ケータイ小説 野いちご > 野いちご学園

  1. 45件ヒットしました

  2. 「先輩!」

    がばりと勢いよく抱きしめられる。
    大好きなその匂いに心臓が跳ねて、私は慌てて彼を見上げた。

    「…ちょっと見ない間に背伸びた?」
    「今それ…?…別にそんな伸びてないけど…先輩が縮んだんじゃないですか?」
    「ちょっと!」

    ──高校時代の後輩、私の彼氏。
    2つ年下の彼に卒業式に告られて以来、私たちは遠恋ながらに順調な交際を続けている。

    「何か、ほんと久しぶりですね。会えて嬉しい」
    「…キミ学校ではクールキャラなんでしょ?何か会うたび口説くの上手くなってない?」

    私の肩に顔を埋めて呟く彼に、胸はドクドク鳴りっぱなしだ。

    「だって先輩が可愛いから。会えない分好きが積もるんですよ…」
    「…っここ駅だから…」

    彼のその甘い言葉攻撃に、どんどん顔に熱が集まってくる。
    彼は小さく笑って、なら、と耳元で囁いた。


    「…部屋でなら先輩のこと、好きにしてもいいってことですか?」

    きゅん

    6

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  3. ──例えば4年前に振った幼馴染が、超イケメンとなって目の前に現れたら。

    「久しぶりだな」

    落ち着いた茶色の髪がふわりと揺れる。
    大人っぽくなったその顔立ちに、思わず心臓が跳ねた。

    「…うん。久しぶり」
    「急にごめん。どうしても直接伝えたいことがあってさ」

    まっすぐな視線が、4年前と重なる。
    あの時の私は、幼馴染を恋愛対象に見れなくて彼を振ったのに。
    ──どうして今、胸が苦しいんだろう。

    「…何?」

    声が、震える。

    あの時よりずっと熱のこもった彼の瞳。
    …私の鼓動は、ちっとも落ち着かなくて。

    「あの時振られてから俺、ずっと諦めようと思ってた。なのに、おまえのこと忘れらんなくて」

    懐かしい声のはずなのに、あの時とは違う。
    私の心臓を、強く、ゆさぶって。

    「おまえ以上に好きになれるやつなんていない。4年間ずっと、変わらなかった」





    ──好きだ。絶対、惚れさせてみせる。

    きゅん

    2

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  4. ──…いち、にい、さん、よん、ご。

    『…はい』

    プツリ、5コールしたあとに聞こえてくるだるそうな低音。
    会いたくてたまらない気持ちが溢れ、私は無理やり笑みを作った。

    「あけましておめでとう!元気?」

    『ん、おめでと。普通に元気だけど…そっちは?』

    「元気だよー」

    ──絶賛遠恋中の私たち。
    私は遠く離れた君にこんなにも会いたいというのに、彼はちょっと素っ気ない。いつもだけど。

    『…なあ、もしかして今駅にいる?』
    「え?なんで?いるけど」
    『…やっぱり。じゃあ後ろ向け』

    急すぎるその指示に従い、そっと振り向く。



    ──そこには、世界で1番会いたかった人がいて。



    「っえ、なんで、」

    どくりと心臓がはねて、思わず声が零れた。

    大好きな彼が、照れくさそうに目を逸らす。



    「──ずっと会いたかったのはおまえだけじゃないってこと」



    ふわり、優しい腕に包み込まれた。

    きゅん

    6

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  5. 帰り道。
    キミと何度も歩いたこの道も、あと数ヶ月で終わり。

