ねじれの位置の恋人 ~世界でたったひとり、出会ってはいけなかった人~

「先ほど入荷したばかりなのですが……」
 店員がレジの奥から持ってきたマキシ丈のフレアスカートは、朝のニュース番組でお天気お姉さんが着ていたスカートと同じもの。
 色も同じ。歩くたびに揺れるシルエットが優雅だと、さすがテレビに出ているお姉さんは美しいと思ったあのスカートだ。
 
「テレビで紹介されて人気商品になったのですが、このサイズだけは着られる人が少なくてアウトレットに回って来たんですよ」
 七海に、「どうですか?」と手渡しながら店員はにっこり微笑む。

「あ、えっと、でも」
「試着してみればいい」
 興味はあるがなかなか踏ん切りがつかない七海を大和が後押しする。

 試着だけ。着てみて、あぁやっぱりテレビのお姉さんとは違うよねってガッカリするだけ。
 でも気になっていたスカートだし、ここで着なかったらもう出会えるチャンスはないだろうし。
 七海は自分に言い訳しながら試着室へ。

 想像通りの軽やかさに、七海は鏡の中のスカートに釘付けになった。
 少し動くと女性らしくふわっと揺れる。
 今日の七海のトップスはカジュアルだが、カジュアルにも似合うし、足首まであるおかげで色気のない棒のような足も隠れる。

「可愛い……」
 もちろんスカートが。
 スカートを履いた私が可愛いだなんて、そんなおこがましいことは思っていない。
 でも少しだけスラッと背が高く見えるような気がするこのスカートは、やっぱり素敵だなと思った。
 もちろん値段は全然素敵ではないけれど。

「サイズはいかがでしょうか?」
「あ、サイズはちょうどいいです」
「お連れ様が、こちらも試着してほしいと」
 差し出されたのはさっき見ていたリボンのトップスだ。
 七海が受け取るとすぐに店員は扉を閉める。

「あの」
 止める間もなく消えてしまった店員に、七海は肩をすくめた。
 
 トップスももちろん可愛かった。
 このスカートと合わせると、まるで清楚なお嬢様になったかのような錯覚が起きる。
 服ってすごい。
 貧乏人がシンデレラに早変わりだ。
 
「ゆったりがお好きでしたら、もうワンサイズ大きいトップスにされますか?」
「いえ、ちょうどいいと思います」
 扉を開け、店員にサイズ感を見てもらうと、「よくお似合いです」と褒められた。

「気になるところはございますか?」
 お値段です!
 恥ずかしいけれど、言うしかない。
 私ではこんなお値段は手が届かないから。