お母さんに手伝ってもらいながら、浴衣を着付ける。

「楓は細いから、仕方ないわよ。」

「でも…」

ぴっしりと綺麗に着付けたいのに、既製品の浴衣は私の体に合わないみたいで、不格好になってしまう。

「夜なんだから、誰も気にしないわよ。」

お母さんは簡単に言うけど、私だって女の子だし、少しでも可愛くなれたらって思うんだよ。

「藍花ちゃんとは何時に待ち合わせなの？」

お母さんは、帯を整えながら質問してくる。

「5時に小池公園で待ち合わせ。」

私は全身鏡に映った自分の姿を確認しながら答える。

「夜に女の子2人だけで出かけるなんて、本当は心配なんだけどね…。」

ぶつぶつと小言を言っているお母さんに、心の中で手を合せて謝った。

「花火大会が終わったらすぐ帰ってくるのよ。人が沢山いるうちなら危ないこともないだろうし。」

「うん。大丈夫。」

夜7時以降遊びに行けるのは年に1度きり、花火大会の時だけなんだ。