ねじれの位置の恋人 ~世界でたったひとり、出会ってはいけなかった人~

「真くんも優秀だから、やってみたらなんでもできちゃうと思うよ」
「あー、うん、頑張るよ」
 お腹を抱えながら西九条が笑っているのはなぜだろう?
 変なこと言ったかな?

「七海ちゃんは家事得意?」
「料理は嫌いじゃないんですけど、レシピ通りに作ったはずなのに、焦げたり、野菜が固かったりするんです」
 おかしいですと七海が真剣に答えると、真も西九条も目を丸くした。
 なんでそんな反応?
 レシピ通りだよ? おかしいでしょ?
 
「のびしろがあるってことでいいのかな」
 のびしろはいらないから料理が上手くなりたい。
 
「森口は? 家事とかできるの?」
「必要最低限なら」
 寮は夕飯が準備されているので、朝と休日の昼くらいしか作らないと真は答える。

「森口がこっちの大学行くとき、両親は反対しなかったの?」
「父は応援してくれたんですけど、母は家から通える大学に行ってほしいって」
「まぁ、お金もかかるしね」
 あるあるだよねと西九条は同意する。

「七海ちゃんは女の子だからなおさら反対されたよね」
「あ、私は両親がいなくて。真くんの両親にお世話に」
 さらっととんでもないことを暴露した七海に驚いた西九条は、きょろきょろとあたりを見渡した。

「心臓が止まるかと思った」
「え?」
「みんなには内緒にしておくからね」
 あ、両親がいないこと!
 真がいるから油断していたが、そういえばここでは言っていないんだった!

「じゃあ、七海ちゃんも森口の両親に反対されたんだ」
「私は叔母さんが賛成してくれました」
 正解は追い出されただけれど。
 
「叔父さんは?」
「叔父さんとは話す機会がなくて」
「まぁ、思春期の女の子なんてお父さんですら話さないもんね」
 叔父さんなんてもっと話さないねと西九条に言われた七海は、「ですよね」と軽く返事をした。