side:Miki Morimoto



『でもね美樹(ミキ)さん、潤(ジュン)本人はまだ自覚していないけれど、きっとあなたに惚(ホ)れてるわよ?』

昨日のお昼に、潤さんの母親である端月(ハヅキ)さんとひょんなことから一緒に食事をした時に告げられた言葉がグルグル回っている。


おかげであたしは潤さんの顔をまともに見ることができなくなってしまった。

それなのに、隙あれば彼の姿を追いかけ、見つめてしまう。

このままじゃ、あたしはとてもおかしな人だ。

たった数日間一緒にいるだけなのに、彼のことを意識している自分がいる。


それもこれも、すべて端月さんの言葉で気づかされてしまった自分の気持ちのせいだ。


あたしは潤さんのことを好きなんだ。


でも、この恋も実らない。

だって潤さんは今でも亡くなった奥さんのことを想っている……。


あたしみたいな田舎者で、しかも他人の子供を身ごもっているような奴を相手にするわけがない。


だからこの恋も絶望的。

あたしって、ほんとつくづく恋には向かないんだなって、そう思う。


「美樹ちゃんどうしたの? しんどい?」

「えっ!?」

潤さんのことや恋愛のことを色々考えていると、ふいにあたしの頭上から声が降ってきた。

どこか遠くの方に行ってしまったあたしの意識が呼び戻される。


――あ、しまった。

今も祈ちゃんと一緒に、仕事に出勤する潤さんのお見送りをしているんだった。