ねじれの位置の恋人 ~世界でたったひとり、出会ってはいけなかった人~

「ホテルの中に日本庭園……?」
 案内された叔父は日本庭園を見ながらすごいと興奮する。
 だが、叔父に話しかけられた叔母は、相槌を打つだけで精一杯なようだった。

「この天麩羅おいしいね」
 四季折々の新鮮な旬の素材を活かした料理が提供され、ひとつひとつの料理の繊細さに叔父は感動する。
 
「七海、七海。普段からこんなすごいの食べているのか?」
「初めてだよ、マナーとかもわからないし」
「よかった。俺もだ」
 食べなれない料理すぎて、全部おいしいとしか言えない七海と真は、語彙力がないなと二人で項垂れる。
 
「食後が和菓子だなんて、粋だなぁ」
 海外のお客さんが多いのかなと推測しながら、叔父は菓子切りで和菓子を半分に。
 口に入れたあと「おいしい」と笑った。
 
「きれい。星みたい」
「七夕が近いから?」
「葛の透明感が夏らしいな」
 大和の葛・透明感という素晴らしいコメントを聞いてしまうと、七海の星と真の七夕の子どもっぽさが余計に際立つ。

「大和さん、ズルい」
「何がだ?」
「その頭脳が」
 変な言いがかりをつけたあと、七海も和菓子を口に含んだ。
 
 つるりとした喉越しと甘すぎないあんこがおいしい。
 たくさん食べたあとなのにペロッと食べてしまった七海は、自分の食欲が怖くなった。

「食事もすんだことですし、少し話をさせていただいても?」
「えぇ。もちろん」
 快諾する叔父とは裏腹に、叔母の顔色は悪くなっていく。
 今すぐにでも倒れてしまいそうなほど青白い顔をした叔母を七海はジッと見つめた。

「今からは弁護士として話をさせていただきます」
 前置きをした大和は眼鏡をかけると、胸ポケットからボイスレコーダーを取り出す。

 また眼鏡だ。
 もしかして弁護士モードのときは眼鏡なの? なんで?
 
「会話は録音をさせていただきます。証拠として提出することもありますので、虚偽の発言などはされないようにご注意ください」
「証拠? いったいなんの……?」
 首を傾げる叔父を見ながら、大和は現在日時と場所、そして参加者名をボイスレコーダーに向かって話しかける。
 弁護士モードな大和は冷静で、普段よりも声が低くて冷たい感じがした。