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  1. 22件ヒットしました

  2. 「や、待って」

    「待たない」

    「誰か来たら…んっ」

    絡め取るような激しいキス。
    普段の優しい先輩とは違う熱っぽい瞳に私は小さく息を飲む。

    「急に…どうして…」

    詰めた吐息の隙間で尋ねると先輩は

    「上書き」

    と唇の上で低く囁いた。

    「上書き?」

    「さっき男に触られてたよね」

    「あれは階段落ちそうになって助けてくれて…っ」

    「そんなの俺は知らない」

    そう言うと先輩は私の首筋に唇を寄せた。

    「……っあ」

    チリ、と小さな痛みが一瞬。



    「他のやつに触られてんな。お前は俺のものなんだから。…俺だけ見てろよ」



    《type of kiss》
    首…独占欲。誰にも渡したくないという執着を表す。

    きゅん

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  3. 『ねぇ伊咲ぃ』

    鼻にかかった甘ったるい声がして思わず柱の陰に身を隠した。

    チクリ。胸に刺さった小さな棘。

    傷つくって分かってるのに、盗み聞きなんてバカみたいだ、私。

    『あたしと付き合わない?』

    アンタの幼馴染より満足させてあげるよ、と笑う彼女。

    その声から逃れるように私は体を翻して走り出した。

    今、伊咲の返事を聞けば泣いてしまう気がした。

    「美月!」

    後ろから伊咲の声がして腕を掴まれる。

    「離して!」

    「聞いてたんだろ?」

    「今伊咲と話したくない」

    「は?」

    「伊咲が女子と話してるの見て、嫌だって思った!伊咲に触らないでって思ったし、伊咲を渡したくないって思った!自分がこんなに汚い女だなんて知らなかったの!だから…っ」

    手首を引かれ、ぶつかるように伊咲に抱きすくめられる。

    「お前今めちゃくちゃ可愛い」

    「…え?」

    「俺はとっくにお前のもんだよ、美月」

    きゅん

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  4. 君に花を贈ろう
    光溢れる木漏れ日の中で
    君に空を贈ろう
    星屑の夜にかけた願いを

    暗くて眠れない日は 僕が隣にいるから
    君が1人で泣かないように

    Smile & Cry
    僕は愛しい時を抱きしめて
    Cry or Smile
    ささやかな時間が君色に染まる

    だから ほら笑ってよ
    これは小さな恋のおはなし



    …そっとギターを置くと隣に貴方がいて、くすぐったいようなこの空間が幸せだと感じる。

    引き寄せられるようにキスをして、

    貴方の優しさを

    声を

    温もりを

    忘れてしまわないように

    失くしてしまわないように





    私は今日も歌を歌う。







    愛してるは全部ラブソングに詰め込もう。




    love song for you……



    以前投稿したエアラブのafterstoryです。その後の彼らが書きたくて続編が出来ました。りこsideかな?前作もよければぜひ^ ^

    きゅん

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  5. 翔なんて大嫌い。
    それが私の口癖だった。同じ日に生まれたお隣さんの佐竹翔は、幼い頃から私のライバルだった。私は彼と張り合って、惨敗してはそう泣き喚いた。
    中学生になると翔は身長が伸びて、私は翔に敵わなくなった。私は呼び方を佐竹に変えた。翔は何も言わなかった。

    「や、離してッ!」
    にやにやと笑いを浮かべた男の腕を振り払おうとして、腕をギリリと掴まれた。
    嫌だ。怖い。お願い誰か───
    「おい、手ぇ離しやがれ。警察呼ぶぞ」
    低い声が聞こえた。男の手首をひねり上げ、冷ややかに男を睨みつけたのは翔だった。
    「大丈夫か」
    慌てて逃げていく男を一瞥して、翔は私に聞いた。その声が優しくて、悔しくて、それでも震えは止まってくれなかった。
    「佐竹なんて大嫌い…っ」
    そう言うと、翔は私を優しく抱き締めた。
    「お前を守れるなら、嫌われても構わない。」
    じわりと視界が歪んだ。 涙が出るのはきっと、悔しいせいだ。

