馳月基矢さんのレビュー

さよなら、世界
はづきこおり/著

★★★★★

飛べ。限界を知って、可能性を信じて。

瑞穂の目には、誰もが「穴顔」にしか映らない。
顔があるのは、新しい家族だけ。
恐怖の対象、母親代わりの人。
冷たく苛立った、腹違いの兄。
単身赴任中の無責任な父。
瑞穂の世界そのものだった母はもういない。

私は母に裏切られたの?
誰の言葉を信じればいいの?
私は存在していていいの?

学校で「穴顔」じゃない人に出会った。
溌剌とした美少女のマリ。
自由自在に飛び回る遊馬。

穴顔とそうじゃない人の違いは何?
ときどき訪れる鮮明な白昼夢の正体は?
私に手を差し伸べる彼らは何を思っている?

傷付け合ってしまった不器用な家族は、やがて互いを見つめ合う。
目に見えるもの、見えないもの。
大切な感情は、真実は、どこにあるのか。

少しずつ顔を上げていく瑞穂と、彼女を救いたい皆の思いがようやく噛み合う瞬間は、「温かい、優しい」だけでは言い表せません。
瑞穂が見届ける「さよなら」が胸に迫りました。

馳月基矢
(2016/09/14/08:01)