「なんでここに? 孝仁は?」
「ひとりで来ました!」
英語が全然わからなくて、入国で困りましたと七海が笑う。
「飛行機の予約とかパスポートとかは西九条さんが手伝ってくれたんですけど、ここで会えなかったらどうしようって」
ホテルまでたどり着く気がしないですと呑気に笑う七海に、大和は言葉を失った。
英語も話せず、海外旅行の経験もない彼女が、ただ自分に会うためだけに太平洋を越えてきた。
自分が「償い」や「復讐」という過去に縛られている間に、彼女は「未来」を掴むために必死で走ってきたのだ。
「……負けたよ、七海」
こんなに眩しい七海を諦めるなんて、他の男に託すなんて無理だ。
大和は降参するように笑いながら、七海を強く抱きしめた。
◇
ずっと、ずっとこの温もりに触れたかった。
七海は大和のコートをギュッと握りしめ、その胸に顔を埋めた。
「馬鹿だな、こんな遠くまで……」
上から降ってきたのは、数ヶ月ぶりの少し低くて優しい声。
「馬鹿なのは大和さんです」
七海は大和の胸を少しだけ強く押し、顔を上げてその瞳を真っ直ぐに見据えた。
「勝手にいなくなって。マンション譲渡とか意味が分からなくて。それで私が幸せになれると本気で思ったんですか?」
七海の毅然とした言葉に、大和は言葉を失う。
「私は大和さんと一緒にいたかったのに」
「……悪かった」
大和の温かい手が七海の髪を撫でる。
毛先を弄んだあと、耳の後ろに触れ、耳たぶを撫でながら首筋に。
まるで存在を確認するかのように優しく動く手が少しくすぐったかった。
「会いたかったです……」
「……俺もだ」
七海は涙が出そうなのを笑って誤魔化しながらしがみつく。
「メリークリスマス、大和さん」
熱気あふれる空港の真ん中で、七海は最高のプレゼントを捕まえた。
「……あぁ。メリークリスマス。七海」
どちらからともなく引き寄せられるように、二人はそっと唇を重ねる。
触れるだけの短くて静かなキスには、言葉にできないほどの「愛してる」と「ごめん」と、そして「ありがとう」が全部詰まっている気がした。
見つめ合うのが照れくさい。
でも、目を逸らしたくない。
もう一度、今度は深くキスされた七海は、うまく息ができずにギュッと大和の服を掴んだ。
横を通り過ぎる人たちに「わぉ!」や「メリークリスマス!」と言われて恥ずかしい。
他はなんと言われたのかわからないけれど、きっと冷やかしのような言葉なのだろう。
ようやく大和に解放された七海は、真っ赤な顔で大和の胸に顔を埋めた。
「七海、宿泊場所は?」
荷物を置きに行こうと言われた七海は、西九条からもらった紙を取り出す。
「本当におせっかいな従兄だ」
予約された部屋はベッドがひとつの2人部屋。
従兄からの最高のクリスマスプレゼントに、大和は口の端を上げた。
「行くぞ」
大和はキャリーケースを傾けると、空いた手で七海の手を強く握りしめる。
「はい、大和さん」
クリスマスのイルミネーションが宝石を散りばめたように輝く、ロサンゼルスの街。
大和が運転する車の助手席から眺めるその景色は、日本で夢見ていたどんな光景よりもずっと鮮やかで、眩しかった。
「……夢じゃないですよね」
信号待ちで止まるたびに七海は大和の横顔を見つめ、何度も何度も心の中で確認する。
「もし夢なら覚めたくない」
前を見据えたまま、ふっと口角を上げて大和が笑う。
ホテルについた二人は、クリスマスの夜の静寂の中でゆっくりと溶け合った――。
「ひとりで来ました!」
英語が全然わからなくて、入国で困りましたと七海が笑う。
「飛行機の予約とかパスポートとかは西九条さんが手伝ってくれたんですけど、ここで会えなかったらどうしようって」
ホテルまでたどり着く気がしないですと呑気に笑う七海に、大和は言葉を失った。
英語も話せず、海外旅行の経験もない彼女が、ただ自分に会うためだけに太平洋を越えてきた。
自分が「償い」や「復讐」という過去に縛られている間に、彼女は「未来」を掴むために必死で走ってきたのだ。
「……負けたよ、七海」
こんなに眩しい七海を諦めるなんて、他の男に託すなんて無理だ。
大和は降参するように笑いながら、七海を強く抱きしめた。
◇
ずっと、ずっとこの温もりに触れたかった。
七海は大和のコートをギュッと握りしめ、その胸に顔を埋めた。
「馬鹿だな、こんな遠くまで……」
上から降ってきたのは、数ヶ月ぶりの少し低くて優しい声。
「馬鹿なのは大和さんです」
七海は大和の胸を少しだけ強く押し、顔を上げてその瞳を真っ直ぐに見据えた。
「勝手にいなくなって。マンション譲渡とか意味が分からなくて。それで私が幸せになれると本気で思ったんですか?」
七海の毅然とした言葉に、大和は言葉を失う。
「私は大和さんと一緒にいたかったのに」
「……悪かった」
大和の温かい手が七海の髪を撫でる。
毛先を弄んだあと、耳の後ろに触れ、耳たぶを撫でながら首筋に。
まるで存在を確認するかのように優しく動く手が少しくすぐったかった。
「会いたかったです……」
「……俺もだ」
七海は涙が出そうなのを笑って誤魔化しながらしがみつく。
「メリークリスマス、大和さん」
熱気あふれる空港の真ん中で、七海は最高のプレゼントを捕まえた。
「……あぁ。メリークリスマス。七海」
どちらからともなく引き寄せられるように、二人はそっと唇を重ねる。
触れるだけの短くて静かなキスには、言葉にできないほどの「愛してる」と「ごめん」と、そして「ありがとう」が全部詰まっている気がした。
見つめ合うのが照れくさい。
でも、目を逸らしたくない。
もう一度、今度は深くキスされた七海は、うまく息ができずにギュッと大和の服を掴んだ。
横を通り過ぎる人たちに「わぉ!」や「メリークリスマス!」と言われて恥ずかしい。
他はなんと言われたのかわからないけれど、きっと冷やかしのような言葉なのだろう。
ようやく大和に解放された七海は、真っ赤な顔で大和の胸に顔を埋めた。
「七海、宿泊場所は?」
荷物を置きに行こうと言われた七海は、西九条からもらった紙を取り出す。
「本当におせっかいな従兄だ」
予約された部屋はベッドがひとつの2人部屋。
従兄からの最高のクリスマスプレゼントに、大和は口の端を上げた。
「行くぞ」
大和はキャリーケースを傾けると、空いた手で七海の手を強く握りしめる。
「はい、大和さん」
クリスマスのイルミネーションが宝石を散りばめたように輝く、ロサンゼルスの街。
大和が運転する車の助手席から眺めるその景色は、日本で夢見ていたどんな光景よりもずっと鮮やかで、眩しかった。
「……夢じゃないですよね」
信号待ちで止まるたびに七海は大和の横顔を見つめ、何度も何度も心の中で確認する。
「もし夢なら覚めたくない」
前を見据えたまま、ふっと口角を上げて大和が笑う。
ホテルについた二人は、クリスマスの夜の静寂の中でゆっくりと溶け合った――。



