慌てて廊下を走り、壊れそうな程勢いよくドアを開けた。



それと同時にチャイムが鳴り響く。



「セーフ?!」



慌てて前を見るが、來ちゃんの姿はない。



「はぁ、疲れた…」



「久しぶりに全力疾走したよ」



息を整えながら席につき、教科書を机から出そうとしたが……



え?……ない。



置き勉しているから、無い筈がないのに…。



突如として消えた教科書に呆然としていると、



「どうかしたの?」



首を傾げた陽が心配そうに話しかけてきた。



「……いや何でもないよ」



どうしようかと思いふと顔を上げると、視界の端でクスクスとこちらを見て笑っている女子が目に入る。



あぁ、嫌がらせか…。



どうせ、姫になった事への妬みだろう。



仕方ない……教科書なしでやるか。