。
    「昔は私の後ろに隠れていたくせに」
    「人は変わんだよ」
    ほんと憎たらしくなった。昔は可愛らしい男の子だったのに。
    「無差別に殴ってるわけじゃねぇよ」
    「じゃあどういう対象で殴ってるんでしょうね」
    「…お前が肌見せる服着るからだろ」
    「は?」
    夏だしいいじゃん。てか、私の服装とか関係なくない?
    「今日みたいに前開いた服とか、短ぇのとか履いてっと俺の周りは馬鹿ばっかだから…」
    お前のことやらしい目で見てる奴増えんだよ、と少し不貞腐れたように言う。
    「…それで殴ったと」
    「悪いか」
    少し耳を赤くしていて。なんか嬉しくて。
    人は変わるってほんと。
    「いい男に育ったね」
    「今更かよ」
    フッ笑った彼は口角を上げた。

    きゅん

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  17. 「なんだこのふざけた進路希望は」
    「ふざけてないよ!先生のお嫁さんになるの!」
    只今、放課後の教室で面談中。
    「どこがふざけてねぇんだよ」
    「全部!」
    こんなに好き好きアピールしているのになびいてくれない先生は堅物だ。見た目チャラいくせに。
    ビリッ
    「あ!私の進路…」
    真っ二つに切られた進路調査の紙は先生の白衣のポケットの中に消えて代わりに新しい紙が出てくる。
    「何枚でも出すぞ」
    ほんと堅物。
    「先生ちゅーしよ」
    「は?」
    こうなったら実力行使だ。
    「どこからそういう思考になった」
    「女として意識してもらおうと思って」
    立ち上がって抵抗されるよなって思いながら近づいたら聞こえたのはため息で。
    「もう知らね」
    呆れられたと思ったのに先生の手が私の後頭部に回って。
    「…っん」
    重なった唇から甘い声が漏れる。
    「嫁になったらもっと激しいけど?」
    唇が離れて崩れ落ちる私に意地悪な顔で先生は笑った。

    きゅん

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  18. これ何回目だろうってどこか冷静な私。
    「帰りたいんだけど」
    彼氏が総長だからって毎回拉致られるなんてたまったもんじゃない。
    「囮は黙っとけよ」
    ゲラゲラと下品に笑う男達。唾が飛んで汚い。てか、
    「私の彼氏強いよ」
    「そーそー、俺強いよ」
    聞こえたのは大好きな声で。
    周りを見ると汚い男達が伸びていて。
    「待った?」
    ヘラヘラ笑う彼は突っ立っているだけ。
    「早く紐切ってよ」
    「縛られてるのもそそるね」
    呆れていると「あれ」と声がして。
    「なんでボタン取れてるの」
    「破られたみたい」
    「…待ってて、あいつらの息の根止めてくる」
    真顔になった彼は動いてない男達に近づく。
    「…殴ったら口聞かないから」
    ボソッと言えば彼は動きを止めて。
    「命令するの?」
    クスリと笑った彼は開いた首元に顔を埋めてチクッと刺激を与えて。
    「…んっ」
    「紅い花咲いたね」
    指でなぞって妖艶に微笑む彼の顔は私だけが知っている。

    きゅん

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  19. 「失礼し…誰もいないじゃん」
    適当にベッド借りよ。
    ベッドに飛び込むとゴンッと鈍い音が鳴って。
    「…寝込み襲うなんて大胆だね」
    私が飛び込んだベッドから声が聴こえたかと思えば、
    「ちょっと遊ぼっか」
    視界に広がるのは天井と妖艶に微笑む男の人。
    グッと手首をベッドに縫い付けられて。
    「あ、俺が誰かわかったって顔」
    私を押さえつけながらクスクスと笑い出した彼はこの辺で結構大きい暴走族のNo.2。
    「…2番目の人」
    「うわっ何それひどい覚えられ方」
    楽しそうに笑う彼からは人を殴るように見えない。
    「取り敢えず離してもらっていいですか」
    「えー、タノシイコトしようよ」
    「絶対楽しくありません」
    冷たいなぁと言いながら私の上から降りた彼は隣にゴロンと寝転がる。
    暴走族ってか、この人なんか…猫みたい。発情期の。
    「今失礼なこと考えたでしょ」
    「気のせいですよ」
    拗ねたように言う彼にドキッと胸が鳴った。

    きゅん

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  20. 暴走族は嫌い。
    「は?無理だって…っ切りあがった」
    携帯を片手に眉間に皺を寄せる彼。
    またか…。聞きたくない。けど、
    「どうしたの?」
    私はバカだ。
    「…姫さんが1人で出かけたってさ。危ないから探せって」
    総長だけでいいだろ…と彼が呟く。同感だ。
    行かないでって言いたいけど彼の立場を考えると。
    「デートは今度にしよっか」
    ニコッと笑って言った筈なのに普段私に優しい筈の彼は私を睨む。
    「我儘なのも困るけど…」
    顔を両手で挟まれて上を向かされて。
    視界には綺麗な彼の顔が入って。
    「物分かりが良すぎる俺の姫さんはもっと困ったもんだな」
    本当は?って耳元で言われて。
    「デートしたい…。でも今日は行って?」
    私の言葉にまた眉間に皺を寄せる。
    「…今日、泊まりに行きたい」
    驚いた顔をした彼はすぐにふわりと笑った。
    「断る理由がない」
    すぐ帰るからと言って鍵を私に握らせて。
    暴走族は嫌い。けど彼は特別。

    きゅん

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  21. 「あっつ」
    「わかりきったこと言うな」
    ご飯のピークも終わって座っているだけでいいから楽だけど暑い。テントの中だけど暑い。隣に鉄板あるし。
    「おっきいホール借りて学祭すればいいのに」
    どうせならエアコン完備のとこがいい。
    「後夜祭の花火に金かけてんだろ」
    あー、確かに。毎年花火あげるからなぁ。
    「今年も女友達とかぁ」
    「…花火か?」
    「そ、あれカップルで見ると長続きするってジンクス」
    去年は学祭前に別れたしその前はフリーだったしそして今年はまぁ言うまでもない。
    「アンタモテるんだから彼女の1人や2人いるんだろうけど」
    羨ましい限りだ。いや私の場合は1人で十分だけど。
    「2人もいらねぇよ」
    そんなことを思っていると不機嫌そうな声が近くで聞こえて。
    「お前にそう思われんの一番ムカつく」
    いつの間にか私の前に立っていて。
    「なぁ、それ今年俺と見ねぇ?」
    聞こえていたバンドの音が止まった気がした。

    きゅん

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