ねじれの位置の恋人 ~世界でたったひとり、出会ってはいけなかった人~

「今はどんな仕事をしているんだい?」
「真くんがインターンで来ている弁護士事務所で事務をさせてもらっていて」
「すごいな、弁護士か」
「ただの事務だよ」
 電話とかメールだけと七海は叔父に話す。
 真もスーツを着て事務所にいると弁護士っぽく見えると七海が報告すると、叔父は嬉しそうに笑った。

 時計を確認した大和は眼鏡を外すと、伝票を持ちスッと立ち上がった。
 
「七海、いつでも帰っておいで」
「ありがとう、叔父さん」
「佐野さん、七海をよろしくお願いします」
「お預かりします」
 いつの間にか8時を過ぎていて、喫茶店は8時までだったのに申し訳なかった。
 叔父と別れ、電車に乗ってホテルの最寄り駅へ。
 夕飯は大和のリクエストで寿司屋に行ったが、高級すぎて魂が抜けそうだった。

「魚の種類が違うな。さすが日本海だ」
「え? 違うの?」
 違うことも知らなかった。
 お寿司なんて貧乏生活では食べられなかったから。

 個室にしてもらったおかげで、箸を使わずに左手で食べても恥ずかしくなかった。
 大和が食べたいからだと言っていたが、もしかしたら怪我をした右手首に配慮して寿司にしてくれたのかもしれない。
 
「大和さん、ありがとう。遺産のことはよくわからなかったけれど、叔父さんに会えてうれしかった」
「そうか。でも先に謝っておく」
「……なにを?」
 と呑気に聞いた45分前の自分に教えてあげたい。

「ダブルベッド……」
「部屋がここしか空いていなかった」
 今日は近くでコンサートがあるらしく、周辺のホテルも全然空いていなかったと大和が説明する。

「襲わないから安心しろ」
「襲っ……!」
 真っ赤な顔になった七海をベッドに座らせると、大和は右手首の包帯をそっと外した。