    私は地元の大学、彼は県外の大学に進学が決まっている。…住む世界が違うってきっと、こーゆうことだ。

    優しくて頭が良くて、顔も綺麗で。
    ──自慢の幼なじみ。こんな人が近くにいたら、好きにならないわけがない。

    対して私は美人じゃないし頭だって人並み。負けない何かがあるとすれば、キミと過ごした時間の長さだけだ。


    「なんで泣いてんの」
    「…え」

    不意に隣を歩いていたキミが、そんなことを言って足を止めた。
    泣いてないよ、と返した私の声は鼻声で。
    自分でも気付かないうちに泣いていたらしい。

    「泣いてるじゃん」

    苦笑した彼が、私の頬に手を伸ばす。
    外気で冷えたその手は冷たくって、思わず目を瞑った。

    ──その、瞬間。


    「……俺だって、寂しいよ」


    柔らかい何かが、唇に当たる。


    目を開けた途端、大きな温かい腕に包まれた。

    きゅん

    3

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  6. 「…生きてる?」

    聞き慣れた大好きな声と、小さな衣擦れの音にうっすら目を開ける。
    寝てた?と申し訳なさそうに首を傾げる彼に、私はゆるりと首を振った。

    「起きてたよ」

    私の言葉に幼馴染の彼は少しだけ口角をあげ、目を細める。
    この不器用な微笑が、私は案外好きだ。

    「保健室行ったって聞いてびびった。心配させんな」
    「…うん。心配ありがとう」

    普段からクールで、ほとんど表情筋も動かない彼。
    それでも幼馴染兼彼女の私は彼の優しさを知っているし、そーゆうところが好きだったり。

    だから笑ってお礼を言ってみせると、彼は不意にこちらへ顔を寄せてきた。

    「ぇ、ちょ、あんまり近くに来るとうつっちゃうよ」
    「いーよ」

    私の言葉なんてお構い無しに、彼との距離がゼロになる。
    ふに、と柔らかい何かが唇に当たって、キスだと自覚するのにそう時間はかからなかった。

    「──おまえのなら、いくらでも貰ってやる」

    きゅん

    7

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  7. けほ、こほ、とさっきから止まらない彼の咳。
    マスクで半分以上隠れた綺麗な顔は、咳がこぼれるたびに辛そうに歪められる。

    私はそんな幼馴染に、もう何度めかの意見を提案した。

    「やっぱり帰ろ…?」

    ──朝、いつも通り家まで迎えに来てくれた彼。
    こんなに体調悪そうなのに学校は行くとの一点張りで。

    今回も彼は首を振って、それから潤んだ瞳を私に向けた。

    「だいじょーぶ」

    その返事と同時にけほ、とまた咳がこぼれる。
    痛む喉から無理やり出したであろう声は掠れていて、思わず私は立ち止まった。

    マスクしてたってわかる、火照った頬。なのに体は寒そうに縮められていて…。

    「…お願いだから。心配なの」

    ぱちりと目を瞬き、それから困ったように眉を下げる彼。
    次の瞬間には熱い腕に包み込まれ、はあ、と頭上からこれまた熱いため息をこぼされた。



    「…そーゆう風に心配してくれっから、無理したくなんだよ」

    きゅん

    2

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  8. 「…先輩」

    ぐい、と強く腕を引く。
    途端にふらりと揺れた先輩の体はいつもの何倍も頼りなく感じた。

    「熱、ありますよね」

    まっすぐ先輩の目を見て、はっきり言ってみせる。
    彼は気まずそうに目をそらし、それから小さくため息をついた。

    「…だから会いたくなかったのに」

    喉にくる風邪なのか、少し掠れた先輩の声。
    火照った頬も相まって随分色気が…なんて、病人相手に何考えてるの私!

    「保健室行きますよ」
    「大丈夫だよ」

    ふるりと首を振る先輩。
    私はそんな彼に頬をふくらませ、上目遣いをしてみせた。
    あざとく可愛くおねだり、後輩彼女の特権だ。

    「…私は先輩が心配なんですよ」

    全身の可愛さをかき集めてそう呟くと、突然先輩の腕が私の方へ。
    そのままいきなり抱きしめられ、私は声にならない声をあげた。

    「……何でそんな可愛い顔してくんの」

    いつもクールな先輩は、熱が出ると大胆になるみたい…!?

    きゅん

    33

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  9. ──微熱のせいでぼんやりする視界でも、いつもクールな幼馴染が珍しく焦った顔をしているのがわかった。

    「……ごめんね」

    わざわざ保健室に連れてきてくれた彼に謝ると、ふるりと首を振られる。
    さらりと黒髪が揺れて、彼の綺麗な顔が近付いた。

    「……心配、した」

    ボソリ、耳元で囁かれる。あんまり無理するなよと付け足され、そのぎこちない声色に思わず笑みがこぼれた。……らしくないなぁ、君がこんなに優しいのは。

    「…うん。ありがとう」

    ──保健室の空気はふわふわとしていて、同じ学校なのに教室とは全然違う。

    その居心地の良さに瞼を下ろすと、ふに、と何か柔らかいものが唇に当たった。

    目を開けると、至近距離に幼馴染の顔。
    キスされたと気付くのにそう時間はいらなかった。



    「ゆっくり休めよ」



    ──風邪を引くのも悪くないかな、なんて。

    きゅん

    9

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  10. 「……言っとくけど、おまえが悪いんだからな」