    きゅん

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  6. 「先輩、私に恋しません?」

    私は恋が怖い。

    恋をするということは、何かが変わるということ。

    実っても散ってももう元には戻れない。

    それが堪らなく怖いのだ。

    だから私の中の恋心が疼いたら、茶化して告白しないと安心できない。

    振られてやっと私は前に進めるんだ。

    面倒くさい女だと自分でも思う。

    「何言ってんだバーカ」

    ほら、ね。

    分かりきった答え。

    でも、どうして胸が痛いの。

    どうしてこんなに苦しいの。

    「俺はもうずっと前からお前に惚れてる」

    「…え?」

    「お前がこういうの怖がってんのも分かってる。けど俺はお前が好きだよ。…みやぎ、俺と付き合って欲しい」

    いつも臆病な自分が嫌いだった。

    あと少し踏み出せればと思っていた。

    勇気を出してもいいだろうか。

    私、変わってもいい?

    神様、少しだけ私に力をください。

    「はい…っ」

    世界が、明るく輝いた気がした。

    きゅん

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  7. ──ドボンッ
    『やだ、あの子びしょ濡れ』
    『川に落ちるとか小学生?』
    笑い声の中で俯く。最悪だ。こんなことなら遠足なんて来なければ良かった。

    ──ドボンッ
    揺れた水面の先を辿ると高浪先生が顔を拭っていた。
    『だっせ!』
    「いやー、やっちった。冷てぇな」
    『タカナミその歳で水遊びかよ』
    「俺を片仮名で呼ぶなバカども」
    先生はからかう生徒を適当に交わして岸に上がると、私に手を差し出した。いつの間にか皆はBBQに移ったみたいだ。
    「矢崎大丈夫?」
    軽々と私を引き上げる先生に私は疑念を抱く。
    「…わざとですか?」
    「んー?」
    「川に落ちたの」
    「…子供はそんなこと気にしちゃいけません」
    その言葉に私の中の何かが弾けた。

    柔らかな感触から名残惜しく離れる。
    「…子供じゃないです」
    「ふーん」
    先生は私の手を引くと木に私を縫い止めた。
    「子供じゃねぇなら声出すなよ」
    深いキスが何度も唇に落ちた。

    きゅん

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  8. 「聞いてますか、成瀬さん。あんたのために補習してんですよ」
    無理に貼り付けたような引きつった笑顔で千早先生が言う。
    「もう無理。元がバカだからどうしようもないもん」
    突っ伏した私に、先生はあんなぁ、と大きくため息をついた。
    「お前みたいな若い奴が無理だなんだほざくなよ。俺は無理だと思ってない。お前のそれはお前を信じてる俺を裏切ってんだぞ」
    分かったらもう一回。先生はプリントを人差し指でトントンと叩いた。

    「え…移動?」
    「貴方達と一緒にこの学校卒業しちゃったのよ。残念ねぇ」

    なんでよ。大学受かりました、先生のお陰ですって、先生がいなきゃ意味ないのに。
    「最後まで責任とれバカ…っ!」
    「近所に悪口吹聴して回るなよ」
    「先生…なんで…」
    「昼休み。…担任から聞いた。成瀬、おめでとう。それから…」
    重なった唇に目を見張る。
    「責任なんて幾らでもとってやる」
    もう一度、唇が優しく重なった。

