「ねぇ、莉乃(りの)。翔(かける)君とはどこまで進んだの~?もうヤッた?」


机に肘を突き、手のひらの上に顔を乗せながら好未(このみ)が興味津々といった様子で尋ねた。


「好未ってば、急に何言うのよ。そんなこと聞かれたら莉乃が困るでしょ?いいよ、莉乃。無理に答えなくて」


「ハァ~?なんで莉乃に聞いてんのに桜が答えんのよ。桜って見た目はおとなしそうなのに言いたいことズバズバ言うよね」

「好未は見た目通りね。ズケズケと人のプライベートに足突っ込むんだから」

桜に言い返すことにできなくなった好未はムッとした表情を浮かべながらあたしに視線を移した。

「で、どうなのよ?」


「だから……――」


桜と好未の一触即発の危機にあたしは慌てて割って入った。


「二人ともケンカしないでよ~。翔とはまだキスまでだよ!って……こんなこと自分で言うのってすごい恥ずかしいね」

答えてみたものの、今の発言を思い返して耳まで真っ赤になる。

こんなこと友達に話すなんて恥ずかしすぎる。

「マジで~?ていうか、本当に答えてくれると思わなかったんだけど!」

好未が茶化すようにケラケラと笑う。

「莉乃ってば素直に答えすぎよ。でも、そんなこと聞いた好未が一番悪い」

桜があたしを励ますようにポンポンッと肩を叩く。


「でもさぁ、もう2か月も付き合ってるのに!意外過ぎるし~。翔君って案外奥手なんだ?」


「ねぇ、好未。そうやって人の恋に首突っ込むのやめなさいよ!勝手に詮索したりするのって悪趣味だから」


「はいはいはい。すみませんねぇ~」


「何よ、その謝り方!全然反省してないでしょ!?」


「まぁまぁ、二人とも……。仲良くして?ねっ?」


険悪な二人をなだめながらふと教室の掛け時計に視線を移してハッとする。