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Side:
    .+*麻生 久遠*+.
    .+*Kuon asou*+.










「ん……お願い……久遠(くおん)……ねぇ……」


視聴覚室に不似合いなほどの声は、ぼくの下敷きになっている彼女から聞こえた。


彼女とは、ホームルームが終わったぼくが教室を出た時に出くわした女子で、名前は知らない。



だが、彼女の方はぼくを知っているようだ。

ぼくに近づいて来るなり、胸を押し付けてきた。


顔は美人のようだが、はっきり言ってぼくの趣味ではない。




彼女をここに……手鞠(てまり)ちゃんを呼び出すここに連れて来たのは、

手鞠ちゃんと別れるための……幻滅してもらうための行為だったことにすぎない。




手鞠ちゃん…………。





大きな瞳がぼくの袖を掴んで見つめてきた彼女は……もうこの場所にはいない。



ぼくが……目の前でこの女を抱いているから。




「やっ!!

止めないで!!」


ぼくの下敷きになっている彼女は、パックリと開いたカッターシャツへと自らぼくの手を誘っていく。


足をぼくの腰に巻きつけ、ねだってくる。