    きゅん

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  9. 「──っ!」

    手の甲に赤い線が走った。

    「せ、先輩っ!大丈夫ですか!?」

    後輩くんの声に我に返って教室を見渡すと、皆が私に注目していた。

    どうやら後輩くんの包丁が私の手に触れたらしい。

    「す、すみません!俺、ぼーっとしててっ!」

    後輩くんは私の手を取ると、傷が残ったらどうしよう、と青ざめた。

    「大丈夫大丈夫!こんなの舐めときゃ治るから。皆も料理焦がしちゃうよ」

    手当してくるね、と言い置いて教室を出る。

    横に並ぶ男が1人。

    「…ついてこなくても1人で保健室くらい行けるって」

    「うるせぇ」

    突然、爽馬が私の手を掴んだ。

    そのまま口元に私の手を近づける。

    手の甲に湿った感触。

    「ちょっ、何してっ…」

    「あ?舐めときゃ治んだろ?」

    赤い舌が手の甲を這う。

    「やぁ…」






    「他の男に触らせてんじゃねぇ。お前は俺のもんだろうが」

    きゅん

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  10. ──成田国際空港行き241便、13時発は…


    「じゃあ、時間だから…」

    「…うん」

    どんどん遠くなる背中に、ほんとは行かないでって言いたかった。

    私の傍にいて欲しかった。

    生まれた時からずっと隣にいて、

    憎まれ口叩いて、

    喧嘩ばっかりだったけど、

    言わないって決めてたけど、


    それでも、


    それでもやっぱり



    「好きだバカっ!」


    パタタ、と床に雫が落ちた。

    そっか、もう拭ってくれる人はいないんだ。

    「泣くなよ」

    「え?」

    顔を上げると翔ちゃんがいた。

    なんで、今向こうに歩いていったのに。

    「七奈が泣くと行くに行けない」

    そう言って翔ちゃんは私のおでこにキスを落とすと、また歩き始めた。

    ふと翔ちゃんが足を止めた。

    振り返って私に何かを投げる。

    シロツメクサの指輪?

    「いつか本物にしてやる!それまで待っとけ!」

    きゅん

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  11. 手を伸ばしたその先で
    頬の雫をあなたは攫ってくれない
    ただあなたの隣に
    そう願うのは私の小さなわがまま
    Cry Cry
    恋は落ちるものだと 誰かが言った
    Still Still
    あなたへの想いは 消えてくれない
    好きでいさせて あなたを思い出しても涙が流れなくなるまで

    ギターを置いてふぅっと息を吐く。
    「へー、上手いじゃん森野りこ」
    教室の後ろからパチパチと拍手しながら七瀬先生が顔を出した。
    ──ガタンッ
    「な、なんで」
    勢い余って椅子から落ちた私を先生は腕を掴んでぐっと持ち上げた。
    見られた。見られた。見られた。
    恥ずかしくて顔なんてあげられない。
    「誰に向かって歌ってたわけ?」
    「…それはっ」
    「俺?」
    「〜〜っ!忘れてください、あれは私の一方的な想いだから」

    七瀬先生は私の腰をぐっと抱き寄せて唇に噛みつくようなキスをした。
    「本当に一方的って思ってる?教師だって男なんですけど」

    きゅん

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  12. 「三神くん、また問題集出してないよ」
    「いいんちょー俺が出すと思ってんの?」

    三神くんは不良だ。
    テストはいつも赤点。今日だってほら…

    「三神なんだこの点は!12点だぞ!?」
    「センセー、できれば12点も取れたことを褒めて欲しいっすね」

    あーあ、またやってる。三神くんも黙っておけばいいものを。

    「このクラスの委員長は羽瀬だな。羽瀬、お前三神に教えてやれ。逃すなよ」

    …へ?





    「これをそれに代入して…三神くん聞いてる?」
    「あー、うん」
    「聞いてないでしょ。…でも三神くん来てくれるとは思わなかったな」
    「なんで」
    「そういうの面倒臭がるでしょ?」
    「俺来なかったらあんた怒られんだろ」
    「ほらね、やっぱり三神くんは優しい」
    ____2年1組羽瀬真琴さん、職員室まで来てください
    「ごめん行かなきゃ。ここやっといてね」







    「…アンタだから優しくすんだろ。気づけバカ」

    きゅん

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  13. パチン、パチン

    夕陽が差し込む教室にホッチキスの音が響く。
    「なんで俺が…」
    「文化委員選んだの自分でしょ」
    「うるせぇ」

    机を合わせた向かい側でぼやくのは四宮深月。
    私は、この人が好きだ。

    「四宮って好きな人いるの」
    口に出した声は少し震えていた。
    「…いるよ」
    「どんな、人?」
    「…不器用な人。いつも他人ばっかで、好きな人に彼女ができてもきっと応援しちゃうような人。」
    聞かなきゃ、良かった。傷つくなんてずっと前から分かってたはずなのに。

    不意に四宮の手が私の髪に伸びた。
    「ホッチキス、ついてる」
    「あ…ごめん、ありがとう」
    私、笑えてる?
    ちゃんと普通にできてる?
    どうか私の想いに貴方が気付いていませんように。
    「だから不器用なんだよ…」
    唇に、柔らかいものが触れた。
    「え…?」
    「アンタだよ、ばか」
    私の顔が赤いのは、きっと夕陽のせいだけじゃない。

    きゅん

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  14. 「あー、ごめんね?昨日彼女ができたばっかなんだわ。あとちょっと早かったらな〜。あ、それか内緒で付き合っちゃう?いいよ、俺そういうの嫌いじゃないし」


