ねじれの位置の恋人 ~世界でたったひとり、出会ってはいけなかった人~

「週末、買い物に行くか」
 服を買いに行こうと言われた七海は躊躇ってしまった。
 
 服は欲しいけれど、私が買いに行く店と大和が普段入る店は絶対に違う。
 金沢で買ってくれたTシャツでさえ値段を見て驚いたし、翌日の服はサラサラで、あんなに綺麗な服は初めてだった。

「用事があるか?」
「あ、いえ。用事はないです」
「では、買い物に付き合え」
 先週は金沢へ行ったから、今週は俺に付き合えと言われた七海は、わかりましたと頷いた。

 別に見るだけで、買わなくてもいいんだもんね。
 それに男性服と女性服は店もきっと違うし、大和の服を一緒に選ぶのも楽しそうだ。

「アウトレットならジャンルもバラバラで楽しめるか?」
「私、行ったことがないんです」
 でも行ってみたかった!
 テレビでアイドルが「50%オフ!」って喜んでいたし、もしかしたら私でも買える価格の服があるかもしれない!

 ……なんて思った自分が馬鹿だったと気づいたのは、土曜日。
 大和と一緒にアウトレットの店に入った瞬間だった。

 たしかに50%オフだけれど、もとの値段が高い!
 アウトレットにはブランド品しかないことを学んだ七海は、そっと服を棚に戻した。

「これはどうだ?」
 大和に見せられたのは、袖にリボンがついた可愛いトップス。
 控えめに言って、むちゃくちゃ可愛い。丈の長さも好みだし、色も好きだ。
 なんで私のど真ん中ストライクの服を持ってくるの⁉︎

「私はいいので、大和さんの服の店に行きましょうよ」
「気に入らないか? では、こっちは?」
 そっちも可愛いです! 好みです。
 絶対に手が届かないところに、大好物の餌をぶら下げられた動物の気持ちが今ならわかりそうだ。
 
「七海の好きな服を教えてくれ」
 そんな極上の笑顔で言われても困ります!
 
 おんぼろアパートの家賃も払わなくてよくなったし、今までよりも給料が高い弁護士事務所で働かせてもらっているけれど、それでも無駄遣いはできない。
 少しでも貯金しておかないと、大和のマンションから出たあと暮らしていけないから。

「私の服はいいので……」
 七海が困った顔で微笑むと、大和は近くの店員に持っていた商品をスッと手渡す。

「この服に似合うボトムスを、彼女のサイズで」
「では、こちらのスカートはいかがでしょう?」
「もう少し広がる物を」
 待って、待って。どうして私がふわっと広がるスカートを欲しがっているってわかったの?
 七海はなんでなんでと悩みながら、服を選ぶ大和の姿を見つめた。