「いや、だって、まだ二十で、え? ルームシェアで、付き合っていなくて、え? なんで?」
年末まで研修でいなくて寂しいと七海は愚痴を言っていたはずだと、真は困惑する。
「とりあえず籍だけ、入れちゃおうかって話になって……」
「いやいやいやいや、とりあえずじゃなくて」
上目遣いで指先をいじりながら、限界まで顔を真っ赤にして照れながら報告する七海の左手の薬指には、目も眩むような大粒のダイヤモンドが施された婚約指輪がこれみよがしにキラキラと輝いている。
「付き合ってまだ数日じゃないのか? 早すぎだろ!」
「七海を誰にも渡したくないだけだ」
大和は優雅にコーヒーを啜りながら、真に極上の涼しい笑みを浮かべた。
「佐野弁護士、外堀埋めるスピードが光速を超えてる……」
仕事ができる人って、何でも早いのかよと真は呆れる。
「あぁ~、ショックだ。わかっていたけれど、実際にそうだとショックすぎる」
「ええっ? ショックってどういうこと?」
ニ十歳ってダメなの? と七海は焦った。
「あ~~、ずっと見ていた七海が嫁に行くなんて、信じられないってこと!」
俺なんてまだ大学生なのにと取り乱す真に、「がんばって弁護士になってね」と七海が笑うと「残酷すぎる」と真に呟かれてしまった。
金沢に住む叔父さんは、私たちの結婚を心から祝福してくれた。
叔母さんには会いたくなかったので叔父さんだけお寿司屋さんに呼び出したが、叔父さんは涙をぬぐいながら「おめでとう」と言ってくれた。
婚姻届の証人欄のひとつは叔父さんの名前に。
もうひとつは私たちを繋げてくれた西九条だ。
てっきりロサンゼルスから帰国してすぐに籍を入れるのだとばかり思っていたのに、大和はみんなへの報告を済ませた後も、なぜか婚姻届を手元に持ったまま役所へ行こうとしない。
「大和さん、これっていつ……」
リビングのソファで大和の腕の中にすっぽり収まりながら尋ねると、大和は七海の髪を愛おしそうに梳きながら微笑んだ。
「あぁ。七海の二十一歳の誕生日に出すつもりだ」
「えっ……? 私の、誕生日?」
って6月だけど、半年も手元に置いておくの?
「国内の結婚式は二十二歳の誕生日の日に予約してある」
「国内……? え? 予約?」
「白無垢も似合いそうだし、ステンドグラスの前に立つウェディングドレス姿もいいし、決められなくてな」
両方すればいいかという結論になったと笑った大和に、七海は目を丸くした。
誕生日に入籍するだけでもロマンチックなのに、その一年後の式場までもう押さえてあるなんて、相変わらず大和のロードマップは光速を維持したままだ。
「和装も洋装も、海外も国内も、七海の綺麗な姿は全部俺が独占する」
「ど、独占……?」
甘く囁かれ、顔が赤く染まってしまった七海を、大和の大きな腕が優しく抱き寄せる。
「……大和さん、あの」
「ん?」
いつもリードされてばかりの自分が少しだけ悔しくて。
七海は大和の服の裾をぎゅっと握りしめると、精いっぱいの勇気を振り絞った。
「私も……大和さんを、誰にも渡したくないです。だから、ずっと一緒にいてくださいね」
言い終えた瞬間、大和の目が驚いたように見開かれた。
次の瞬間には、彼の瞳に狂おしいほどの愛着と独占欲がブワッと燃え上がる。
「七海、それは反則」
低い声が降ってきた瞬間、息を呑む暇もないほどの極上に甘いキスが何度も何度も七海の唇へと注がれた。
激しいのに、どこまでも大切に慈しむような深い口づけに七海の思考は停止する。
もうひとりで寂しく過ごす夜は来ない。
これからはどんな時も、完璧で強引で誰よりも過保護な旦那様が自分を抱きしめていてくれる。
十一年の遠回りを経てようやく重なり合った二人の時間は、もう誰にも邪魔させない。
「愛してるよ、七海」
「私も愛しています」
とろけるような抱擁の中で、二人は何度でも甘い未来の約束を交わし合った――。
