おや、なんだろう。


そう思って陽頼が拾ったそれは、音から予想できたとおり、ずっしりと重かった。

なにか小さくて重いものが、大量に入っているのだろう。


「落としたよ?」

「おう、すまん」


男は一礼し、口の開きかけた巾着を受け取る。

すると、背負っていたゴルフバッグをおろし、そのチャックを開け、そこに巾着を放り込んだ。

その時に、そのゴルフバッグの中から、火薬の臭いがしたのだそうだ。



「たぶん、その時だと思うんだけどー……」


頭を抱えるようにして考えていた陽頼だったが、そこでやっと、いちばん酒童に言うべきことを思い出した。



「あっ、そうだ!忘れてた」

「なんだ?」


酒童はてっきり、その火薬の男に関する情報が出てくるのかと思ったが、陽頼は酒童を見上げて、


「鹿か猪か、ケルピーか。
嶺子くん、どれが好き?」


と、男に頼まれた伝言を口にしたのだった。