そして青年は、女の肩を強めに押して倒した。

ほっそりとしているようだが、やけに力が強い。

軽く押されただけで、女はベットの上に転がってしまった。


「豚顏のおじさんについては、よく知らない。
けれど童貞なら知っているよ。
身近にいるからね」


青年の言いようは嫌味ったらしい。

しかし、同時に親しみを持っている風でもあった。


「え?まじー?
やっぱやだよね、童貞って。
下手くそだし、緊張しまくりだし、ホントきもい」


押し倒されたままの体勢で、女は、そうほざいた。


「相手が年だとそうなるけどね。
……うざいのに変わりはないけど」


青年の脳裏に何がよぎったのかは定かではないが、とにかく、彼はその瞬間、ひどく悲しげな顔つきになった。


そしてなんの前触れもなく、女の、露出度の高い服に手をいれた。

それが滑らかな身体を北上していくと、急に女の身体が跳ねた。


「やっ……!」


女は紅潮し、声をあげる。

慣れていることなのに、青年の手が動くたび、女の身体が激しく動いた。


「じっとして」


覆いかぶさるように、青年は上から言った。

美しい唇が弧を描く。

細く、形の良い指が、身体の上を縦横無尽に這う。

豊かな胸の膨らみを撫で、その頂の飾りを摘み、谷間に指先を伝わせる。

その手は腹に南下すると、次はその腹を触る。

女の喘ぎ声が耳元で聞こえるが、青年は、さして快感を覚えたようでもなかった。

その間、暇な左手で、青年はズボンのポケットからあるものを取り出した。


札だ。


紅い文字で、なにやらわけのわからない漢字が記された札である。

それを、行為に夢中になっている女の背に、撫で回す振りをして貼り付ける。



そこで、青年はいったん女の上から退いて、ベットから降りた。


「どうしたの?まだ全然だよぉ?」


女は、自分がわけのわからない札を貼られたことに気づいていない。

青年は苦笑した。