END
年末まで研修でいなくて寂しいと七海は愚痴を言っていたはずだと、真は困惑する。
「とりあえず籍だけ、入れちゃおうかって話になって……」
「いやいやいやいや、とりあえずじゃなくて」
上目遣いで指先をいじりながら、限界まで顔を真っ赤にして照れながら報告する七海の左手の薬指には、目も眩むような大粒のダイヤモンドが施された婚約指輪がこれみよがしにキラキラと輝いている。
「付き合ってまだ数日じゃないのか? 早すぎだろ!」
「七海を誰にも渡したくないだけだ」
大和は優雅にコーヒーを啜りながら、真に極上の涼しい笑みを浮かべた。
「佐野弁護士、外堀埋めるスピードが光速を超えてる……」
仕事ができる人って、何でも早いのかよと真は呆れる。
「あぁ~、ショックだ。わかっていたけれど、実際にそうだとショックすぎる」
「ええっ? ショックってどういうこと?」
ニ十歳ってダメなの? と七海は焦った。
「あ~~、ずっと見ていた七海が嫁に行くなんて、信じられないってこと!」
俺なんてまだ大学生なのにと取り乱す真に、「がんばって弁護士になってね」と七海が笑うと「残酷すぎる」と真に呟かれてしまった。
金沢に住む叔父さんは、私たちの結婚を心から祝福してくれた。
叔母さんには会いたくなかったので叔父さんだけお寿司屋さんに呼び出したが、叔父さんは涙をぬぐいながら「おめでとう」と言ってくれた。
婚姻届の証人欄のひとつは叔父さんの名前に。
もうひとつは私たちを繋げてくれた西九条だ。
てっきりロサンゼルスから帰国してすぐに籍を入れるのだとばかり思っていたのに、大和はみんなへの報告を済ませた後も、なぜか婚姻届を手元に持ったまま役所へ行こうとしない。
「大和さん、これっていつ……」
リビングのソファで大和の腕の中にすっぽり収まりながら尋ねると、大和は七海の髪を愛おしそうに梳きながら微笑んだ。
「あぁ。七海の二十一歳の誕生日に出すつもりだ」
「えっ……? 私の、誕生日?」
って6月だけど、半年も手元に置いておくの?
「国内の結婚式は二十二歳の誕生日の日に予約してある」
「国内……? え? 予約?」
「白無垢も似合いそうだし、ステンドグラスの前に立つウェディングドレス姿もいいし、決められなくてな」
両方すればいいかという結論になったと笑った大和に、七海は目を丸くした。
誕生日に入籍するだけでもロマンチックなのに、その一年後の式場までもう押さえてあるなんて、相変わらず大和のロードマップは光速を維持したままだ。
「和装も洋装も、海外も国内も、七海の綺麗な姿は全部俺が独占する」
「ど、独占……?」
甘く囁かれ、顔が赤く染まってしまった七海を、大和の大きな腕が優しく抱き寄せる。
「……大和さん、あの」
「ん?」
いつもリードされてばかりの自分が少しだけ悔しくて。
七海は大和の服の裾をぎゅっと握りしめると、精いっぱいの勇気を振り絞った。
「私も……大和さんを、誰にも渡したくないです。だから、ずっと一緒にいてくださいね」
言い終えた瞬間、大和の目が驚いたように見開かれた。
次の瞬間には、彼の瞳に狂おしいほどの愛着と独占欲がブワッと燃え上がる。
「七海、それは反則」
低い声が降ってきた瞬間、息を呑む暇もないほどの極上に甘いキスが何度も何度も七海の唇へと注がれた。
激しいのに、どこまでも大切に慈しむような深い口づけに七海の思考は停止する。
もうひとりで寂しく過ごす夜は来ない。
これからはどんな時も、完璧で強引で誰よりも過保護な旦那様が自分を抱きしめていてくれる。
十一年の遠回りを経てようやく重なり合った二人の時間は、もう誰にも邪魔させない。
「愛してるよ、七海」
「私も愛しています」
とろけるような抱擁の中で、二人は何度でも甘い未来の約束を交わし合った――。
END