    放課後の、誰もいない教室。
    何故か彼氏の腕に包まれた私は、真上から降ってくる彼の声に高鳴る心臓を隠せなかった。

    「……えっと?」

    どくんどくん、脈打つ心臓。
    顔を上げる余裕なんて勿論なくて、彼が今どんな顔をしてるのかも見えない。

    ただぎゅっと抱きしめてくるその腕が、まるで幼い子どものようで。
    ──愛おしい。そう、思ってしまった。

    「あの…どうして私、抱きしめられてるんでしょうか…?」

    誰か来ちゃうかもよ、と呟くと、彼はいっそう強く私を抱きしめる。
    ふわんと彼の優しい香りが私を包み込んで、また胸がどきりと引き攣った。

    「…ずっと我慢してたんだからな、今日。可愛すぎんだよバカ」

    甘すぎるその囁きは、耳がとろけてしまいそう。
    思わず顔を上げれば、綺麗に微笑した彼と目が合った。

    「──離してやんねぇから」


    この先もずっと、永遠に。

    きゅん

    9

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  11. 手に持った鏡でそっと前髪を整えて、深呼吸をひとつ。
    ここの角を曲がったら、とびきりの笑顔で。


    「こんにちは!」

    お昼休み、人気のない校舎裏。
    私が毎日ここに通う理由はただひとつ、彼に会えるからだ。

    「おう」

    脱色されて薄い金色になった細い髪。ふわふわと自然にセットされた髪に、何度触れたいと思ったことか。
    耳に開いたピアスも最初は怖かったけれど、今はもうなんてことない。

    「隣座っていい?」

    みんなに怖がられているような、いわゆる『不良』な彼。
    確かに口も目付きも悪いけれど、私は彼の優しさをいっぱい知っているから。

    「ん。ほら、これやる」

    座った途端に渡されたのは、私が大好きないちごみるく。

    ありがとうと言って笑うと、彼の唇がそっと私の唇に触れてきた。
    一瞬触れるだけの、甘すぎるキス。


    口も目付きも悪い不良彼氏のキスが実は優しいことなんて、私だけの秘密。

    きゅん

    5

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  12. 「美恋(ミコ)」


    私の名前を呼ぶ、低く艶やかな声。

    最初は大好きだったその声は、あの日のことがあってから、どうしても好きになれない。


    ──…でも私は、彼を愛さなきゃいけないから。


    「なあにソウくん」


    ──彼以外を愛することは許されない。

    あのときのような、惨劇が起きてしまうだろうから。


    「俺のこと愛してる?」


    壊れたアンドロイドは、壊れた部分を綺麗に取り繕って私の隣を歩いている。


    「…うん、もちろんだよ」


    私の理想を詰め込んだはずのアンドロイドは、ずっと前に壊れてしまったから。




    うるさい蝉の声に、酷く気分がざわめく。







    ──…私は一生、この【リソウカレシ】を愛し続けなきゃいけない。

    きゅん

    1

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  13. 「あっちー…」

    彼の口から、水色のアイスがすっと離れる。

    濡れた唇が色っぽくて、私は思わず目をそらした。

    「暑いね…」

    幼なじみの彼氏と歩く、夏期講習からの帰り道。
    コンビニで彼がアイスを買ったのがさっきのことだ。

    「おまえほんとに良かったの?アイス」

    「うん。キミが美味しそうに食べてるだけで涼しいよ」

    そっと微笑んで答えると、彼は小さく舌打ちをして頭をかきむしった。
    セットされてた髪が崩れてもったいない。

    「おまえなぁ…」

    頬を赤くした彼が、やけくそ気味にアイスを齧る。

    軽く首を傾げれば、ぱちりと視線がぶつかった。



    綺麗な顔が近付いて、次の瞬間濡れた唇が強引に押し当てられる。

    息苦しくて小さく口を開くと、生温いソーダの味が口の中に広がった。


    満足気に彼が唇を離し、それから手元に残ったアイス棒を見る。


    「──あ、」


    ……棒には小さく、あたりの文字が。

    きゅん

    2

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  14. サラサラの黒い髪。白い肌によく映える桃色の頬。

