一気にテンションが上がった菜摘は、大急ぎで近くに待機している伊織と隆志の元へ走った。

「ねぇどうしよう!山岸さん、菜摘のこと覚えててくれたよ!」

2人に抱きつき、人目も気にせずピョンピョンと飛び跳ねる。

「すごいじゃん、よかったねぇ。で、アドレス聞いた?」

菜摘の頭を撫で、ニッコリと微笑む伊織。

「…あれ…忘れてた」

話すことに必死だったから。

「意味ないじゃん」

ふたりの言う通りだ。

せっかく会えたのに、こんなんじゃ意味がない。

「まあ偶然でも会えてよかったね。奇跡じゃん」

…奇跡、か。

「やっぱり奇跡だよね…」



本当に会えるなんて夢みたいだ。

まだ心臓が騒がしい。

まだ夢見てるみたい。

それに話しちゃったんだよね?



でもきっと、『奇跡』って1度だけ。

せっかくその奇跡が起きたのに、無駄にしちゃった。



……でも、山岸さん言ってたんだ。

『待ってるから』って。

『またね』って。