ねじれの位置の恋人 ~世界でたったひとり、出会ってはいけなかった人~

 予定では三泊して帰国するはずだったのに。
 帰りの航空券はいつの間にか大和にキャンセルされ、七海は異国の地で年末年始を迎えることになっていた。

「……すごい」
 ダウンタウンのカウントダウンへ行こうと大和に誘われた七海は、市庁舎に映し出されたプロジェクションマッピングやライブステージに圧倒される。

「寒くないか?」
 グイッと引き寄せられ、大和の大きなコートの中にすっぽり入ってしまった七海は顔を真っ赤に染めた。
 大和の体温と、彼特有の心地よい香りが一気に七海の鼻腔をくすぐる。
 
「年末年始に家じゃない場所にいるのは初めてです」
「そうか」
 小学生の頃は深夜まで起きていられなかったし、真の家にお世話になった時には、深夜に出かけるという発想はなかった。
 もちろん上京しておんぼろアパートにいる時も。

「七海の初めてを奪えて良かった」
「……そ、そんな言い方……!」
 耳まで赤くなる七海を見た大和は甘い極上の笑みを浮かべた。
 ずるい。その笑顔は反則だ。
 以前よりもずっと優しくて、過保護な大和に七海の心臓が跳ねる。

「ほら、年が明けるぞ」
 市庁舎のカウントダウンはあと十秒。

「五、四……!」
 周囲の人々の地鳴りのようなカウント声が響く中、大和の長い指先が七海の柔らかい頬に触れた。
 グイッと少し強引に顎を持ち上げられる。
 上を向かされた七海は、あまりにも近くにある大和の端正な顔立ちにフリーズした。
 
「……二、一、Happy New Year!」
 夜空に爆ぜる盛大なニューイヤーの花火。
 だが、七海の唇はすぐに大和によって塞がれ、視界には大和の綺麗な瞳しか映らなくなった。

「あけましておめでとう、七海」
「おめで……」
 答える間もなく、さらに深い二度目のキスが降ってくる。
 ひとりぼっちじゃない年末年始が、こんなにも甘くて愛おしいものだなんて知らなかった。
 
「来年も、再来年も、その先もずっと一緒に」
 大和は七海の額にこつんと自分の額を合わせる。
 独占欲を隠そうともしない声で告げられた七海は、ただコクコクと頷くことしかできなかった。