学校に行くのがこんなに嫌だと思ったことは一度もない。
真っ青な空も、今の私にはモノクロにしか見えなかった。

……だけど、もう逃げるわけには、いかないんだ。
もうこれ以上逃げたくない。逃げちゃいけない。怒られたって嫌われたって、仕方ないんだもの。


すべてがもう遅いかもしれないけれど、それでも、だからってあやふやにしちゃいけないんだ。


奥歯を噛んで、学校に向かい教室のドアを開けた。


「……おはよう」


もうすでに教室にいた沙知絵と由美子に声をかける。


「おは、ってなにその顔!」

「ひっど! どんなけ泣いたらそんな顔になるわけ!?」


2人は挨拶の途中で、私の顔を見て叫ぶ。
それもそのはずだろう。瞼は腫れまくっているし、顔も浮腫んでいると思う。なんせ一昨日からずっと泣いていたんだもの。

お母さんには体調が悪いとウソをついて昨日もずっと部屋に篭っていた。
こんなに泣けるんだっていうくらい泣いた。

心配する2人に、頭を下げる。
実際は、沙知絵に。


「ごめん」


怖い、けれど……言わなくちゃいけない。



「私……巽が、好きです」



初めて、口にした。だれかに告げた、今の思い。
口にするとまた涙が溢れてしまいそうになって、目を固く瞑る。



「どう、したの? 急に……旅行、だったんでしょ?」


由美子が戸惑い気味に告げる。
どう答えていいのかわからなくて、無言でいると沙知絵が席を立つ音が聞こえて体がこわばってしまう。