ふんわりとした肩まである髪の毛と大きい目をした、たまご型の可愛らしい輪郭(リンカク)の持ち主、美樹ちゃんだ。


どうして……。

なぜ今、この状況で彼女の姿が思い浮かんだんだろう?


疑問を頭の片隅に押し退け、引き続き母さんと話をするため、ぼくは口を開く。


「いや、違うんだ。実はここ最近、ハウスキーパーとベビーシッターの両方をしてくれる人を雇ったんだ。だから明日から土日や祝日は祈を母さんのところに預けなくてもよくなった」

息継ぎもなしにそう言うと、今度は母さんの方が言葉を詰まらせる番だった。


『雇った? 身の回りのお世話をしてくださる方を? 他人と関わりあうことを極端に嫌うあなたが? で、どんな女性なの!? 可愛らしい? それとも美人?』

ぼくの返事に、驚きの声が返ってきた。



……なんでだ。

どうして母さんも雇ったその人が年若くてしかも女性だと思うのだろうか。

当たっているけれど、それだけに怖い。

なんだって母さんも聡と同じようなことを言うのだろうか。


「どう……って。別に――とても優しくて可愛い子だよ。祈と一緒に笑い合える女性だ」

『まあ、まあ、まあ、まあ!!』

とても嬉しそうな母さんのその驚嘆(キョウタン)した声に、なぜか居た堪(タマ)れなくなったぼくは携帯から耳を離す。

「とにかく、祈を預けなくてもよくなったから!!」

言うと間もなく電話を切った。

そんなぼくの心臓は、なぜかドクドクとうるさいほど鼓動を繰り返していた。