side:Miki Morimoto



「……ひっく」

土砂降りの雨の中、あたしはひとり、口から嗚咽(オエツ)を吐き出し、絶望に暮れていた。



どうしてこんなことになってしまったんだろう。

実家から遠く離れてやって来たこの街で、ひとり過ごすあたしは幸せだと思っていたし、この幸せは永遠に続くと思っていた。

少なくとも、数時間前まではそう思って疑いもしなかった。


それなのに、あたしは今、涙を流し、ひとりで地獄というものを味わっている。



どうして……。

どうしてこうなったのだろうか。



「ひっく」


信じていたのに……。

彼はあたしを幸せにしてくれるって、そう信じていたのに……。


だけどそうじゃなかった。

彼はあたしをそそのかし、天国から地獄へと一気に突き落とした鬼のような奴だったんだ。


「ひっく」


悲しみが胸へとたどりつくごとに涙は目から流れ、あたしの頬を伝う。

大空を覆っている灰色の分厚い雲から降り注ぐ真夏の冷たい雨はまるであたしの心とリンクしているようだ。

一向に止む気配はない。

――ううん、
それどころか、さっきよりもずっと雨の量は増えているし、粒も大きくなっている。


横断歩道の真ん前にある信号機はすぐ近くにあるというのに、なぜかとてつもなく遠くにあるような気がする。