「あら?いい男が居ると思ってたら拓斗じゃないの」





薄暗いバーのカウンターで、化粧が濃く香水が臭い女が隣の席に腰をおろし、親しく話しかけてきた。


何故、この女は俺の名前を知っているんだろうか。





「何を飲んでるの?」

「……」

「ふふ、一口貰うわ」





痺れを切らしたように女は俺が飲んでいたグラスに手を伸ばし、ただただ度が高いだけの不味い酒を戸惑いもなく喉に流し込んでいく女。





「なっ、ゴホッ、一体何度あるのよ?」

「……」

「なにか言ってくれたっていいじゃないの〜。ずっと無視なんてひどいわ」




女は口紅を塗りたくった唇を尖らす。


可愛いと思いしてるみたいだが俺からすればそれは勘違いも甚だしい。