太陽が昇る前からリンダの仕事は始まります。

彼女はうりゃっと気合でベッドから飛び起きて、作業着に着替えると、髪の毛を三つ編みにして、トレードマークの麦わら帽子をちょこんと被り、急いで牛達の元に行く準備を整えます。

「ボス、おいで!」

彼女の部屋の隅っこで蹲り、未だ眠そうに大あくびをするセントバーナード犬の「ボス」を急き立てて、牛舎へと向かう彼女の表情は何時も明るくて元気です。

牧場は朝から仕事の山。

先ず搾乳して放牧して牛舎の下草を替えて餌箱に餌を補充して…

目の回る様な忙しさ。

放牧された牛達を誘導するのは、ボスの役目。

彼はとても賢い犬で何時も巧みに牛達を纏めて散歩させてくれるのです。

そして、仕事がひと段落し、ようやく一息つける時間が訪れました。

「ボス~、もどってらっしゃい、朝ご飯にしようよ」

遠くで呼んでもボスは忠実にリンダの元に帰って来ます。

そして一緒に家の中に入るとまっすぐ台所に向かうのが日課でした。

朝から体を動かすからかお腹がとても空いていて、朝ご飯が待ち遠しい。

それが逆に嬉しくも有り充実して居ると感じる瞬間でもありました。

「お疲れ様、さ、お食べなさい」

出来たてのチーズとライ麦パンにハムエッグ、極めつけは取れたて野菜山盛りのサラダ。

リンダの好物がテーブルに並んでいます。