ねじれの位置の恋人 ~世界でたったひとり、出会ってはいけなかった人~

「スカートも、トップスのリボンもすごく可愛くて着心地もいいです。でも、お値段が……」
「価格以外は問題ございませんか?」
「はい。すごく素敵です」
 七海がスカートを少し持ち上げると、やわらかい生地が波のように優雅に動く。

「少し失礼しますね」
 店員は七海の手首についている防犯タグと値札を器具でポロンと外す。
 スカートのウエストについていた防犯タグも外すと、店員は七海にニッコリ微笑んだ。

「素敵な彼でうらやましいです」
「それはどういう……?」
「着てきた服はこちらにどうぞ」
 店員が差し出した紙袋にはすでに服が入っているけれど、どういうこと?

「あの、これは……?」
「はい。お連れ様がご購入された物です。そちらの服も」
「えっ!?」
 紙袋に入っていたのは、可愛いなと思いながら棚に戻したトップスと、店に入ってすぐ目についたワンピースだ。

「これ、全部ですか?」
「はい」
「この服も?」
 七海が今着ている服の胸元を押さえると、店員はうんうんと頷いた。

 着てきた庶民の服をブランドの紙袋に入れた七海は、試着室から店内に。
 大和に手を差し伸べられた七海は、よくわからないまま左手を差し出した。

「荷物」
「えっ?」
 手じゃなくて荷物!
 七海の左腕に通していたブランドの紙袋が大和にひょいっと取り上げられる。

「似合っている」
 そんな極上の笑顔!

「ありがとうございます。でも、どうして」
「必要だろう?」
 最近少し服がきつくなってしまったから必要といえば必要だけれど、こんな高価な服でなくても大丈夫なのに。
 ありがとうございましたという店員の声が後ろから聞こえたが、振り返ることもできないまま七海は次の店へ。

「こちらのミュールはいかがでしょうか?」
「かかとに留め具があるものがいい」
 椅子に座らされた七海の前に、大和が指定したクロスベルトサンダルが出される。
 パールとリボンが華やかで、とても可愛い。
 大和は女性らしい服や靴が好きなのだろうか?

「七海は足も小さいな」
 背も小さいと大和に揶揄われながら、七海はサンダルに足を入れた。