    二重まぶたの綺麗な瞳が優しく見つめているのはいつも私じゃなくて、彼と同い年の彼女さんだ。


    「…はぁ、」


    諦められたらどんなに楽だろう。
    1年間片思いをしていた先輩に彼女が出来たのは、つい1ヶ月前のことだ。


    ──なのに、先輩は。





    「…あれ、」


    廊下を彼女さんと歩いていた先輩が、私を見て立ち止まる。

    目が合った瞬間に微笑まれて、あぁまた、なんであなたは、そんなに。


    私に笑顔を向けてくれたのも一瞬、先輩の目線はすぐに隣の彼女さんへと移る。

    私に向けてくれた微笑みとは性質の違う、好きな人にするはにかんだ笑顔が彼女さんに向けらていた。





    ──諦められたら、どんなに楽か。


    何度そう思っても諦められないのは、目が合うと笑いかけてくれるあなたがいるから。




    ──私はまだ、この片思いに終止符を打てない。

    きゅん

    2

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  15. ふに、と唇に伝わる柔らかい感触に、たちまち顔に熱が集まっていく。

    「相変わらず慣れてくれないな」

    意地悪く笑った先生が、私の額を軽く指でつついた。
    触れられたところから熱くなっている気がして、私は慌てて下を向く。

    「だって先生が急に…!」

    先生は笑いながら、今度は頭を撫でてきた。

    「そーゆうとこ好きだけどね」

    どく、と心臓が脈打つ。

    先生はそうやって、いつも余裕で。

    「…何か、ずるいです」

    ボソリと呟くと、先生は不思議そうに首を傾げた。

    「私は先生が初恋なのに、先生はそうじゃないって思うと」

    私は先生が初めて。でも先生は違う。

    私の前にも付き合ってた人がいて、こうやって優しくされてたはずで。

    「…何、もしかして嫉妬?」

    呆れたように笑いながら、先生が私の顔を覗き込む。
    顔を上げた瞬間、また唇に柔らかいものが当たった。

    「こんなに愛しいのは、おまえが初めてだよ」

    きゅん

    5

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  16. 「恋ってなんだろ」

    放課後の教室。数学の宿題を見ながら呟く。

    目の前に座る幼馴染が、何急に、と目を上げた。

    恋してるって、どこでみんな気付くんだろう。恋愛感情を知らない私は、恋が分からない。

    「だってもう高校生だよ?このまま恋がわからなかったら…」

    興味を無くしたように、幼馴染は視線を落とす。
    私以外の女子には優しいのに、私にはとことん冷たいやつだ。
    …その特別感が実は嬉しいんだけど。

    「悪いけど、俺は好きなやついるよ」

    そしてそんな幼馴染から、爆弾発言が。
    思わず席を立つ。

    好きな人!?

