次の日の早朝、何時もの様にリンダはボスを連れて牧場の仕事をこなします。南は相変わらず牛舎の前で髪の毛を気にしながら携帯を弄って時間を潰しています。

彼女はそんな南を横目で見ながら、ちょっとした罪悪感を抱えつつ敷き草を牛舎の中に運び込んでいました。

彼にかける言葉が見つかりません。それどころか考えがどんどん悪い方向に進んで行きます。不治の病…だとか実は余命いくばくも無いのではとか…もし、此処で倒れたら…とか。確かに南の顔色は良いとは言えません。何時も青白くて痩せてて儚げで。


「あ、あのさ、南…」


リンダは意を決します。彼に向かって目一杯の笑顔を作ると清水の舞台からバンジージャンプする位の覚悟で自分から話しかけて見たのです。

リンダの声に気が付いた南は相変わらずそっけなく「ん、なんだ」とリンダに視線を向ける事無く、そう答えました。

「ちょっと、立ち入った事を聞くけど、あんた、何処か――悪いの?」

南の瞳がぴくんと動きます。リンダは、それを見て、あぁ、しまった、やっぱり余計な事を聞いてしまったと後悔しました。