ねじれの位置の恋人 ~世界でたったひとり、出会ってはいけなかった人~

「永代供養の合祀なんだ」
 なにそれ。もう少しわかりやすい単語でお願いします。
 叔父から告げられた知らない単語に七海は首を傾げる。
 
「墓はないそうだ」
 永代供養とは霊園や寺院に供養してもらうこと、合祀というのは他の人たちと一緒に埋葬してもらうことだと大和に説明された七海は、ようやく叔父の言葉の意味がわかった。
 
「墓を建てると管理維持が大変で、当時はとてもそんな余裕がなかったんだ」
 すまないと叔父は何度も謝ってくれる。
 七海は気にしないでくださいと叔父に答えた。
 
「霊園の場所はどこですか?」
「静岡の、七海が通っていた小学校の近くの」
「あっ! 山の中のところ?」
 大和の質問に答えた叔父の言葉で、七海は小学校の近くの風景を思い出す。
 毎日登ったキツイ坂道、夜は怖い雑木林、B棟の校舎の3階からだけ見えるお墓が並ぶ霊園。
 ずっと忘れていたのに、鮮明に蘇る。

「叔父さん、ありがとう。今度行ってみます」
「明日、寄って帰ろう」
「えっ?」
「今日はもう新幹線がない」
 喫茶店の時計を見た七海はリミットの19時半を超えていることに初めて気が付いた。

「どうしよう。帰れない」
「大丈夫。ホテルは取ってある」
 え? いつの間に? 泊りの予定じゃなかったのに?

「七海は姉さんに似て要領が悪そうだから、佐野さんのようなしっかりした人に支えてもらえてよかった」
 これ絶対勘違いしているパターン!
 最初に一緒に住んでいると言ってしまったから!

「あのね、叔父さん。大和さんは」
「育ての親とも言える叔父さんにそう言っていただけるとうれしいです」
 否定しようとする七海に被せて大和が叔父に返事をする。
 そんな言い方をしたら、もっと誤解されちゃうのに!
 
「もうひとつうかがいたいのですが」
 大和は七海の中学高校時代の話が聞きたいと叔父に頼んだ。
 なんでそんなこと!

「実は七海のことは妻に任せきりで」
 七海が来てすぐ単身赴任になってしまい、実はあまり会うこともなかったと叔父は当時を振り返る。

「ではゆっくり会えるのは、お盆や年末年始くらいですか」
「その時期は混むし、飛行機も高いから帰らない年もあって」
 受験だったり塾だったり、帰っても結局家には誰もいない日が多く、だんだん帰らなくなってしまったと叔父は申し訳なさそうな顔をする。

「やっと一緒に住めると思ったら、七海が高校卒業と同時に出て行ってしまって、そのあと連絡もくれなかったから心配していたよ」
「あ……、ごめんなさい」
 叔母に二度と連絡するなと言われたなんて、叔父には話せないなと七海は困った顔で微笑んだ。