ねじれの位置の恋人 ~世界でたったひとり、出会ってはいけなかった人~

 住む世界が違う人なのに、大和と一緒にいるのは楽しい。
 
『少しでも長く、大和さんと一緒にいられますように』
 七海は分不相応な願いを心に思い浮かべながら、大和とマンションへ帰った。

   ◇

「想像より大きいな」
「能楽の鼓をイメージしているそうですよ」
 大和と一緒に金沢駅の大きな鼓門を見上げた七海は、どうしてこんなことになったのかと悩んだ。
 今日は七海が中学高校時代にお世話になった真の実家に行くため、金沢にやってきたけれど。
 
「どうして大和さんも金沢に?」
「七海が迷子にならないように」
「そんなに小さい子じゃありません〜!」
 大和に揶揄われながら、新幹線から電車に乗り換えようとした七海は早速、電車の乗り換え案内の看板の前で足を止める。

「えっと……」
「迷子か?」
「だ、大丈夫です!」
 久しぶりだっただけと言い訳しながら、七海は再び歩き始めた。

 真の実家は金沢駅から2回電車を乗り換え、さらに駅から10分程度歩いた場所。

「真くんの実家も一緒に行くんですか?」
「いや。七海を送ったら、駅前の喫茶店で待つ予定だ」
「さすがに最寄駅からは迷子にならないですよ?」
「留守かもしれないだろ?」
「あ、たしかに」
 結局一度も電話は繋がることなく突然ここに来ることになってしまったが、叔母は家にいるだろうか?

 大和がカッコよすぎるせいで、すれ違うお姉さんたちの視線が熱い。
 そして、隣のあの子はなんなの? とでも言いたそうな冷たい視線がツライ。
 都会よりも田舎の方が注目を浴びるのだと初めて知った。

 真の実家は住宅街の中の一軒家。この辺りでは平均的な大きさのよくある普通の家だ。
 少し変わっているといえば、庭に小さな離れというよりは倉庫に近い小屋があること。
 そこが私の部屋だったけれど。

「いってきます」
「あぁ。喫茶店にいるから」
 なにかあったら呼べと言ってくれる大和に手を振り、七海は真の実家のチャイムを押した。

「お久しぶりです。七海です」
 インターホンがすぐにプツッと切れる音がする。
 何度か鳴らすと、ようやく玄関の鍵が開く音が聞こえた。
 
「二度と来るなって言ったでしょ!」
 叔母にドンッと突き飛ばされた七海は、身構える暇もないまま玄関に尻もちをつく。
 突然低くなった視線に驚きながら、七海は叔母を見上げた。