ねじれの位置の恋人 ~世界でたったひとり、出会ってはいけなかった人~

「えっと、世間知らずで、ひとりでなにもできないという意味で、その」
 しどろもどろで言い訳する七海の頭を、大和はポンポンと叩く。

「早く大人になれよ」
「大人です~!」
 小さいぞと揶揄われた七海は、「もう背は大きくなりません」と頬を膨らませた。

 少し遅めのお昼ご飯は近くのハンバーグ屋で。
 大和は何も言わないけれど、フォークなら左手でもなんとかなるからだろう。
 食べやすいように大和が切り分けてくれたが、手がかかる小さい子みたいで恥ずかしかった。
 店員のお姉さんは大和に釘付けだったけれど。

 お土産を見て、新幹線で東京へ。
 月曜は朝から病院に連行され、骨にヒビが入っていると診断されてしまった。
 人生初のガチガチギプスだ。

 そして火曜日。
 真がギプスを見逃すはずもなく、七海は真とお昼ご飯を食べることになってしまった。

「実家に行くなら一緒に行ったのに」
 コンビニおにぎりを齧りながら、真は溜息をついた。

「真くん。それ全部、鮭?」
「あぁ。鮭うまいから」
 コンビニのおにぎり3個とも鮭だなんて。
 それは好きすぎでは?
 
「どこで怪我したんだよ」
「真くんの実家の玄関」
 扉を開けるところのタイルの上と七海が説明すると、真は不思議そうな顔をする。
 
「ヒビが入るほど盛大に転ぶような段差なんてないだろ」
「ちょっと尻もちついただけなんだよ」
 病院でヒビって言われてびっくりしたと七海が笑うと、真は呆れた顔で鮭おにぎりを口に放り込んだ。

「叔父さんとあんなに話したの初めてかもってくらい話してね、お父さんたちのお墓の場所も教えてもらったの」
「そっか」
 お墓参りもしてきたと報告しながら、七海は大和お手製のサンドイッチに齧り付いた。

「聞きたくないけど、確認していい?」
 変な前置きの真に七海は首を傾げる。

「そのサンドイッチ」
「大和さんが」
 左手だけで食べられるものを作ってくれたのだ。
 
「だよな」
 確認したいって、それ?
 変なのと笑う七海を横目に、真は2個目の鮭おにぎりのパッケージを外した。

「弁護士で医者で顔が良くて、料理もできるなんてセコイだろ」
「真くんもそう思う? やっぱりズルいよね!」
 なんでもできてすごいのだと七海が語ると、通りすがりの西九条は真を励ますかのように肩にポンと手を置く。

「がんばれ、森口」
「見込みなくないですか?」
 残酷だと項垂れる真に、七海は首を傾げた。