季節は夏。

受験シーズン真っ只中。

周りは初めて迎える受験に向けて、期待と不安を抱えながら猛勉強中だというのに、菜摘には危機感なんて全くなかった。

もう受験する高校は決めてるから。市内で1番レベルの低い、私立高校。

願書さえ提出していれば、落ちる人はまずいないという噂だ。

実際、ロクに学校にきてなかった先輩たちもみんな受かってる。



「髪、黒くしなよ。もうすぐ受験じゃん」

昼休み。いつも行動を共にする伊織が、色素の薄いショートカットの髪を丁寧にとかしながら言った。

菜摘より10センチも背の高い伊織を見上げ、受験生とは思えないほどに明るく染まった髪を自分で少しつまんでみる。

生徒会長らしい注意に、目を剃らした。