    原田香織、17歳。

    初恋の人にフラれました。


    「いやー、お前バカだろ。猫かぶってるとか見抜けよ」
    部活中、バスケットボールを指先でくるくる回しながら晴大がそう言った。
    「うるさいっ」
    「あの先輩、手が早いって影で言われてたの知らなかった?」
    私は晴大を無視して体育館倉庫へと向かう。晴大が後ろをついて来ていたのは気づいてたけど、顔を見られたくなくて、私はなにも言わなかった。
    「ほんとお前危機感無さすぎ」
    「分かってる!...けど好きだったんだもん」
    涙が溢れた。私だって先輩がそんな人だなんて思わなかった。
    「あんな奴見るなよ」
    「え...?」
    晴大の顔が急に近くなった。
    「お前は俺だけ見てればいいんだ」
    耳元で晴大が低く囁いた。

    きゅん

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  15. 【story of Nagi】
    懸命に俺を慕って追いかけてくる君は、泣いたり笑ったり、くるくる表情を変えては俺を好きだと言った。

    先生と生徒。
    決して許される関係ではない。

    けれど、愛おしいと思った。
    もし出会ってしまった事が過ちだというのなら、俺は運命なんて信じない。

    でも現実は残酷だ。

    校長から言い渡された離任という言葉。
    俺は教師だし、公務員だし、「分かりました」という他に言葉なんて持ち合わせていなかった。

    約束という名の鎖で君の未来を奪ってしまう事が怖かった。
    嫌いになったわけじゃない。
    君と逢えなくなる事に何も思わないわけじゃない。

    待っていて欲しい、と何度も出てくる言葉を飲み込んで、俺は君の元から離れた。

    いつか君に送ったナナカマドをモチーフにした髪飾り。

    密かに込めた想いは

    まだ君に、届かない____

    《七竈ーナナカマド》
    初夏の花。花言葉は「君を見守る」

    きゅん

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  16. 【story of Nanaka 】
    「私、追いかける方が好きなんです」
    「…なんの話だよ」
    「鬼ごっこですよ。先生はどっちが好きですか?」
    「…追いかける方」
    「えー?追いかけられる方が鬼ごっこしてる感あるのに」
    「追いかけられる方は休めねーだろ。つーか口より手ェ動かして。補習なんですよ、一応」


    こんなバカな事を話したのはいつだっただろう。
    あの頃の私は、先生に追いつきたくて、目の前を流れていくささやかな時間でさえ早く過ぎて欲しいと、先生の優しさに甘え、現実から目を背けていました。

    バチが当たったのかな。

    離任する先生の一覧表に載ったあなたの名前。

    なんで何も言ってくれなかったんですか。

    先生は寂しくないの。

    追いかけるの飽きちゃったんですか。

    いつか先生がくれたナナカマドがモチーフの髪飾りがパチンと音がして床に落ちた。

    ___会いたい。

    そう願うのは、私だけですか?

    きゅん

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  17. 「センパイ、好きです」
    「だから無理だってば!」

    何度目かの告白。振っても顔色ひとつ変えやしない彼。人気のない廊下で私は小さく溜息をついた。
    「…あのね、私と君は2コも違うの。あと何ヶ月かしたら私は卒業しちゃうし、多分付き合っても続かない。…それに先輩なんて誰でもかっこよく見えるものなの。君の気持ちは“恋”じゃなくて“憧れ”だよ」
    そう言うと彼は驚くほど真っ直ぐにこちらを見つめてきた。
    「“憧れ”ねぇ…」
    彼の手がこちらに向かってのばされる。なに、と身構えると、耳の横でトンッと音がした。

    清潔そうな石鹸の香り。

    ブラウンの澄んだ瞳。

    息が触れそうなほど近い整った顔。

    「なにしてっ…!」
    「へぇ、“こっち”の方はまるで子供なんですね、センパイ。あんたが“憧れ”だって言うんなら、俺が説明してあげますよ。


    理解するまで、離しませんから」

    耳に低く囁かれる声が、私の頬を赤く染めた。

    きゅん

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  18. 春。
    新しい季節。
    全てが変わっていく中で私の中の彼は消える事を知らない____

