朝、8時。
学校までは徒歩で10分。学校が始まるのは8時40分。

玄関を開けて、きょろきょろとアタリを見渡しながら一歩外に出た。


「ねーちゃん、邪魔!」

「ちょっと静かにして! 今大事な瞬間なんだから!」

「……バカじゃねーのー」


後ろから隆太がうんざりした顔で私をぐいっと押し避けた。
……畜生。生意気なクソガキが。最近やたら大人びてきやがって。


「学校近いんだから、もうちょっと後に出てったらいいだろー。オレの登校時間とずらしてよ」

「こっちにはこっちの事情があるの!」

「……事情って、どーせ巽のことだろ」


うぐ。
隆太の発言になにも言えなくなってしまうと「ほんっと、ガキだよなあ」とガキに言われてしまった。
畜生!

先に学校に向かう隆太の背中を無言で見送って、相変わらずこそこそと玄関先で様子を伺う。

なにを言われようとも、しかたがないのだ。
まだお子様の隆太にはわからないんだ。


数分すると、家の前で手を振る由美子(ゆみこ)の姿が見えた。
慌てて「行ってきます」とお母さんに声をかけて家をでる。


「おはよう美咲」

「おはよー! 由美子(ゆみこ)」


小学校で出会ってから、こうして毎日由美子と一緒に登校している。
由美子の登校途中に私の家があるから、いつも家の前まで私を迎えに来てくれる。

肩まである髪の毛を横で括って、シンプルだけれどおしゃれなシュシュを巻いていた。
髪の毛長かったら私も同じような髪型したいなあ。

でも、剛毛な髪の毛の私は、伸ばしてしまうとまとめることが難しい。
結果相変わらずショートボブだ。

まあ、私の顔と由美子と顔の作りが違うから、真似したって由美子みたいにはならないだろうけどー。