ねじれの位置の恋人 ~世界でたったひとり、出会ってはいけなかった人~

「お手入れ方法を調べなきゃ」
 サイドボードにネックレスのケースを置き、スマートフォンで調べる。
 どのサイトも「神秘的な青い輝き」「奇跡の色」だと説明され、ブルーアコヤは希少だと書かれていた。

「柔らかく清潔な布で優しく拭く」
 七海はケースの中に一緒に入れられていた折りたたまれた布でパールを拭く。

「日陰で乾かしてから保管ってことは、ケースは開けておいた方がいいってことかな」
 ベッドで寝ころんでも見える位置にパールを飾った七海は、緩んでしまう口元を隠すことができなかった。

「こんなふうに誕生日を祝ってもらえるなんて……」
 幸せすぎて、どうしたらいいのかわからない。
 
 父が亡くなり、働きながら私を育ててくれた母は日々が精いっぱいで誕生日なんて余裕はなかった。
 母が六年生の卒業式の日に亡くなり、叔父に引き取られてからは誕生日とはますます縁遠くなった。
 
「そういえば、真くんは毎年お菓子をくれたなぁ」
 真が高校三年の時にくれたのは、いちご大福。

「ケーキが売っていなかったんだっけ」
 塾の帰りにコンビニに寄って買ってきてくれたのだ。
 大学進学で真が上京してからは、誕生日を祝ってくれる人は誰もいなかったのに。
 七海の目にジワッと涙が浮かぶ。
 
 あぁ、困ったな。
 こんなに幸せな誕生日を知ってしまうと、来年からツラくなりそうだ。
 知らなければうらやましいと思うことも比べることもできないけれど、一度経験してしまうとこの幸せな日を思い出してしまうだろう。

 20歳が特別なんだから。
 今年だけだから。
 七海は涙を拭いながら、自分にしっかりと言い聞かせることにした。

    ◇

 月曜日、七海は服の下にこっそりネックレスをつけた。
 お店の人も女性を守るパワーストーンだと言っていたし。
 朝、自分で自分に言い訳をしながらネックレスをつけたが、仕事中も大和からもらったプレゼントを身につけていたかったのだ。
 
「おはよう七海ちゃん。あ、そうだ。6月20日の夜、空けておいてね」
 西九条に声をかけられた七海は、ピンポイントすぎる日にちに驚いた。