    イチ先輩は1つ上の部活の先輩だ。優しくて、成績優秀スポーツ万能。誰もが羨むその地位を鼻にかけない彼は、いつも「イチならしょうがない」という言葉と一緒にいた。
    ある日彼は私の事が好きだと言った。
    嬉しかった。私は彼が好きだったのだから。けれど同時に彼の隣に立つ事が怖くなった。私は先輩に釣り合わない。返事ができずに、季節が巡った。待つよと言ってくれた先輩はもう隣にいない。

    「美蕾」
    懐かしい声がした。
    「……イチ先輩…なんで…」
    「大学近くなの」
    「……」
    「…あのさ、俺が好きって言ったのって、もう時効きちゃった?」
    苦笑いして先輩は言った。私は反射で首を横に振る。もう無かった事にしたくなかった。
    「私、イチ先輩の事が好きです」
    震える声でそう伝えるとイチ先輩に抱き締められた。
    「今度はもう、待たないから」

    きゅん

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  19. ードンッ

    耳障りな音がした。
    校長先生の長ったらしい話が止まってる。
    すごい騒がしいけどこれ大丈夫?
    というか、なんで天井が回って...
    あぁ、そうか。
    私、倒れたんだ。

    誰の手?
    冷やっこくて気持ちいい。
    今日、ホワイトデーなのに。
    水野先輩ちょっとでも私の事考えてくれてるかな。
    あーでも今大会だって言ってたっけ?
    野球してる先輩も好きだけど、
    私の事も見て欲しいなんて、
    ホワイトデー、お返しなんて要らないから
    「隣にいて、なんて我儘かなぁ」
    「………丸聞こえだバカ」

    目を開けると清潔そうな白いシーツに包まれていて、なぜか水野先輩が隣にいた。
    「なんで...」
    「お前が朝礼で倒れたから保健室まで運んできたの。…ほんと勘弁して。自制が効かなくなる」
    「〜っ全部聞いて…?」

    …チュ

    リップ音がして水野先輩が離れていく。
    「全部聞いてたから、煽んないでって言ってんの」

    きゅん

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  20. ープツッ

    そんな音がして道路を走る車の音がクリアになった。

    照りつける太陽に顔を歪ませながら目を開くと、担任の凪早が私を覗き込んでいた。

    「なにしてんだよ」
    「サボってるの。…イヤホン返して」
    「あのなぁ、授業中だから。…やだね」
    「凪ちゃんも一緒にサボる?…窃盗罪」
    「仮にも教師なんだけど。…生徒指導」
    「羽目外しちゃえば?…ほんとに返して」
    「…これは没収。返して欲しいならちゃんと授業に出なさい」
    「やだ」
    「分かれよバカ!…白石が授業出ないと教師の俺はお前に会う事だって叶わないんだよ」
    「……そんなこと言うなんて反則」

    凪ちゃんは私の頬にそっと手を伸ばして涙を拭った。ひやりと冷たい手が気持ちいい。
    「好きだよ、七実。だからちゃんと授業出て」
    私がコクリと頷くと凪ちゃんは私の頭をくしゃりと撫でた。
    「…余計授業に出られなくなるじゃん」
    人知れず呟いた言葉は蒼い空に消えていった。

    きゅん

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  21. 春風を受けてカーテンがふわりと膨らむ。

    卒業式を終えた教室は、昨日までの賑やかさをしまい込んでひっそりとしていた。
    我先にと打ち上げへ向かった同級生達はきっともうここには戻ってこないだろう。

    私はある机にそっと指先で触れた。
    「ねぇ幸人、知らなかったでしょ?私ずっとあなたの事好きだったのよ。幸人がくれる優しさも、笑顔も全部、全部大好きだった。君は気づいてくれてたのかな」
    紡いだ言葉は静かな教室飲み込まれていった。
    「気づいてたよ」
    不意に背中が暖かくなった。
    胸の前で交差された幸人の細長い手を認識して、やっと抱きしめられたんだと気づく。
    「…っなんで、ここにいるの」
    「忘れ物、取りに来た」
    「忘れ物なんてないでしょ。昨日全部持って帰ったんだから」
    「あるよ」
    幸人は私の体を反転させると後頭部を引き寄せ、優しく口づけた。
    「美蕾、忘れて来た」
    春の風がどこまでも優しく、私達を包んでいた。

    きゅん

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