    「えっ嘘、何で」

    困惑と驚きの中に、何故か悲しい気持ちが混じる。

    私以上に特別な人、いたんだ。
    …私が1番だと思ってたのに。何か、やだ。

    ふ、と幼馴染が笑う。
    彼も席を立って、それからそっと囁いた。

    「おまえが好きだ」

    その言葉に安心してしまった理由を私が知るまで、あと数秒。

    きゅん

    7

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  17. 「何だよこんなとこ呼び出して。ベタすぎ」

    2月の屋上は、やっぱり寒い。

    昼休みに入ってすぐ来たつもりだったけれど、先に来ていた彼の鼻は、ほんのり赤くなっていた。

    「ムードって大事でしょ?」

    付き合ってもう、半年になる。
    隣にいるのが当たり前で、どちらから告白するでもなく、恋人になっていた私たち。

    彼の隣に私以外がいるなんて考えられなかったし、私の隣に彼がいないことだって考えられなかった。

    「今日はバレンタインですね」

    好きと声に出して伝えたことは、1度もない。
    でも、今日は。

    「...そうですね」

    私の緊張を感じたのだろう。
    ふいと目をそらした彼が可愛くて、緊張がほぐれる。

    「...好きだよ。隣にいてくれてありがとう」

    緊張は、解けたはずだった。
    なのに声は震えてて、風は冷たいのに頬が熱い。

    チョコを受け取ってくれた彼が、照れくさそうに笑った。


    「俺も好きだよ」

    きゅん

    2

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  18. 「先生!」

    大好きな後ろ姿に、声をかける。

    振り向いた先生は、私と目が合うなり微笑んでくれた。

    「何か用?」

    柔らかな笑顔に、癒される。
    胸があったかくなって、それを誤魔化すように私は声をあげた。

    「ハッピーバレンタインです!」

    手作りには、出来なかった。
    重いかな、とか、迷惑かな、とか考えちゃって。

    でもせっかくだし、ちゃんと好きな人に渡したかったのだ。

    昨日、クラスメイトに配る用に買ったチョコの大袋を、先生の前に出して見せる。

    いいの?と驚いたように目を見開いた先生に、私は笑顔を返した。

    「みんなに配ってるんで、先生もどうぞ」

    本命だなんて、言えない。言っちゃいけない。

    だって私は生徒で、彼は教師だ。

    「ありがとうな」

    にこりと笑う先生に胸がきゅう、と鳴いて、それから予想外の言葉に、心臓が止まった。

    「.....ホワイトデー、期待しといて」

    きゅん

    9

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  19. 「チョコ、ねぇの?」

    少しチャックの開いたスクールバックから覗く、たくさんのチョコ。

    ほとんどの教科書を置いていっていつもすっからかんな彼のカバンは、チョコで埋めつくされていた。

    「誰がアンタにあげると思ってんの?」

    ──ほんとは、持っている。

    なんて言えるわけなく、当然リュックから手作りチョコを出すことも出来ず。

    「相変わらずつめてーのー。これでもモテてるんだぜ?オレ」

    不貞腐れたように頬を膨らませる彼。顔が整った人はどんな顔もかっこいいのがずるい。

    「ハイハイ、じゃあ私帰るから」

    私の幼なじみで、学年一のイケメン。
    そんな彼に向かってそう言い捨て、私は席を立った。

    またなーと呑気な声を聞き流し、教室を出る。

    ……昔はいつも、一緒だった。
    どんどんかっこよくなっていく彼に戸惑って、好きを伝えられないまま、一方的に距離を取って。


    ──今年もこのチョコは、渡せない。

    きゅん

    6

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  20. 校門の前に立つ、目立つイケメン。

    マスクで顔の半分は隠れているけど、纏うオーラだけで目立っているからすごい。

    「しらんくん!?」

    「来ちゃったー」

    イタズラっぽく笑う彼。驚きすぎて固まる私。

    来ちゃった、で済ませられるほど、私と彼の住むところは近くない。

    新幹線と電車で3時間ちょっとかかるくらいだ。

    「えっなんで、えぇ、」

    大人気歌い手でもある彼は、ちょっと会いに来る時間なんてないはずなのに。

    驚きと混乱でワタワタしてると、しらんくんはわずかに口角を上げた。

    動画やライブでは見せない、意地悪な顔。

    「俺と会うの、嫌?」

    しらんくんはずるい。

    そんなわけ、ないのに。
    私が首を振るのを知りながら聞いてくる彼に、お望み通り小さく首を振ってみせる。

    優しく目を細めた彼が、私を抱き寄せた。

    温かい腕に、包まれる。


    「俺も会いたかったよ」

    ドキンと心臓が飛び跳ねた。

    きゅん

    6

    向井さなさんをフォロー

    通報する

  21. 『撮影で近くまで来たんだけど、会える?』


    そんなメッセージが彼から届いたのは、学校が終わってすぐのタイミングだった。

    会えますと送ってすぐついた既読。
    きっと彼は、わざわざ私が学校終わるまで待っていてくれたんだろう。

    指定された駅に行くと、マフラーで顔の下半分を覆った、目立つイケメンを見つけた。

    「し...づきくん!」

    目元だけでわかる、その整った顔。
    優しく細められた瞳で、微笑んでくれたことがわかった。

    「急にごめんな」

    もうすぐワンマンライブを控えた彼の髪は、暗い紫に染まっている。

    私は慌てて首を振って、どきどきする胸を抑えた。
    ずっと憧れ続けた人が、目の前で笑ってる。

    「何か、用とかですか?」

    私の問いに、彼はふるりと首を横に振った。

    手を、差し出される。


    「20分だけ空いたから、デートしよ」


    ──いつもはみんなのアイドルな彼だけど、今は私だけの彼氏。

    きゅん

    5

    向井さなさんをフォロー

    通報する

▲