ねじれの位置の恋人 ~世界でたったひとり、出会ってはいけなかった人~

「ドンマイ?」
「野村弁護士、もう酔っているんじゃないかな」
 乾杯の間違いだろうと真は誤魔化す。
 カンパリオレンジの意味が「初恋」だなんて七海には言えないなと、真は切ない顔をしながらカクテルをテーブルに戻した。
 
「あ、大和。おつかれ~」
「遅くなった」
 個室の入り口に現れた大和を見逃さなかった西九条は、誰よりも早く声をかける。
 大和は扉を目一杯開けると、大きなケーキを運ぶ店員たちを個室の中に入れた。
 
「……マジか」
 芸能人が誕生日にもらっているような四角いオーダーケーキに西九条は呆れる。
 大きくても切り分けやすく均等なサイズにしやすいといっても、さすがにこれはやりすぎだろうと西九条は肩をすくめた。
 
 フルーツが盛りだくさんなケーキの真ん中には、七海の誕生日を祝うメッセージと、真の未来に期待しているというメッセージ。
 
「ろうそくやりたいだろ?」
 七海用に「2」と「0」の数字ろうそく、真用に羽ばたく鳥のろうそくがケーキの上に置かれる。

「待って、写真撮りたい!」
 まだ火はつけないでと慌てた七海はみんなに笑われてしまった。

「天然の色男め」
「当日にケーキと約束したんだ」
「普通、帰りにコンビニでケーキ買うとかだろ」
 みんなから少し離れた場所で大和と西九条は楽しそうな七海と真を見つめる。

「……あいつなら七海を幸せにするだろう」
 小声で呟いた大和の言葉に西九条は目を伏せた。

「俺が幸せにするって言わないのか?」
「俺はダメだろ」
 あの男が就職するまで残り一年半。
 大和は切なそうに七海を見つめる。

「馬鹿だな」
 西九条は大和の腕に軽くパンチをすると、スマートフォンを持ちながら七海の方へ。

「七海ちゃん、20歳おめでとう~」
 西九条は七海に背を向けながら腕を精一杯伸ばし、自撮りする。
 
「みんなでイェーイ!」
 西九条の掛け声で、みんながポーズをすると、カシャカシャと何度もカメラの音が鳴った。