ねじれの位置の恋人 ~世界でたったひとり、出会ってはいけなかった人~

 叔母に追加の4万円を送金することなく、2週間が過ぎた。
 不思議なことにあの日以来、追加の催促はなく、先月は6万円で許してくれたのかなと七海は勝手に解釈することにした。

「お待たせ、七海」
「テストどうだった?」
「なんとかクリア!」
 今日はテストで無事に単位を取得した真と映画を見ようと約束をした日。
 七海と真は西九条弁護士事務所の最寄り駅で待ち合わせをした。
 
「まだ取れないんだ、ギプス」
「そうなの。治りが遅いって」
「寝ながら叩いてるんじゃないの?」
「えぇ~?」
「暑いのに大変だな」
 7月に入り、今年は猛暑で連日35℃越え。
 何もしなくても暑いのに、ギプスの中はさらに暑くて皮膚トラブルになりそうだ。
 早く治ればいいのに。
 
 駅からすぐの映画館で今話題の映画のチケットを買い、ポップコーンと飲み物を買い込む。
 席が結構埋まっていてあまり選択肢がなく端の方の席から映画を見ることになったが、斜め前の席のカップルさんがイチャイチャで少し気まずかった。

「……ロマンスって書いてあったのに」
 映画はまさかの悲恋だった。
 
「なんで? なんで追いかけなかったの?」
 傷心のヒロインが街を出て行くとき、ヒーローが追いかけてハッピーエンドになるのが定番ではないのか。
 そんなラストを期待していたのに、ヒーローはヒロインを陰から見送ったのだ。

「確かにみんな『まさかの展開』って口コミしているけど」
「そういうまさかは期待してないよ」
 実はヒーローはお金持ちでしたとか、そういうまさかの展開だと思っていたと七海は肩をすくめる。
 映画館から出た七海と真は、歩きながら映画の感想を語り合った。

「ヒロインの幸せを願って身を引いたんだよ」
「なんでヒーローが幸せにしないの?」
「自分よりもふさわしい相手がいたら諦めるしかないだろ?」
「えぇ? 両想いだったのに?」
 よくわからないと七海は首を横に振る。

「あ~あ、幸せになってほしかったなぁ」
 七海が「ねっ」と同意を求めると、真も「そうだね」と答えてくれた。